第38話 それぞれの興味
2日目の朝ーー
創造神より早く目が覚めた俺は、体を伸ばし起こさないようにベッドから出る。
チェックアウトまでまだ時間があったので、今日の予定を確認していた。
向かいの部屋が何やらうるさい。
店主の部屋だ。
「まさか朝まで研究してたんじゃ・・・」
店主の部屋に電話してみた。
「おはよう。まさか寝ずに研究してたの?」
「当たり前だ!一晩で終わるような研究じゃ・・・」
ガチャ
俺は電話を切った。
「店主さん元気だなぁ」
そうしてる間に、創造神も起きてきた。
「おはよう、よく眠れた?」
「おはよ〜」
眠そうな目を擦っている。
「荷物まとめて、そろそろ出ようか」
「は〜い」
俺たちは荷物をまとめて部屋を出た。
部屋を出ると、タイミングよく店主以外が出てきた。
「みんなおはよう」
挨拶を交わす。店主を除けばみんな休めたようだった。
「店主はどうした」
「研究・・・」
バァン!
俺が答え終わる前に扉が開いた。
「いや〜!ようやく一区切りついたぜ!」
これで全員が揃った。
フロントでチェックアウトして、外に出る。
朝日を見た魔界組は少し眩しそうだった。
「人間界は朝早くからこんなにも明るいのか」
「時期によって違うけどね」
「人間界は明るさが時期で変わるんですね」
「魔界はずっと同じなの?」
「そうですね。同じ時間に陽が昇り、同じ時間に沈みます」
「四季はないの?」
「四季とはなんだ」
「人間界は一年を通して四つの季節があるんだ。春•夏•秋•冬ってね」
「ほう」
「詳しく教えていただけますか?」
校長がメモを取り出していた。
「また後で教えるよ。それよりも早く出発しよう!」
「今日もやることいっぱいあるよ!」
こうして俺たちは目的地へバスで向かった。
バスの車内では、魔王が景色を眺め、創造神はお菓子を食べ、俺は校長に四季のことを教え、影宰はその話に質問を重ね、影刃が腕を組み微動だにせず、店主が爆睡していた。
目的地に到着。
俺たちは、この国の"古き良き文化"が建ち並ぶ街に来ていた。
「今日は何をするの!?」
創造神が目を輝かせて聞いてきた。
「今日はこの国に昔から伝わる文化に触れてもらおうと思ってるよ」
俺はみんなに聞こえるように言った。
「この国は昔からこうではなかったのか」
「そうだよ〜。この国も発展して今の形になったんだ」
魔王はどのように変わっていったのか興味があるみたいだ。
「面白そうですね。魔界にも取り入れられる文化があるといいですが」
「そうですね。異国の文化は子供たちの話のネタになります」
『この二人は、旅行というより社会見学だなぁ』
「おい!好奇神!この国特有の料理もあるのか!?」
「あるよ〜。"和食"って言うんだ」
「そうか!それは楽しみだ!」
店主は相変わらずだった。
古都ーー
俺たちは古い建物が並ぶ街を歩いていた。
「先程の街より随分と建物が違うな」
「昔の建物は"木"で出来てることが多いんだ」
「木造というやつですか?」
「さすが先生、よく知ってるね!」
「教師ですからね」
話しながら歩いていると、影刃と店主がいないことに気付く。
「あれ?二人はどこに行ったの?」
「あそこだ」
魔王が指を指した方向を見ると、店主は目の前で焼かれている団子に目を輝かせ、影刃は漂ってくる甘い香りにつられたのか、静かに団子を頬張っていた。
「ここの料理長は誰だ!こんな美味いものは初めてだ!話を聞きたい!」
「・・・うまい」
俺はため息をつきながら、団子屋に向かう。
「二人とも行くよ!」
なんとか団子屋から二人を引き離した。
「あまり勝手に動かないで欲しいな」
「だってよ!目の前で見たことの無い食べ物が焼かれていたら飛びつくだろ!?」
「気持ちはわかるけど・・・」
「・・・うまかった」
「・・・」
『今日はこんなのばかりなのかな』
そう思うとこの先、心配しかなかった。
神社ーー
俺たちはこの街の一番大きな神社に来ていた。
「ここは"神社"って言って、神様を祀っているんだ」
「私!?」
「あ〜、うん。この国どこかにあるかもしれないね」
「ということは、神社というものは他にもあるのですか?」
「たくさんあるよ。地域や神社によって祀ってる神様が違うんだ」
「魔王様を祀っているところはあるんですか?」
「・・・俺も詳しいわけじゃ無いから、それはわからないな」
『無いと言ったら怒りそうだな』
「神社に入るときは"作法"というものがあるから、それをみんなでやっていくよ」
その時すでに、店主と影刃の姿は無かった。
「また二人が消えた!」
