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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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9

 北方街道。


 昼。


「のだぁ……」


 勇者レイは死んだ魚みたいな目で歩いていた。


 背中には剣。


 腰には袋。


 顔は不貞腐れている。


 理由は単純。


 働いているからである。


「嫌なのだぁ……」


 女神エリシアは横をふわふわ浮いていた。


「約束でしょう」


「のだぁ……」


「魔物退治をするって」


「吾輩、働きたくないのだぁ……」


「知ってるわ」


 エリシアはもう慣れていた。


 この男。


 本当に労働が嫌いなのである。


 しかも。


 現在向かっているのは初心者向け危険地帯。


 弱い魔物ばかり出る区域だった。


 理由?


 レイが強い場所を拒否したからである。


「死ぬのは嫌なのだぁ!」


「あなた一応勇者でしょう」


「勇者でも痛いのは嫌なのだぁ!」


 情けなかった。


 すると。


 草むらがガサガサ動いた。


「のだっ?」


 次の瞬間。


 ぴょこん!!


 地面から竹が飛び出した。


 しかも。


 踊っていた。


「たけたけたけ〜〜♪」


「……」


「たけたけたけ〜〜♪」


 妙に陽気だった。


 おどるたけのこ。


 低級植物系魔物である。


 特に強くない。


 ただ踊る。


 それだけ。


 レイは真顔になった。


「……なんなのだぁ?」


「魔物よ」


「嫌なのだぁ」


「倒しなさい」


「面倒なのだぁ」


 すると。


 おどるたけのこが急にレイへ突進してきた。


「たけぇぇぇぇ!!」


「のだぁっ!?」


 レイは慌てて剣を振る。


 スパァン!!


 たけのこ真っ二つ。


「たけぇ……」


 死亡。


 レイはドヤ顔した。


「うむ!」


「普通のたけのこ相手に得意げにならない」


「勝利なのだっ♡」


 すると。


 地面に素材が落ちた。


『たけのこ繊維』


「のだっ♡」


 レイの目が輝く。


「売れるのだぁ?」


「少しは」


「よぉおおし♡」


 急に元気になった。


「狩るのだぁあああ!!」


「現金ねぇ……」


 数十分後。


「きぃいいいい!!」


 空から大量のコウモリ。


 しかも。


 全員よだれダラダラだった。


「よだれコウモリよ」


「嫌なのだぁ!汚いのだぁ!」


「避けなさい」


「のだぁあああ!!」


 ベチャッ!!


「のだっ」


 一匹がレイの顔へ激突。


 大量のよだれ。


「のだぁあああああ!!!」


 レイは絶叫した。


「汚いのだぁあああ!!」


「落ち着きなさい」


「嫌なのだぁ!!」


 ブンブン剣を振る。


 数匹まとめて吹っ飛ぶ。


 しかし。


「きぃいい!!」


 残りが群がる。


「のだぁあああ!!」


 レイは半泣きで転げ回った。


「女神ぃ!!助けるのだぁ!!」


「自分でやりなさい」


「冷たいのだぁ!!」


 数分後。


 レイは全身ベトベトになりながら勝利した。


「うぇぇ……」


「ちゃんと倒せたじゃない」


「臭いのだぁ……」


 完全にテンションが死んでいた。


 だが。


 素材袋を見た瞬間。


「……売れるのだぁ?」


「ええ」


「のだっ♡」


 復活した。


 その頃。


 森の奥。


 ぬちゃぁ……


 巨大な何かが現れた。


「のだぁ?」


 緑色。


 ぬるぬる。


 しかも妙に偉そうな帽子を被っていた。


「ぬめぬめ隊長よ」


「なんで隊長なのだぁ?」


「部下がいるから」


 次の瞬間。


 周囲から小さいぬめぬめが大量発生。


「ぬめぇ!」


「ぬめぇ!」


「嫌なのだぁああああ!!」


 レイは本気で逃げた。


 だが。


 ぬめぬめ隊長は意外と強かった。


 ぬるぬる滑る。


 剣が入らない。


 しかも。


 臭い。


「のだぁあああ!!」


 レイは泣きながら叫ぶ。


「なんでこんなのと戦わなきゃいけないのだぁ!!」


「働いてるからよ」


「労働最低なのだぁ!!」


 最終的に。


 女神の助言で火を使い撃破。


「ぬめぇぇぇ……」


 隊長死亡。


 レイは地面へ倒れ込んだ。


「もう嫌なのだぁ……」


「まだ半日よ」


「のだぁあああ!!」


 さらに。


 午後。


「ギャオオオオ!!」


 やけくそトカゲ登場。


 名前の通り。


 全力で突っ込んでくるだけだった。


「やけくそなのだぁああ!!」


「あなたも大概よ」


 夕方。


 半額ミイラ出現。


「は、半額なのだぁ!?」


 レイの目が輝く。


「安いのだぁ!?」


「値引きされてるわけじゃないわよ」


 半額シールみたいな呪符が貼られてるだけだった。


 しかし。


 レイは妙にテンションが上がった。


「倒すのだぁああ!!」


「なんで急に元気なのよ」


 夜。


 くたびれ悪魔登場。


「はぁ……」


 魔物なのに疲れていた。


「帰りたい……」


「なんか親近感あるのだぁ」


「あなたと同類ね」


「嫌なのだぁ!!」


 最後。


 のろまゴーレム。


 遅い。


 本当に遅い。


「……」


「……」


「……」


 レイは途中で座った。


「遅いのだぁ」


「待ちなさい」


「暇なのだぁ」


 結局。


 三十分後くらいに倒した。


 そして。


 夜。


 焚き火の前。


 レイはボロボロだった。


「のだぁ……」


 泥だらけ。


 臭い。


 疲労困憊。


「働いたのだぁ……」


 女神は紅茶を飲んでいた。


「頑張ったじゃない」


「嫌なのだぁ……」


「でもちゃんと倒したわ」


「のだぁ……」


 レイはゴロゴロ転がる。


 しかし。


 素材袋はパンパンだった。


「……いっぱい売れるのだぁ?」


「そこそこね」


「のだっ♡」


 即復活。


「働くのも悪くないのだっ♡」


「現金ねぇ……」


 だが。


 レイは突然ニヤリと笑った。


「のだっ♡」


「何?」


「盗賊どもへの復讐資金なのだぁ♡」


 エリシアは天を仰いだ。


「……結局そこなのね」

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