第42話 料理人は止まれない
遊園地内のレストランにきた俺たち。店主の側には影刃がぴっちり付いている。
「今日はそれぞれが食べたいものを食べよう♪」
券売機の目の前で料理の写真を見ながらワイワイしていた。
「これはどういう仕組みなのですか?」
影宰は料理よりも券売機が気になっていたようだ。
「ここで食べたいものを買うと、自動で厨房に注文が飛ぶんだよ〜」
「便利ですね。これを応用して魔界に持ち帰ってみましょうか」
そしてそれぞれが料理を注文した。
「その食券を持って席に行くよ〜。料理が出来たら食券を持って料理を受け取ってね」
席で待つ間、店主がソワソワし出した。
「店主よ、落ち着け」
「すいません。しかし料理人としての血が・・・」
店主は厨房の方をじっと見つめていた。
「店主さん?」
「・・・」
「落ち着け」
「もう我慢できん!」
ダッ!
そういうと店主は影刃を振り切って厨房へ走った。
「・・・逃がさん」
影刃が店主の後を追う。
「すいません!厨房を見学させてください!」
「なんですかあなたは!」
厨房へ入ろうとする店主に追いついた影刃は店主の首元を掴んだ。
「・・・すまない」
そう言いながら店主を席へ連れ戻した。
席に連れ戻された店主は、勝手な行動ができないよう一番奥の席に座らされた。
「だから言ったであろう」
「・・・申しわけありません」
店主は魔王の横でしゅんとしていた。
料理ができるまでの間、店主は他にお客が運んでいる料理が気になっていた。
「あの料理のソースはなんだ!?」
「店主よ」
「・・・はい」
影宰は腕を組みながら考えていた。
「注文を飛ばす仕組みは素晴らしいですが、魔界では通信設備が課題ですね」
そして、それぞれが注文した料理が出来た。
「魔王さんと影刃と店主さんのは俺が取ってくるね♪」
「すまんな、ここを動くと店主が暴走しかねん」
「・・・すまない」
「そんなぁ・・・」
店主は肩を落とした。
テーブルにはそれぞれの料理が並ぶ。
好奇神たち三人は定番のラーメン。
創造神はフランクフルトやポテトなどのジャンクフード、影宰は和食、校長はお子様ランチを選んでいた。
そして問題の店主は、和・洋・中を一品ずつ注文していた。
みんなで合掌して食べ始める。
「このラーメンとやら、なかなかに美味いな」
「・・・うまい」
魔王と影刃はラーメンが気に入ったようだった。
「魔王さん、胡椒いる?」
「胡椒とはなんだ」
「スパイスの一つだよ。入れると美味しいよ」
「そうか」
魔王は胡椒を入れ、影刃も気になったのか入れた。
「うむ、スパイスが効いて少し辛味が増したがうまいぞ」
「・・・ありだな」
隣では創造神がポテトを頬張っていた。
「焦らなくても誰も取らないよ」
「だって店主さんがこっち見てるんだもん」
店主は自分の料理を食べながら創造神のポテトを見ていた。
「店主よ、いい加減にしろ」
「・・・すみません」
「ありがと♪」
「うむ」
少しずつ、だが確実に一歩進んでいる。近い将来、俺が一番やりたいことが実現できるかもしれない。
その後、昼食を食べ終わった俺たちは次のアトラクションへ向かっていた。
「次は何に乗るの?」
「次は急流すべりっていう乗り物だよ」
「どんな乗り物ですか?」
「ん〜全部を言うと面白く無いから、水を使ったアトラクションってだけ言っておくね♪」
「楽しみ〜♪」
アトラクションの待機列に並んでいると、影宰が気付いたようだ。
「あぁ、なるほど」
「影宰、言っちゃダメだよ?」
「わかってますよ」
影宰がクスッと笑っていた。
他のみんなが聞きたがっていたが、影宰は言わなかった。
そして、アトラクションに乗り込む。
前列、好奇神•創造神
中列、影宰•校長
後列、魔王•店主•影刃
アトラクションがスタートした。
初めは穏やかにボートが進んでいく。
「水の上を進むのか。優雅なものだ」
「わ〜綺麗♪」
「これは子供たちも乗れそうですね」
「ここの水は料理には使えないか」
「・・・」
無言で腕を組む影刃。
俺と影宰は、クスッと笑いながらその時を待っていた。
徐々にスピードが上がっていき、先ほどまでゆっくりだったボートが激しさを増していく。
「ちょっと激しくなってきましたね」
「うむ、これからどうなるか楽しみだ」
「わ〜!あっはははは♪」
「このくらい激しくかき混ぜれば新たな料理が作れるか?」
「・・・」
変わらず腕を組む影刃。
そして、落下。
「きゃー♪」
「ひぃえぁぁぁぁぁ!」
後ろから聞いたことのない店主の悲鳴が聞こえていた。
ザバーン!!