探そうとする俺を魔王が止めた。
「あの二人のことは放っておけ。周りに害を与える奴らではない」
「でも迷子になったら・・・」
「満足したら戻ってくる」
魔王に言われて、『それもそうだ』と納得した。
「じゃあまずは、この鳥居の前で軽く一礼してからくぐるよ」
みんなが一礼をして鳥居をくぐる。
「この"参道"と呼ばれる道は神様が歩く道と言われていて、人間は端を歩くんだ」
「じゃあ私は真ん中歩く♪」
そう言って歩こうとした創造神を止めた。
「ダメだよ。人間のみんなが"神様のための道"として大切にしてきたんだから」
「わかった!」
俺たちは端を歩く。
「この国の文化は複雑ですね」
影宰は面白いといった表情で呟いた。
参道を歩く。魔王が一つの建物に気付いて聞いてきた。
「あれはなんだ」
「あれは"手水舎"といって心身を清める儀式をする場所だよ」
俺はやり方を説明し、それぞれが身を清めた。
「子供たちにできるでしょうか・・・」
「いい子たちだから大丈夫だよ!」
そして拝殿。
「ここはお賽銭を入れて、神様に祈りを捧げる場所だよ」
「私!?」
「違うよ〜」
俺は拝殿での作法を教えた。
「神に・・・頭を下げるのか」
「我ら魔族にとって、屈辱ですね」
「あぁ!ごめん!無理にやらなくても大丈夫だよ!」
「一つ聞くが、ここに祀られているのはお前たちか?」
「違うよ。人間が昔から信仰してきた神様だよ」
「・・・そうか」
そう言うと魔王は頭を下げた。
「魔王様!」
「これがここでの作法だ。ここの神はこいつらではない。ならば問題あるまい。」
「・・・承知しました」
そう言うと影宰、そして校長もお辞儀をした。
「これで神社の作法は終わり。あとは帰る時に鳥居でまたお辞儀するだけだよ」
「ならば少し見てきてもいいか」
「なにを?」
「この建物の構造が気になってな」
「中に入らなかったら大丈夫だよ」
「そうか」
そういうと魔王は歩いていった。
「でしたら私たちも少し別行動しますね」
影宰と校長も離れていった。
「創造神はどうする?」
「あれやりたい!」
創造神が指を指したのはおみくじだった。
「行こうか♪」
『神がおみくじって・・・』そう思いながら向かった。
「あれ?小吉だ」
「もう一回!」
「おみくじってそういうもんじゃないから!」
「え〜!」
「一回だけだから意味があるんだよ」
「は〜い・・・」
納得していない様子だった。
その頃魔王はーー
「素晴らしい作りだな。装飾や模様も細かく出来ておる」
「魔界の職人に勉強に来させても良いな」
神社の周りを歩きながら、建物の構造や装飾を見ていた。
一方で影宰と校長ーー
「この国の文化は細かいですね。一つ一つの動作の説明が書いてあります」
「やはり子供たちにはまだ早いですかね」
「そうですね。もう少し大きくなってからの方がよろしいかと」
「しかし、人間界は学ぶことが多くて大変です」
「ええ、見たことの無いというのもありますが、魔界と違って特殊です」
二人はこの国の文化について話しながら歩いていた。
その後、魔王、影宰と校長と合流した。
「じゃあそろそろ戻ろうか」
「しかし、あの二人を見かけませんでしたね」
「まぁ、帰る時に回収できるでしょ」
そういうと俺たちは鳥居の方へ向かった。
その途中、俺は気になったことを創造神に聞いた。
「ねぇ、創造神」
「なに?」
「この国って結構神話があるけど、神話に出てくる神様っているの?例えば天照大御神とか」
「いるよ〜♪太陽神だね♪」
「やっぱりいるんだ」
それを聞いて俺は、『今後、神話に出てくる神様に会えるかもしれない』そんなことを考えるだけで、胸が高鳴った。
そして鳥居でお辞儀をしてくぐると、目の前に広がる屋台の中に二人の姿があった。
店主は相変わらず料理のことを聞いて、影刃は屋台の食べ物を制覇したのではないかと思うほど、両手いっぱいに食べ物を抱えていた。
「あの二人、まだやってたんだ」
「・・・さすがですね」
影宰も少し呆れていた。
「影刃、店主さん!帰るよ〜!」
「おう!好奇神!この国の食文化ってのはすごいな!」
「魔界には無いものばかりだからね」
店主と話してると影刃が食べ物を渡してきた。
「・・・やる」
「いいの?」
「・・・うまいぞ」
「ありがとう!」
こうして俺たちは、神社を後にして次へ向かった。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第39話 寿司と城
感想・誤字報告などいただけると励みになります!




