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第五章 世界管理庫

老人は人生の終わりを迎えていた。


だが恐れていたのは死ではない。


「死後の世界ってどんな所なんだろうな」


そんな好奇心を抱いたまま死んだ男。


そして死後の世界で神と出会った彼は――


「観光していい?」


神界、世界管理庫、魔界、冥界。


見たいものは全部見る。


これは好奇心だけで神々を振り回す男の物語。

神界へ来て三日。


俺はずっと同じ場所にいた。


世界管理庫。


神界で最も重要な施設の一つ。


らしい。


中に何があるのかは知らない。


だから気になる。


ものすごく気になる。


「人間」


声がした。


振り返る。


案内神だった。


「神様」


「何をしている」


「見てる」


「何をだ」


「管理庫」


案内神は頭を抱えた。


知っていた。


聞く前から知っていた。


「三日だぞ」


「うん」


「飽きないのか」


俺は首を傾げた。


「なんで?」


案内神は黙った。


こいつにその質問は意味が無かった。


「中に入りたいのか」


案内神が聞いた。


俺は少し考えた。


そして答える。


「入りたい」


案内神は頷く。


予想通りだった。


だが。


次の言葉は予想外だった。


「でも勝手には入らない」


案内神は少し驚いた。


「何故だ」


「ダメって言われたし」


案内神は固まった。


「それだけか?」


「うん」


俺は管理庫を見上げる。


「気にはなるけどね」


案内神は黙った。


この男は変わっている。


だが。


最低限の線引きはしているらしい。


その時だった。


管理庫の扉が開いた。


ゆっくりと。


静かに。


中から一人の神が出てくる。


見たことのない神だった。


白い長衣。


長い銀髪。


どこか眠そうな目。


「なんだ騒がしい」


その神は言った。


そして。


俺と目が合った。


しばらく沈黙。


数秒。


いや。


もっと長かったかもしれない。


「何をしている」


管理神が聞いた。


「管理庫見てる」


俺は答えた。


「何故」


「気になるから」


管理神は少し考えた。


そして。


管理庫の前に座った。


俺の隣に。


案内神も固まった。


誰も予想していなかった。


「何が気になる」


管理神が聞く。


俺は即答した。


「全部」


管理神は頷いた。


「なるほど」


「神様は?」


俺は聞く。


「ん?」


「何が気になるの?」


管理神は少し考えた。


長い間考えた。


そして。


小さく呟く。


「最近は無いな」


俺は驚いた。


「一つも?」


「一つもだ」


俺は少し考えた。


そして。


「もったいないなぁ」


管理神は目を瞬かせた。


案内神は遠くを見る。


嫌な予感がした。


非常に嫌な予感だった。


「お前」


管理神が言う。


「ん?」


「面白いな」


俺は笑った。


「よく言われる」


案内神は思った。


また増えた。


面倒な人間を面白がる神が。


その日。


神界会議は少しだけ騒がしかった。


神A


「管理者と話したらしい」


神B


「本当か」


神C


「まずいぞ」


神A


「何がまずい」


神C


「管理者も興味を持ってしまった・・・」


沈黙。


神B


「終わったな」


神A


「ああ」


完全に同意だった。


その頃。


俺は管理庫の前にいた。


管理神もいた。


二人で座っていた。


「ねぇ管理神」


「管理神とは俺の事か?」


「そうだよ?」


「なぜ管理神なんだ?」


「・・・管理庫から出て来たから?」


「・・・」


「そんなことより管理庫の中って何があるの?」


管理神は少し笑った。


「知りたいか」


俺の目が輝く。


「知りたい」


管理神は管理庫を見上げる。


そして小さく呟いた。


「困ったな」


「?」


「本来であれば関係ない者に見せる訳にはいかないんだが・・・」


「少しだけ見せてやりたくなった」


遠くで案内神が頭を抱えた。


最悪だった。


(第五章 終)

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