滑り降りた衝撃で水飛沫が舞う。
ボートに乗っていた全員はびしょ濡れになっていた。
「水を使うとはこういう意味だったか」
「びしょ濡れだ〜♪」
「子供たちには無理ですねぇ」
「店主さん、見事な叫び声でしたよ」
「勘弁してください・・・影宰さん」
「言わなくて正解だった♪」
俺たちはびしょ濡れになりながらアトラクションを後にした。
「次は車型のアトラクションに乗ろうか♪」
「ほう、車とな」
「確か人間界で移動に使う乗り物でしたよね」
「さすが校長先生」
「次のアトラクションは実際に運転できるんだけど二人乗りなんだ」
「せっかくだしチーム戦で競争しようよ♪」
「いいだろう」
「楽しそ〜♪」
「たまにはいいですね」
「二人乗りなら一人余りますね。私はゴール付近で待ってますから皆さんで楽しんできてください」
「嫌な予感しかしないから俺が余ります!」
「店主さんは強制だよ〜♪」
「え!?」
「店主よ、諦めろ」
「・・・はい」
「負けたチームは、後日店主さんの店でみんなに料理を振る舞う事!」
こうして決まったチームは
好奇神•創造神
「飛ばすよ〜♪」
「楽しみ〜♪」
魔王•店主
「魔王様!安全運転で!」
「負けられんな」
影宰•影刃
「最短ルートを指示しますね」
「わかった」
こうして競争が始まった。
全員が一斉にスタートを切る。
頭ひとつ抜けたのは影宰•影刃チーム。
「次のカーブは少し膨らんで曲がってください」
「・・・」
影宰の指示を無言でこなしている。
後ろのチームをどんどん離していく。
「好奇神!負けちゃう!」
「よし!飛ばすよ!」
前を走るチームを追い抜こうとスピードを上げる。
それを見ていた魔王•店主チーム。
「ふむ、慣れてきたぞ。店主よ、行くぞ!」
魔王はアクセル全開で走り出す。
「魔王様ぁぁぁ!もっとゆっくりお願いしますぅぅぅ!」
「待て!好奇神!」
「好奇神!後ろから魔王たちが凄い勢いで来てるよ!」
「振り切るよ!」
「次、小回りで左カーブです」
「・・・」
後ろの二台は接戦を繰り返していた。
そして、最初にゴールしたのは影宰•影刃チーム。
「完璧な運転でしたね」
「・・・当然」
「速かったですね。最速タイム更新らしいですよ」
校長は係員の話を聞いて笑いながら拍手をしている。
次にゴールしたのは好奇神•創造神チーム。
「あぶなかったぁ・・・」
「なんとか勝てたねぇ♪」
そして最後は、タッチの差で魔王•店主チーム。
「・・・無念」
「生きててよかったぁ!」
「じゃあ魔王さんと店主さんは約束通り料理をお願いね!」
「いつもと変わらねぇじゃねえか!」
「たまには我も作ろう」
「おぉ、これは貴重ですね」
「魔王の料理楽しみ〜♪」
「魔王様!料理のことならお教えしますよ!」
「頼む」
こうして料理会の開催が決定し、俺たちは次のアトラクションへ向かった。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第43話 あと一歩
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