第43話 あと一歩
「次は遊園地で一番人気のジェットコースターだよ」
俺たちはジェットコースターへ向かっていた。
「名前からして、子供たちには乗れなさそうですね」
「ちょっと難しいかもしれないね」
相変わらず校長は子供優先で考えていた。
「絶叫系ってやつですか?」
「そうだよ〜」
「というか、みんな絶叫系は平気なんだね〜」
「楽しい♪」
「ただ、速いだけではないか」
「分析すればなんてことはないですよ」
「・・・余裕」
「私は平気ですが子供たちは無理ですね」
「なんてことはないぜ!」
『さすがは魔族だなぁ』
なんて思いながら、待機列へ並んだ。
「さすがは一番人気ですね」
「これだけ並んでいると、子供たちは大人しくできるでしょうか」
「さすがに1028人は無理じゃないかな?」
「人間界ではいくつかのグループに分けて、グループ毎に行動してるよ」
「なるほど。出来れば全員一緒がいいですが、現実的ではないですね」
「校長、必要とあれば我らも引率として使え。好奇神も創造神も使ったらいい」
「いいよ〜、全然使って♪」
「・・・私も?」
「まだ先の話にはなるがな」
「うん♪」
そして、順番が来た。俺たちは後列に座る。安全バーが降りると魔王と影刃は軽く握る程度で堂々と座っていた。
「それじゃあ、いってらっしゃ〜い!」
係員の合図でマシンが動き始める。レーンを登っている間、隣に座っている創造神はワクワクが止まらなかった。
「わ〜!登ってる〜♪」
「見て!景色が綺麗!」
その後ろで影宰と校長の声が聞こえる。
「まずは機械で登るのですね」
「その後は重力による落下でしょうか」
さらに後ろの魔王と影刃はわからないが、あの二人なら真顔で微動だにしていないだろう。
最後尾の店主は一般客と乗っていた。
「お〜、綺麗なもんだなぁ」
そして、落下。
「わ〜♪」
創造神は手を挙げて楽しんでいる。
「ひゃぁぁぁぁ!!」
最後尾あたりで叫び声が聞こえた気がした。
「重力に加え、遠心力も利用していますね」
「子供たちは無理ですね」
相変わらず分析する二人。
「・・・」
「・・・」
無言のまま、表情を変えずに座る二人。
コース終盤、ループに差し掛かる。
「重力と遠心力で速度を上げて、一回転ですか」
「ひょおう!」
初めて校長の叫びを聞いた気がした。
「・・・」
「・・・」
相変わらず無言の二人。
「だぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶ店主。
コースも終わり、発着点へ戻ってくる。
「楽しかったね〜♪」
「だね♪」
「いい勉強になりました」
「思わず変な声が出てしまいましたよ」
「・・・」
「・・・」
「死ぬかと思った・・・」
マシンを降りると店主の足はプルプル震えていた。
帰り道、店主の隣で座ってた人が話してるのが聞こえた。
「隣の人、すごい叫んでたよ」
『あぁ、店主さん怖かったんだ』
『まぁ、楽しめたならいいか♪』
こうしてジェットコースターを後にした俺たちは、店主がなかなか動けなかったので休憩することにした。
「店主さん、さっき絶叫はなんてことないって言ってなかった?」
「お前!一番後ろが一番怖いの知ってただろ!?」
「店主さんなら余裕かなって思って♪」
「お前なぁ・・・」
「お待たせ〜♪」
創造神と校長が飲み物を買ってきた。
創造神は片手にソフトクリームを持ちながら小走りしている。
「走ると危ないですよ」
「大丈夫、だいじょ!わっ!」
転びかけた創造神を魔王が支える。
「気をつけろ」
「ありがとう」
それを見ていた俺と影宰は微笑ましく思っていた。
「うま〜い♪」
「次はどこにいくのだ」
魔王が飲み物を飲みながら聞いてきた。
「時間的に次が最後かなぁ。最後は観覧車に乗るよ」
「観覧車ですか」
その時、影宰は何か思いついたのか耳打ちしてきた。
「いいね、それ♪」
俺は思わず笑みを浮かべた。
周りは全員「なんだ?」と言う顔をしていた。
そして観覧車へ向う。
店主はまだ足が震えていたがなんとか歩けていた。
観覧車は思っていたより人が少なく、すんなり案内された。
「魔王様、お先に」
「うむ」
「創造神、先に乗って〜」
「わかった〜」
「あぁ、なるほど」
この時、校長も気付いたようだ。
パタン!
