第4話 神界
神は考えていた。この男を神界へ連れて行ったらどうなるのだろうか。だが前例がなかった。
「人間」
「なに?」
「神の世界は本来、容易に入れる場所ではない。選ばれた存在しか立ち入れぬ、神々の領域だ」
「なるほど」
神は頷く。真面目に聞いているようで安心した。だが次の一言で全てが台無しだった。
「そんなことより観光まだ?」
神は目を閉じた。話は聞いていた、理解もしていた。だが、結論だけがおかしかった。
神は頭を抱え
「お前・・・神の世界がどれほど特別な場所か分かったのだろ?」
「うん」
「なら何故そうなる?」
男は当然のように言った。
「だって、凄い場所なんでしょ?なら余計に見たいじゃん」
神は思った。神の世界の存在を知ってしまった。こいつは何を言っても、神の世界に行きたがる。
もう諦めて連れて行くしかないと。
「はぁ・・・行くか」
「行く!」
即答だった。
神は後悔した。
神界ーー
そこは人間の想像する天国とは違った。雲の上でも、黄金の宮殿でもない。ましてや天使たちが飛び回っているわけではない。
ただ、美しかった。
無数の光が飛び交っている。星ではない、世界だった。生まれたばかりの世界、滅びゆく世界、様々な世界が光となって空に浮かんでいた。
「おぉ・・・すっげ」
神は少し笑った。
「気に入ったか?」
「気に入ったどころじゃないよ」
俺は空を見上げる。目が離せない。全てが見たことの無いものばかりだ。
そして、静かに呟いた。
「全部行きたい」
やはりこうなった。
神界中央会議場ーー
俺を担当した神から連絡を受けていた神々が集まっていた。
「例の人間を連れてきた」
神が言うと、神々は口を閉じ、俺を見る。俺も神々を見る。
「神がいっぱいだ」
沈黙が続く。
神々は顔を見合わせた。困った顔をしてる神、顔を抑えている神。
「当たり前だ」
1人の神が言った。
「神界だから?」
「神界だからだ」
「そりゃそうか」
俺は納得した。そして別の神が聞いてきた。
「人間、神とはなんだと思う」
俺は少し考えて
「詳しい人?」
神々は固まった。
「詳しい人だと?」
「うん、色々知ってそうだから」
数兆年生きてきて、初めて言われた事だった。
会議終了後、神々は疲れていた。
1人の人間の相手をしただけなのに。
「あの人間、どう思う」
1人の神が聞いた。
「危険だな」
「価値観が危険だ」
神々はあの人間の異常さに気付いたようだった。
その頃・・・
俺は神と神界を歩いていた。
「神様、いっぱい居たねぇ。」
「神界だから当然だ」
話をしながら歩いていると、一つの建物が目に入った。
「あれ何?」
「世界管理庫だ」
「見たい!」
「ダメだ」
「なんで!?」
「重要機密だからだ」
俺は世界管理庫の前で立ち止まった。神は嫌な予感がした。
「重要機密・・・」
「おい、行くぞ」
「・・・」
「おい!」
「気になるなぁ」
神は天を仰いだ。やはり連れてくるべきではなかったと。
その夜、神界会議が行われていた。
「あの人間はどうしている」
「世界管理庫の前」
「何をしている」
「眺めている」
「いつからだ」
「あの会議が終わってからずっと」
「・・・」
「返した方が良いのでは無いか?」
会議に参加している神々全てが賛成した。1人を除いて。
「無理だ。神の世界を知ってしまった、世界管理庫の存在も知った。今更返してもまた戻って来ようとする。」
「記憶を消してはどうだ」
「やつは重度の好奇心の塊だ。記憶を消しても奴の本質は変わらん」
「ああ・・・」
神々たちは納得してしまった。
俺は、管理庫の前に座っていた。気になるが勝手に入るわけにはいかない。
「いつまでそうしてるつもりだ」
後ろから神が話しかけてきた。
「この中を見るまで」
「見せるわけにはいかない」
「じゃあ観光案内して」
神は確信した。こいつは俺の事を観光案内人だと思っていると。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第5話 世界管理庫
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