第14話 神化
神々の会議が終わった後、それぞれが持ち場へと戻っていった。
「では、私は失礼します」
案内神が丁寧に一礼して部屋を出る。
管理神も静かに立ち上がり、神A、神B、神Cは会議室で話していた。
だが
一人だけ、席を立たない神がいた。
創造神だった。
静かな部屋に、創造神の独り言がぽつりと落ちる。
「……面白そうなのよねぇ」
彼女は椅子に深く腰掛けたまま、優しく微笑んでいた。
「あの子」
好奇心旺盛で、気になったら止まらない。
見たい、知りたい、体験したい。
その姿は、どこか昔の自分を思い出させた。
「やっぱり」
創造神は小さく笑った。
「神になった方が、絶対に面白いわよね♪」
そう呟くと、創造神はゆっくりと立ち上がった。
その頃、俺は神界をぶらぶらと歩いていた。
「暇だなぁ……」
行きたい場所はいくらでもあるのに、案内神も管理神も今はいない。
ただなんとなく、神界の道を歩いているだけだった。
すると、後ろから聞き覚えのある明るい声がした。
「いた♪」
振り向くと、そこに創造神が立っていた。
「あ」
「どうしたの?」
創造神はにこにこしながら近づいてくる。
「あなたに用があって来ちゃった♪」
「……?」
俺が首を傾げると、創造神は屈託なく言った。
「やっぱり神になろう?」
「嫌」
即答だった。
「え〜」
創造神が頰を膨らませる。
「なんで〜?」
「面倒だから。仕事もあるし」
創造神は少しだけ考え込んだ。
「うーん……」
俺は内心ホッとした。
やっと諦めてくれたらしい。
——そう思った瞬間だった。
創造神が突然、人差し指を俺に向けた。
「じゃ」
「神にしちゃお♪」
「え?」
パチン。
指を鳴らす音と共に、眩しい光が俺の体を包み込んだ。
「え?」
何が起きたのかわからない。
体が熱くなるが、苦しくはない。
むしろ、暖かくて不思議な感覚だった。
光は数秒で消えた。
俺は慌てて自分の体を見下ろした。
見た目は特に変わっていない。
「……何した?」
創造神は満面の笑みで答えた。
「神にしちゃった♪」
沈黙。
俺の頭の中で、時間が止まった。
数秒……いや、もっと長かったかもしれない。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
俺は大声を上げた。
創造神は楽しそうに笑っている。
「これでいっぱい行けるね♪」
「いやいやいや! 待って待って!」
俺は必死に手を振った。
「勝手に決めないでよ!」
「いいじゃない♪」
「良くない! 俺まだ返事してない!」
「したよ?」
「嫌って言ったよ!?」
創造神はきょとんと首を傾げた。
「そうだっけ?」
「そうだよ!!」
創造神は満足そうに頷いた。
「じゃあ私、帰るね♪」
「待って!!」
俺が止めるより早く、創造神の姿は光となって消えてしまった。
「帰るなぁぁぁぁ!!」
神界に俺の叫び声だけが虚しく響いた。
その頃、神々の会議室。
「ただいま〜♪」
創造神が軽やかな足取りで戻ってきた。
神々が一斉に立ち上がる。
「創造主様!」
神Aが恐る恐る聞いた。
「どちらへ行かれていたのですか?」
創造神はにっこり笑って答えた。
「神にしちゃった♪」
一瞬の沈黙。
神A、神B、神C——全員の顔が凍りついた。
数秒後。
「創造主様ぁぁぁぁぁぁ!!」
神界中に悲鳴が響き渡った。
案内神はまだ、この大騒動のことを何も知らない。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第15話 初めての観光
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