第21話 魔界は観光地
俺は魔界を探索していた。
どうやら俺が最初に入った所は魔界の入り口、いわば玄関という事らしい。
魔界の案内は魔王の側近の1人である、影宰という魔族がしてくれている。
「ねぇねぇ、他の魔族たちはどこで暮らしてるの?」
「あそこに魔王様の城が見えるだろ?その周りに魔族たちの街がある。」
「へぇ〜、城下町ってやつだ!」
「なんだそれは?」
「俺がいた人間界にも、城があって、その周りに人々が暮らしてたんだ。その町を城下町って言ってた。」
「ほう、人間界にも似たような物があるのか。」
この影宰はすごく真面目だ。魔界を統括する最高責任者らしい。俺が言った知らない事は全て記録している。
「お前は本当に神なのか?」
影宰は気になったのか、俺に聞いて来た。
「元々は人間なんだけど、創造神に勝手に神にされちゃった。」
「その格好は?」
「俺が人間だった時に着ていた服だよ。神にされちゃったけど、人間だった頃を忘れたくないからこの服のままなんだ。」
「そうか。」
「あ〜でも、魔族の服も着てみたいかも。」
「そのうち着る機会もあるだろう。」
たわいのない会話をしながら、俺たち2人は魔界を歩いていた。
城下町ーー
「お〜、神界とも人間界とも全然違うね〜」
そこは魔族たちの暮らす町、様々な種類の魔族たちが生活をしていた。家や食べ物、生き物も初めて見る物ばかりだった。町は少しざわついていた。距離を取って見守る者、噂話をする者、物陰からこちらを覗く子供の魔族。皆の視線が俺に集まっていた。
「なんかめっちゃ見られてない?」
「神族の者が魔界に来る事は滅多に無いからな。皆も興味があるのだろう。」
「そっか〜、魔界はなんで神族を嫌ってるの?まぁ大体見当はつくけど。」
「大元は創造神だが・・・詳しくは魔王様に聞くといい。」
「やっぱり創造神が原因か。わかった、今度魔王さんに聞いてみる。」
「魔王・・・さん!?」
「魔王さんが許可してくれたよ〜」
「本当に変わった神だな」
影宰はふっと笑った。
「さて、町に着いたが何をしたい?」
「とりあえず、お腹空いたから魔界のご飯を食べてみたい。」
「いいだろう。」
そういうと、町にある1つの店に入った。
影宰が店主と話している。話をしている途中で店主がチラチラとこちらを見ていた。
「あんた変な見た目してるが、神族の者なんだってな!」
店主が声を掛けてきた。
「半分正解だよ〜、俺は元人間だからね。」
「そうか!今魔界の料理を振る舞ってやるから待ってろ!」
そういうと店主は厨房へ戻って行った。
「楽しみだなぁ、どんな料理が出てくるんだろう。」
俺はワクワクが止まらなかった。
それを見た影宰は
「料理如きでそんなに楽しそうにする者は初めて見たぞ。」
「だって見た事も、食べた事もないし。」
「知らない事を知るって楽しくない?」
影宰は気持ちがわかった。影宰自身も初めはそうだった。魔界の事を調べるうちに、魔王の側近として選ばれた時の事を思い出していた。
「そうだな。」
「だから今度は、神族、人族の事を教えてくれ。」
「神族のことはあまり知らないけど、人間の事はいいよ〜」
そう言うと、影宰は静かに笑った。
影宰と話をしてる時、料理が運ばれてきた。
「お待ち!どれもうめぇぞ!」
様々な料理が運ばれてきた。どれも見たことの無いものばかりだ。だが、美味しそうな匂いに釣られ、料理を口に運ぶ。
「うまぁ!」
食べたことの無い味だが、確かに美味かった。
「だろう!じゃんじゃん食え!」
「今度人間族の料理も教えてくれや!」
そう言うと店主は戻って行った。
「店主さん、いい人だねぇ。・・・人?まぁいいか。」
俺は未知の料理に手が止まらなかった。それを見た影宰は静かに食べながら言った。
「慌てて食べんでも、誰も取らないから落ち着いて食べたらどうだ?」
「いや〜、どれも美味くて美味くて、止まらんかった。」
そしてーー
「ふぅ、ご馳走様。」
「店主さん!美味しかったよ〜!」
「おう!また来てくれや!」
そう言うと、俺たちは店を出た。
「いや〜、美味かったぁ〜」
「ふっ、さぁ次はどうする?」
「次かぁ、次は別の観光地に行ってみたいかなぁ。」
「観光地なんてものはないぞ?」
「え?俺からしたら魔界の全部が観光地だよ?」
「・・・」
影宰は感じた。これ、こいつが満足するまで終わらないやつだと。
「まぁいい、何を見たいか言えばそこへ連れてってやろう。」
「じゃあまずは〜・・・」
俺は辺りを見回した。少し離れたところに小高い丘があった。
「あの丘に連れてって。」
「なぜあの丘なんだ?」
「なんとなく?目についたから。」
「・・・」
そう言うと2人で歩き出した。
丘ーー
小高い丘に着くと魔界を一望できた。魔王城や城下町。少し離れた場所に森らしき物も広がっている。海の様な場所もある。
「おぉ〜。魔界が一望できる。」
「見ても楽しい物はないだろう?」
「楽しいよ?だって見た事ないからね。それに・・・」
「なんだ?」
「魔界って綺麗だねぇ」
「・・・」
住み慣れた世界、見慣れた世界だからこそ、『綺麗』と言う言葉に驚いた。
「魔界が『綺麗』なんて言うやつは初めてだな。」
「え?そうなの?こんなに綺麗なのに?」
「皆、口を揃えて『怖い』、『暗い』、と言うぞ?」
「そうかぁ、俺は『綺麗』だと思うけどなぁ?俺がおかしいのかな?」
「そうかもな」
影宰が笑う。自分の世界を『綺麗』と言うやつがいて少し嬉しい気持ちだった。
しばらく丘からの景色を堪能してから
「さぁて、そろそろ魔王さんのところに行こうかな」
「観光はもういいのか?」
「まだまだするよ?でも魔王さんにお礼を言いに行かなきゃね。」
「お礼?」
「最初来た時、助けてくれたからそのお礼。あと神界と仲が悪い話を聞きたい。」
「・・・お前、それがメインだろ。」
「バレた?でもお礼言いたいのは本当だよ。」
「だってこんな綺麗な世界も、美味しい料理も魔王さんが頑張って作り上げたんでしょ?」
こいつ、本当に神か?と思えるくらい争いやいざこざを考えていない。ただただ自分の好奇心に従ってるだけだ。
「好奇神・・・か。」
「なに?」
「なんでもない、行くか。」
「行く!」
そう言うと2人は魔王城へ向かった。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第22話 魔界の始まり、授業の始まり
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