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北方街道。
昼。
「のだぁ……」
勇者レイは死んだ魚みたいな目で歩いていた。
背中には剣。
腰には袋。
顔は不貞腐れている。
理由は単純。
働いているからである。
「嫌なのだぁ……」
女神エリシアは横をふわふわ浮いていた。
「約束でしょう」
「のだぁ……」
「魔物退治をするって」
「吾輩、働きたくないのだぁ……」
「知ってるわ」
エリシアはもう慣れていた。
この男。
本当に労働が嫌いなのである。
しかも。
現在向かっているのは初心者向け危険地帯。
弱い魔物ばかり出る区域だった。
理由?
レイが強い場所を拒否したからである。
「死ぬのは嫌なのだぁ!」
「あなた一応勇者でしょう」
「勇者でも痛いのは嫌なのだぁ!」
情けなかった。
すると。
草むらがガサガサ動いた。
「のだっ?」
次の瞬間。
ぴょこん!!
地面から竹が飛び出した。
しかも。
踊っていた。
「たけたけたけ〜〜♪」
「……」
「たけたけたけ〜〜♪」
妙に陽気だった。
おどるたけのこ。
低級植物系魔物である。
特に強くない。
ただ踊る。
それだけ。
レイは真顔になった。
「……なんなのだぁ?」
「魔物よ」
「嫌なのだぁ」
「倒しなさい」
「面倒なのだぁ」
すると。
おどるたけのこが急にレイへ突進してきた。
「たけぇぇぇぇ!!」
「のだぁっ!?」
レイは慌てて剣を振る。
スパァン!!
たけのこ真っ二つ。
「たけぇ……」
死亡。
レイはドヤ顔した。
「うむ!」
「普通のたけのこ相手に得意げにならない」
「勝利なのだっ♡」
すると。
地面に素材が落ちた。
『たけのこ繊維』
「のだっ♡」
レイの目が輝く。
「売れるのだぁ?」
「少しは」
「よぉおおし♡」
急に元気になった。
「狩るのだぁあああ!!」
「現金ねぇ……」
数十分後。
「きぃいいいい!!」
空から大量のコウモリ。
しかも。
全員よだれダラダラだった。
「よだれコウモリよ」
「嫌なのだぁ!汚いのだぁ!」
「避けなさい」
「のだぁあああ!!」
ベチャッ!!
「のだっ」
一匹がレイの顔へ激突。
大量のよだれ。
「のだぁあああああ!!!」
レイは絶叫した。
「汚いのだぁあああ!!」
「落ち着きなさい」
「嫌なのだぁ!!」
ブンブン剣を振る。
数匹まとめて吹っ飛ぶ。
しかし。
「きぃいい!!」
残りが群がる。
「のだぁあああ!!」
レイは半泣きで転げ回った。
「女神ぃ!!助けるのだぁ!!」
「自分でやりなさい」
「冷たいのだぁ!!」
数分後。
レイは全身ベトベトになりながら勝利した。
「うぇぇ……」
「ちゃんと倒せたじゃない」
「臭いのだぁ……」
完全にテンションが死んでいた。
だが。
素材袋を見た瞬間。
「……売れるのだぁ?」
「ええ」
「のだっ♡」
復活した。
その頃。
森の奥。
ぬちゃぁ……
巨大な何かが現れた。
「のだぁ?」
緑色。
ぬるぬる。
しかも妙に偉そうな帽子を被っていた。
「ぬめぬめ隊長よ」
「なんで隊長なのだぁ?」
「部下がいるから」
次の瞬間。
周囲から小さいぬめぬめが大量発生。
「ぬめぇ!」
「ぬめぇ!」
「嫌なのだぁああああ!!」
レイは本気で逃げた。
だが。
ぬめぬめ隊長は意外と強かった。
ぬるぬる滑る。
剣が入らない。
しかも。
臭い。
「のだぁあああ!!」
レイは泣きながら叫ぶ。
「なんでこんなのと戦わなきゃいけないのだぁ!!」
「働いてるからよ」
「労働最低なのだぁ!!」
最終的に。
女神の助言で火を使い撃破。
「ぬめぇぇぇ……」
隊長死亡。
レイは地面へ倒れ込んだ。
「もう嫌なのだぁ……」
「まだ半日よ」
「のだぁあああ!!」
さらに。
午後。
「ギャオオオオ!!」
やけくそトカゲ登場。
名前の通り。
全力で突っ込んでくるだけだった。
「やけくそなのだぁああ!!」
「あなたも大概よ」
夕方。
半額ミイラ出現。
「は、半額なのだぁ!?」
レイの目が輝く。
「安いのだぁ!?」
「値引きされてるわけじゃないわよ」
半額シールみたいな呪符が貼られてるだけだった。
しかし。
レイは妙にテンションが上がった。
「倒すのだぁああ!!」
「なんで急に元気なのよ」
夜。
くたびれ悪魔登場。
「はぁ……」
魔物なのに疲れていた。
「帰りたい……」
「なんか親近感あるのだぁ」
「あなたと同類ね」
「嫌なのだぁ!!」
最後。
のろまゴーレム。
遅い。
本当に遅い。
「……」
「……」
「……」
レイは途中で座った。
「遅いのだぁ」
「待ちなさい」
「暇なのだぁ」
結局。
三十分後くらいに倒した。
そして。
夜。
焚き火の前。
レイはボロボロだった。
「のだぁ……」
泥だらけ。
臭い。
疲労困憊。
「働いたのだぁ……」
女神は紅茶を飲んでいた。
「頑張ったじゃない」
「嫌なのだぁ……」
「でもちゃんと倒したわ」
「のだぁ……」
レイはゴロゴロ転がる。
しかし。
素材袋はパンパンだった。
「……いっぱい売れるのだぁ?」
「そこそこね」
「のだっ♡」
即復活。
「働くのも悪くないのだっ♡」
「現金ねぇ……」
だが。
レイは突然ニヤリと笑った。
「のだっ♡」
「何?」
「盗賊どもへの復讐資金なのだぁ♡」
エリシアは天を仰いだ。
「……結局そこなのね」




