第28話 好奇神
魔界から帰った俺は案内神、管理神そして創造神に迎えられた。
「ただいま〜」
「おかえり〜♪」
創造神はすっかり元気になったようだ。魔王のあの言葉を伝えるのはよそう。伝えたら調子に乗りそうだ。
「おつかれ」
管理神はいつも通りだった。
「お前はもう魔界担当になったな」
案内神もいつも通りに言ってきた。
「俺はそんなつもりないんだけどね」
「まぁ楽しいからいいけどさ〜」
俺はいつの間にか魔界担当の神になっていたらしい。
「それと、好奇神っていうのやめて欲しいんだけど」
「そのことだが・・・」
案内神は説明を始めた。
「お前が魔界に行っている間に、神界会議が開かれてな。正式に、お前を"好奇神"とすることに決まったんだ」
「え?聞いてないんだけど!」
「今言ったからな。このことは神界全域に通達された。もう取り消せないぞ」
「いやいや!ちょっと待って!俺はただ好奇心で動いてただけなんだけど!」
管理神が呟いた。
「だからだ」
「誰よりも好奇心で動き、誰よりも世界を動かしている。」
「・・・」
俺は言葉が出なかった。
「やったね〜♪好奇神!」
創造神が満面の笑みで言った。
「だから、その呼び方やめてってば!」
「もう、神界のみんなが呼んでるよ?」
「俺の意見は!?」
「満場一致で可決されたぞ。好奇神」
「もう諦めて受け入れろ。好奇神」
「受け入れろ〜♪好奇神♪」
「・・・もう、好きにして」
諦めるしかないと悟った俺だった。
「そういえば・・・」
「俺、神界のことほとんど見てないや」
「色々あったからな」
案内神が思い出してお腹を抑える。
「今日は神界を観光しようかな」
「お前にとっては神界も観光地なんだな」
案内神が呆れていた。
「私が案内する〜♪」
創造神が元気よく手を上げた。
「お待ちください、創造主様」
案内神が創造神を止めた。
「我々も行きます」
「我々?」
管理神は"俺を巻き込むな"といった表情で案内神を見ていた。
「創造主様ではまともな案内になりません。ですので、我々も同行します」
管理神は深いため息をついた。
「なにそれ〜!?ちゃんと案内できるもん!」
「ではお聞きしますが、重要な施設と面白そうな施設、どちらを案内しますか?」
「面白そうな施設!」
「同行します」
「なんで〜!?」
「正式に神格も決まったのです。真面目に案内しなければなりません!」
2人の話は終わりそうになかった。
「もういいから、とりあえず案内して?」
「放っておけ、行くぞ」
管理神は2人を置いて歩いて行った。
神界中央広場ーー
「ここはね〜、広場〜♪」
「創造主様、ちゃんと案内してください」
2人はまだやっていた。
「ここは神界中央広場だ。様々な店が並んでおり、ここで買い物をする神も多い」
「神様も買い物とかするんだね。何買うの?」
「俺の場合は本だな。管理庫の責任者として知識は多いに越したことはない」
「へぇ〜、ちなみに通貨はなに?」
「様々な通貨が使える。人間界でいう"円"も使える」
「便利だね〜」
「私は、面白そうな物があったら買うよ!」
「また無駄遣いですか・・・」
「無駄じゃないもん!」
俺はこの2人は放っとくのが最適だと判断した。
そんな中、俺は一つの店が気になった。
「あれはなんの店なの?」
「おもちゃ屋さん♪」
「違います。魔道具店です」
「神界にも魔道具なんてあるの?」
「世界各地で古代から現代まで使われていた魔道具を取り扱う店だ。神の中には魔道を専門としている神もいるのだ」
「へぇ〜、変わった神様だね」
全員が"お前が言うな"という顔をしていた。
広場には他にも様々な店が並んでおり、神々がそれぞれ利用し、生活していた。
「神様も案外、普通の生活してるんだね」
「当たり前だ」
「もっと特別な存在だと思ってたよ」
「それはお前たち人間から見た神の像だろ?」
「確かに、神様って誰も見た事がないから想像でしか描けないもんね」
「実際にはこうやって普通に生活している」
買い物をして、食べて、仕事して。普通の人間と大差ない生活を送っていた。
「じゃあ神と人間の絶対的に違う部分はなんなの?」
創造神が即答する。
「人間より自由に遊べる事!」
「違います!」
案内神も即答した。そして答えた。
「いいか、まず神というものに死の概念はない。だが、堕落した神は会議場で審議され、改善の余地がない場合、消される。破壊神によってな。」
「破壊神・・・?」
「神を消すことのできる唯一の神だ」
「創造神は堕落してる様に見えるけど?」
「このお方は、すべてを作ったお方。破壊神であれど消せない存在だ」
「結構すごい神なんだね、創造神って」
「でしょ〜♪」
創造神がドヤ顔している。
それを無視して案内神は続けた。
「そして、皆に共通して与えられた力は、二つある。まず一つ目が"移動"だ。これはお前もやっている事なので簡単にいうが、時間、場所、次元、あらゆるものを瞬時に移動できる」
「あ〜、あのシュッってやつね」
「二つ目が"管理"だ。お前と初めて会った時の様に、死した者の前に現れ、判決を下す。死という概念のあるもの全てにだ。そうして世界のバランスを保っている。お前の場合は判決の前に神界に来てしまったがな」
「あはは・・・」
「そして、それぞれの神には、個有の力が宿る。」
「個有の力?」
「そうだ。例えばお前の場合だが、好奇心が個有の力だ。様々な事柄の面白い側面を抽出し、周囲を巻き込む。これが好奇心という個有の力の一部だ」
「俺に・・・そんな力が」
「お前は、そんなつもりはないというが、様々な場面で力を発揮している。魔界で思い当たる節があるはずだ」
「・・・」
俺は魔界での事を思い出していた。気になるから、見たいからという理由で動いていたが、その結果、魔界の住人に認められていた事を。
「これが人間との絶対的に違う部分だ」
「みんなにも個有の力はあるんだよね?」
「ある。全ては言えないが、私は死した者の前だけではなく、生きているものにも判決を行える。管理神は、記憶の改竄、抹消、歴史の改変ができる。創造主様はありとあらゆるものを作る」
予想以上の説明をされ、俺は混乱していた。人間の時の神と違い、本物の神はやはり偉大だった。同時に恐怖を覚えた。今まで対等のように話していた3人がとてつもなく大きな存在に見えたからだ。
「・・・」
俺は何も言えなかった。
「安心しろ」
管理神が話し始めた。
「お前も、好奇神という神だ。俺たちと対等でいい。今まで通りでいい」
「そうだそうだ〜!また一緒に過去に行ったり、偉人の前に行こうよ♪」
「創造主様、あなたは自重してください」
「なんで私ばっかりなのさ〜!?」
「前科がありますから」
「ぶ〜!!」
いつもの3人がそこにいた。俺はこの神たちと対等でいいんだ。そう思うと、不思議と嬉しくなった。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第29話 諦めないアンモナイト
感想・誤字報告などいただけると励みになります!




