第36話 ようこそ、人間界へ
魔界を出発し、人間界へやってきた俺たち。
人間に怪しまれないよう、皆人間の姿に扮している。
最初に訪れたのは大都市。
「うわぁぁぁ!」
すでにテンション最高潮の創造神。
「ここが・・・人間界!」
目を輝かせていた。
「魔界とは随分と違うな」
「ええ、高い建物、早い乗り物、見るもの全てが初めてです」
「すごいですねぇ。これは子供たちにいい土産話ができそうです」
「おぉ〜!ここが人間界か!?」
創造神ほどではないが、魔界組も驚いていた。
「さぁ!ツアーの始まりだよ!」
俺たちが向かったのはコンビニ。
人間からしたらありふれた場所だが、魔族にとっては初めての場所。魔王を除く全員が楽しそうな顔をしていた。
「人間はいつでもこの店が利用できるんか!?」
「そうだよ〜。24時間営業ってやつだね」
「魔界でも取り入れましょうか。店主さん?」
影宰は店主に向かって真顔で言っていた。
「影宰さん!流石にそれは無理です!」
「冗談ですよ」
影宰は静かに笑っていた。
そんな中、創造神は店内を走り回っていた。
「こら〜、他の人の迷惑になるから走っちゃダメだよ!」
「は〜い!」
創造神は俺の横にくっついてきた。
「魔王さん、どうかな?」
「素晴らしいな。誰でもいつでも利用できる店は魔界でも取り入れてもいいのかもしれん」
その言葉を聞いて、店主は怯えていた。
「店主よ、安心しろ」
「店主の店のことではない」
店主は安心していた。
校長は店の様子をメモしていた。
「熱心だねぇ校長先生」
「勿論ですよ。こんな経験は滅多にできませんからね。子供たちのために勉強しないといけませんから」
さすがは学校長。旅行でも子供たちのためなら勉強だ。
「そういえば影刃は?」
俺は店内を歩き、影刃を探す。
アイスの並ぶケースの前でじっと中を覗いている影刃がいた。
「どうしたの?」
「これはなんだ」
「アイスだよ♪冷たくて甘くて美味しいお菓子♪」
「・・・ほう」
「食べる?」
「・・・食べる」
それを聞いて俺は、みんなを呼んだ。
「みんなでアイス食べよ!1個ずつ選んでね!」
そういうとみんなは、『これはどういう味だ』、『氷か?クリームか?』などと質問をしてきた。
そしてそれぞれのアイスが決まった。
俺は昔懐かしのアイス。
創造神は見た目で選んだ派手なアイス。
魔王は魔界の色に似ているとのことであずきのアイス。
影宰はフルーツ系のアイス。
影刃は真っ先にソーダのアイス。
校長は抹茶のアイス。
店主はなぜかはわからないがただの氷を選んだ。
「・・・なんで氷?」
「料理の基本は水だ!味付きの物より、まずは氷からだ!」
それを聞いた俺は、『料理人としての何かがあるんだろうな』と思った。
コンビニを後にした俺たちは大型のショッピングモールへ向かっていた。
その途中、創造神が何かを見つけて指差した
「ねぇねぇ、あれなに〜?」
「あれは自動販売機だよ」
全員が『なんだそれ』と言った表情をしていた。
「えっとね、お金を入れてボタンを押すと、飲み物が出てくるんだ」
「おもしろそ〜♪」
創造神の目が再び輝いた。
「何か飲み物を買って行く?」
全員が賛成した。
「どれにしようかな〜」
創造神がボタンの前で悩んでいる。
「色だけでは味がわからんな」
「この国ではお茶の種類が多いですね」
魔王と校長がそれぞれ呟いていた。
そして質問が始まり、全員の飲み物が決まった。
俺は生前よく飲んでいた缶コーヒー。
創造神は見た目でフルーツ系の炭酸。
魔王はまたまた魔界の海に似ているという理由でアセロラジュース。
影宰はフルーツ系の無炭酸。
影刃は即決でソーダ。
校長はこの国の文化を、とのことでお茶。
店主は料理人の謎理論で水。
「だと思ったよ・・・」
それぞれが選んだ飲み物を飲みながら歩き出す。
「酸っぱっっっっ!」
魔王が一口飲んで吹き出した。
「それアセロラだもん、そりゃ酸っぱいよ」
俺は笑いながらアセロラの説明をした。
その間、魔王は影宰に渡されたタオルで口元を拭いていた。
「早く言ってくれ」
「だって、魔界の海が〜とか言って決めちゃったし」
「・・・」
魔王は何も言えなかった。
横では創造神が『シュワシュワ〜♪』と言いながら美味しそうに飲んでいた。
影刃は飲み終わっていた。
「そういえば影宰はフルーツ好きなの?」
「フルーツ?果実のことですか?」
「そうそう。アイスの時もフルーツ系選んでたし」
「そうですね、好きというわけではありませんが、魔界にはない果実なので気になりました」
「へぇ〜、今度フルーツショップでも行ってみる?」
「世界各国の果実が置いてあるよ」
「それはぜひ行ってみたいですね」