俺と影宰はゴンドラの扉を閉めた。
「おい!何をしている!」
「えぇ!?みんなは〜!?」
「いってらっしゃ〜い♪」
俺と影宰は笑いながら手を振った。
そしてすぐに後ろのゴンドラへ乗り込む。
「あなたたちも好きですね・・・」
「先ほど、魔王様が創造神を助けたのを見て、いけると分析しました」
「俺は面白そうだったから、影宰の話に乗った♪」
「まぁ、神界と魔界が仲良くなれば子供たちにもいい影響になるでしょうから私は止めませんよ」
校長は静かに笑った。
「なんであいつらは二人だけなんだ!?」
全員が店主の言葉を聞いていなかった。
魔王と創造神は急に二人きりになったのが気まずかったのか、しばらく黙ったままだった。
「なかなか話しませんね」
「今までのことがあるからなかなか話せないのかなぁ」
そして、創造神から口を開いた。
「綺麗だね♪」
創造神はゴンドラから見える景色を見ていた。
「・・・そうだな」
魔王も景色を見て呟いた。
「動きました!」
「ついに話し始めた!?」
「あなたたち・・・」
後ろで校長が呆れていた。
「私ね、この旅行に来れて良かったよ。楽しいことも嬉しいこともあった。あの頃のままだとこんなことはあり得なかった」
「・・・」
魔王は何も言わず、創造神の話を聞いていた。
「好奇神が魔王に向かって話してます!」
「この距離じゃ口元がよく見えない!影宰!双眼鏡持ってない!?」
「持ってません!」
好奇神と影宰はなんとか会話を聞き取ろうと必死だった。
「好奇神が居てくれたおかげで、こうして魔王と話をすることができる。でも、このままじゃダメ。私一人の力で魔王と話せるようにならなきゃ和解したとは言えないの」
魔王が口を開く。
「我は好奇神と出会い、神への見方が変わった。貴様のような神ばかりだと思っていたが、好奇神がそうではないと教えてくれた。貴様も昔とは違い歩み寄ろうとしている」
「今度は魔王様が口を開いてます!」
「くそ!何かいい方法はないのか!?」
「お前ら・・・」
店主までも呆れ始めていた。
「我はまだ、貴様を許すことはできない。・・・しかし、許し始めているのは確かだ。まだ好奇神を頼ることになるが、いずれは頼らずとも話し、今日のような旅行も行けると我は思っている」
創造神は口に手を当て涙を流す。
「創造神が泣きました!」
「あれは嬉し泣きだ!」
『・・・もう好きにしろ』と思っている校長と店主。
「ありがとう・・・、許してもらえるように頑張るね」
「うむ、魔界にも遊びに来るがいい。案内くらいはしてやる」
「うん♪」
完全に和解できたわけではない。しかし確実に前へ進んだ。いつの日か神界と魔界の壁が無くなり、交友を深める日が来ると二人は感じている。
「さて」
「?」
「あの二人への仕置きを考えねばいかんな」
「そうだね♪」
こうして創造神と魔王がまた少し距離が縮まった。
「あの・・・二人がこちらを見て笑ってますけど」
「あ〜、これやばいやつだね」
「身代わりに店主さんを差し出そうか」
「なんで俺だぁぁぁぁぁ!?」
その後、俺たちは観覧車から先に降りた創造神と魔王に捕まり、急流すべりを何往復もさせられるお仕置きを受けたのだった。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第44話 太陽神
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