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第13話 神々の会議

神界の奥深く、特別な会議の間。

大きな円卓を囲むように、数多くの神々が集まっていた。

ここは神界でも特に重要な議題を話し合う場所だ。

今日は、その中でも異例の議題だった。

一人の人間について。

「では、始めよう」

一人の神が重々しく口を開いた。

「議題は例の人間についてだ」

神々が一斉に頷く。

「あの好奇心の塊か……」

「間違いない」

「前例が無さすぎるな」

会議の空気は最初から重かった。

「世界管理庫の記録を一部見ただけでも異例だ」

「しかもまだ満足していないらしい」

「今度は実際に行きたいと言い始めたそうだ」

神々からため息が漏れる。

誰が見ても普通ではない。

それが共通の見解だった。

案内神が静かに立ち上がった。

「私から報告します」

神々の視線が一斉に集まる。

「彼は現在まで、二百七十三回『行きたい』と言っています」

ざわ……と小さなざわめきが起きた。

「二百七十三回……」

「まだ増えているのか?」

「増えています」

案内神は真顔のまま続けた。

「減る気配は全くありません」

管理神が静かに口を挟んだ。

「世界管理庫の記録を見終えても、興味は薄れるどころか強くなっている。

見るだけでは満足しない。体験したいらしい」

神々が顔を見合わせた。

「厄介だな……」

「実に厄介だ」

その言葉に、誰も反論できなかった。

すると、一人の神が切り出した。

「判決はどうする?」

会議の空気がぴたりと静まった。

案内神が少しばつが悪そうに答える。

「まだ……行っていません」

「忘れていました」

一瞬の沈黙の後、神々から呆れたような空気が流れた。

管理神が小さく呟いた。

「私も忘れていた」

「お前もかよ」

「色々あったからな……」

神々は揃って納得した表情になった。

確かに、色々あった。

三葉虫、アノマロカリス、アンモナイト、恐竜、縄文時代——

忘れたくなる気持ちもわからないでもない。

「転生で良いのではないか?」

「普通の人間には戻れんだろう。あれだけ世界を見た後では」

「記憶を消すか?」

「無理だ。消してもまた気になるに決まっている」

神々は次々と意見を出し合うが、どれも決め手に欠けていた。

その時、会議の間の扉が勢いよく開いた。

「遅れた〜♪」

明るい声と共に現れたのは創造神だった。

神々が一斉に立ち上がる。

「創造主様!」

創造神は気軽な様子で空いている席に座った。

「何の話?」

「例の人間です」

「ああ、あの子ね♪」

創造神はすぐに思い出したようで、楽しそうに笑った。

「判決について話し合っています」

創造神は少し考える素振りを見せた後、明るく言った。

「神にすればいいじゃない」

その一言で、会議の間が凍りついた。

案内神は頭を抱えた。

やはり……そう来ると思った。

神Aが慌てて立ち上がる。

「前例がありません!」

神Bも続ける。

「ただの人間です!」

神Cも加勢した。

「危険です!」

創造神は首を傾げた。

「なんで?」

「だって面白そうじゃない」

神々は揃って頭を抱えた。

そこじゃない……

誰もが心の中でそう思った。

案内神が一歩前に出た。

「創造主様、本人も拒否しています。

面倒だから嫌だと」

創造神は少し驚いた顔をした。

「まだ言ってるの?」

「言っています」

「そっかぁ……」

少し残念そうに呟いた創造神だったが、

すぐに顔を上げてにこりと笑った。

「……うーん」

数秒の間を置いて。

「やっぱり神にしたい♪」

その笑顔を見た瞬間、案内神は今までで一番強い嫌な予感がした。

管理神も静かにため息をついた。

創造神が本気で乗り気になったとき、

神界でどれだけの大騒動が起きるのか——

まだ誰も、知らなかった。

(第十三章 終)

読んでいただきありがとうございました!


次回 第14話 神化


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