「じゃあ今度行ってみようか」
「お願いします」
この時俺は"第2回"の計画が頭の中でできていた。
大型ショッピングモールーー
しばらく歩き、大型ショッピングモールへ着き、中に入る俺たち。
「大きい〜♪」
相変わらずテンションが高い創造神。
「これ全てが店なのか?」
魔王は驚いていた。
「魔界にはこのような建物は作れんな」
「そうですね。場所も店も足りません」
大体魔界基準の魔王。
「・・・」
影刃は相変わらず無口だが表情は少し楽しそうに見えた。
「子供たちを連れてきた場合・・・」
校長は子供たちと来た時を想定しシミュレーションをしていた。
「食材はどこだぁぁぁぁぁ!!」
走って行く店主。止めようとしたがあっという間に見えなくなってしまった。
「まぁ、大丈夫か」
「じゃあ、みんなが行きたいとこに行こうか♪」
店主はすでに食品売り場へ消えていたので、残ったメンバーで案内図を見ながら行き先を決めた。
「じゃあ、まずは創造神の行きたいゲームコーナーに行くよ〜」
「わ〜い♪」
俺たちはゲームコーナーへ向かった。
魔界組は初めてみる機械の数に驚きを隠せなかった。珍しく影刃も表情が変わっていた。
「これは・・・すごいですね」
「うむ、随分と騒がしい所だが楽しそうな場所ではあるな」
「ここは子供たちには刺激が強すぎますね。なるべく通らないようにして・・・」
「すご〜い♪きれいだ〜♪」
創造神は子供みたいにはしゃいでいた。
「ねぇ、好奇神!あれはどうやるの!?」
「あれはクレーンを動かして、機械の中にある景品を取るゲームだよ。何か欲しい景品がある?」
「えっとねぇ〜・・・あれ!」
創造神が選んだのは大きめのうさぎのぬいぐるみだった。
「じゃあやってみよ〜♪」
「お〜♪」
そういうと俺はお金を入れ、創造神にやり方を説明した。
だが、そう簡単に取れるはずもなく、気が付けば20回目。創造神は徐々に涙目になっていった。
「俺がやっていい?」
「・・・」
創造神はただ頷いた。
そして、うさぎのぬいぐるみを3回で取った俺は創造神にプレゼントした。
「いいの?」
「だって創造神が欲しかったんでしょ?あげるよ♪」
さっきまで涙目だった創造神の表情が一気に笑顔に変わった。
「ありがとう♪」
「見事だ」
「流石ですね」
「生前結構やってたからね。それで怒られたこともあったし」
俺は少し、過去を思い出していた。
「よし!じゃあ次行こうか!」
俺たちはゲームコーナーを後にし、本屋へ向かった。
「ほ〜、ここもすごいですね」
「子供たちの本はどこでしょうか?」
俺は校長先生を子供向けの絵本コーナーへ案内し、その後、影宰をこの国の歴史書コーナーへ案内した。
俺と魔王と創造神は店の外で待っていた。
創造神はぬいぐるみを大事そうに抱いていた。
「人間界にはこんなにも本があるのだな」
「まだまだこれはほんの一部だよ」
「そうなのか」
「漫画、小説、絵本、歴史書、図鑑。色々な種類の本があるからね」
「魔界にもいくらか持って帰ったら喜ぶだろうか」
「喜ぶと思うよ」
「そうか」
魔王と会話をしていると、校長先生が出てきた。
絵本50冊を台車に乗せて。
「・・・校長先生、買いすぎだよ」
「子供たちのためですからね。これくらいないと」
「俺荷物持ちしたくないよ?」
「大丈夫ですよ。私、こう見えても結構力あるので」
そういうと校長は魔王をひょいと持ち上げた。
「・・・マジか」
校長の力に驚いていると、影宰が出てきた。
校長と同じように、歴史書を台車に乗せて。
「お前もかよ、影宰」
「珍しい本ばかりだったのでつい」
「まぁ、仕方ないか」
俺は諦めた。
「じゃあ最後は魔王さん希望の屋上へ!」
俺たちは屋上へ向かった。あたりは日が沈みかけ、オレンジ色に染まっていった。
「きれ〜い♪」
創造神が景色を見て騒いでいた。
「これが、お前が生きていた世界か」
「そうだよ〜、いい所でしょ♪」
「そうだな。魔界とは随分と違うが、この世界も悪くない」
それを聞いて嬉しくなった。
そして『あぁ、こういうことだったんだな』と魔王に認められた時のことを思い出していた。
その時。
「ここにいたのかぁ!探したぞ!」
振り返ると店主がいた。
両手に食材がパンパンに詰まった買い物袋を持って。
「はぁ・・・みんな楽しんでくれて何よりだよ」
こうして俺たちはショッピングモールを後にし、ホテルへ向かった。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第37話 それぞれの夜
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