第58話 着せられる神、吹き飛ばされる神
メリーゴーランドを後にした俺たちはお化け屋敷の建物に向かって行った。
「ここの課題はなに?」
「子供たちが怖がらないんですよ」
「どういうこと?」
校長先生はおばけ役の魔族を連れて来た。
人間界のお化けを少し魔界風にした物だった。
「ちょっとインパクトに欠けるね〜・・・」
「じゃあこうしよう♪」
創造神がまた勝手に創り出し、魔族に着せた。
「かわいい〜♪」
フリフリのついたドレスだった。
「確かにインパクトあるし別の意味で怖いけどさ!」
「趣旨が変わってますね」
「ぶ〜かわいいのに〜」
「あ!そうだ♪」
創造神が一瞬消えて戻って来た。
創造神の横には人がいた。
「この人はだれ?」
「霊界から連れて来た本物のおばけ♪」
「本物はダメだってぇぇぇ!」
「ただのアトラクションですよ」
創造神が不貞腐れて霊界に帰しに行った。
「やはり魔族には怖いより驚きが必要ですね」
「お化け屋敷よりドッキリハウスにしようか」
「そんなのもあるんですか?」
「あるよ〜、部屋全体が鏡部屋だったり、部屋が逆さまだったりね〜」
「それなら子供たちも楽しめそうですね!」
その時、おばけ役の魔族たちが話しかけて来た。
「あの・・・俺たちはいつまでこの格好なのですか?」
「・・・創造神が飽きるまでかなぁ」
「そんな・・・」
創造神が戻って来た。魔族たちは創造神に掛け合う。
「衣装を元に戻してください!」
「え〜かわいいからそのままがいいよ〜♪」
「このままでは仕事ができません!お願いします!」
「しょうがないなぁ」
創造神は片手を魔族たちに向け、もう片方の手を俺に向けていた。
「・・・なにしてるの?」
魔族たちの衣装が元に戻り、かわりに俺にフリフリを着せた創造神。
「かわい〜♪」
「よくお似合いですよ」
「校長先生までノらないでくださいよ」
「好奇神は今日はそのままね♪」
「いやいや!元に戻してよ!」
「♪」
創造神は楽しそうにそっぽを向いていた。
その時、怪猫神が目を覚ました。
「なんて格好してんだにゃ・・・」
「・・・俺に聞かないで」
怪猫神は何かを察したのか何も言わなかった。
「それで、ドッキリハウスですが他にはどんなものが?」
校長に聞かれ、俺は人間界のドッキリハウスについて話した。フリフリのドレス姿で。
「なるほど・・・ちょっとやってみますね」
校長先生は魔族に指示を出しながら建物の内部の構造図を取り出し、説明をしていた。
「・・・そろそろ元の服に戻しませんか?」
「戻しません♪」
「もうそれでいろにゃ」
「・・・」
どうやら今日は俺の公開処刑のようです。
校長先生が戻って来ると
「なんとかなりそうです。ありがとうございます」
「お役に立てて何より♪次は急流すべりだね」
俺たちは急流すべりのブースへ向かった。
「そういえば影宰は手伝ってくれないの?遊園地ではかなり分析してたと思うけど」
「影宰殿ならあそこにいますよ」
校長が手を差した方を見ると、何やら機械と格闘している影宰がいた。
「お〜い、影宰!」
影宰はこちらへ気付き歩いて来た。
「お三方もここへ来たんですね」
「なにしてたの?」
「券売機なるものを作ってました」
「あの時言ってたこと本当だったんだ・・・」
「ええ、通信で注文が飛ぶなんて素晴らしいじゃないですか」
「ただ、やはり通信設備が難しいですね」
「う〜ん、俺も詳しいわけじゃないからなぁ」
「とりあえず通信設備が整うまでは券売機で買った食券を厨房で受け取る方式にしてみたら?」
「そうですねぇ、この調子じゃ間に合いそうにありませんね」
「開園が遅れれば魔王様が悲しみますし、ひとまず確実に動くものを完成させます」
影宰は持ち場へ戻って行った。
「影宰は本気で作ろうとしてるんだなぁ。というかこの格好に触れなかったのはなぜだ?」
「影宰殿もわかっているんですよ。創造神様だと」
「・・・せめて何か言って欲しかったなぁ」
影宰は時折こちらを見て、クスッと笑っていた。
俺たちは影宰に手を振り、急流すべりへ向かった。
急流すべりの課題は水飛沫の多さと落ちる角度だそうだ。
「よくわかんないけど流れてる水の量とボートの落下速度を上げたら多くなるんじゃない?」
「やってみますか」
ここは創造神に頼るしかなかったので創ってもらった。
「猫神様はどれだけ水飛沫が上がるか見ててね」
「わかったにゃ」
俺たちはボートに乗り込み、水飛沫の量を怪猫神に真正面から見てもらうことにした。
「・・・いくらなんでも高すぎない?」
「私もよくわかんなから50mにしてみた♪」
そして落下。
勢い良く滑り落ちるボートは徐々に速度を上げていく。
「これはやりすぎだってぇぇぇぇ!」
ザッバァーン!
大量の水飛沫が怪猫神に直撃する。
「なんにゃぁぁぁぁ!?」
一瞬で水に消えていく怪猫神。俺たちは全員水浸し。
「あっはははは♪びしょ濡れだぁ♪」
「流石にこれは高すぎましたね」
校長先生の視線の先には、水飛沫に巻き込まれ吹き飛ばされた怪猫神の姿があった。
「猫神様ぁぁぁ!」
神をも吹き飛ばす急流すべりが完成した。
その後調整を繰り返し、理想の水量になった為実験は終了。
辺りを見回すと、大きな水たまりの数々、疲弊した魔族、楽しそうに笑う創造神、何度も吹き飛ばされて横たわる怪猫神、試行をまとめている校長先生、フリフリのドレスを着ている俺。
なかなかにカオスな状況が出来上がっていた。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第59話 満身創痍
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