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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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6 元仲間たち回

 王都アルメリア。


 王城大広間。


「――以上の功績により、アレン・ヴァルディアを王国騎士団特務副団長へ任命する」


 国王の声が響いた。


「はっ」


 片膝をつく青年。


 アレン。


 相変わらず顔が良かった。


 いや、前より良く見えた。


 理由は単純。


 地位と実績がついたからである。


 人間、肩書がつくとさらに輝いて見える。


 特にイケメンは。


 周囲の貴族令嬢たちは完全にうっとりしていた。


「素敵……」


「やっぱり違うわ……」


「しかも未婚……」


「実家も名門寄りなのよね……」


 ヒソヒソ声が止まらない。


 しかも。


 アレンは強い。


 礼儀正しい。


 酒癖も悪くない。


 女性問題も少ない。


 部下への態度も誠実。


 比較対象がレイだったせいで、なおさら聖人に見えていた。


 一方。


「おめでとうございます、アレンさん」


 ミーナが笑顔で拍手していた。


 以前より高級そうなローブを着ている。


 当然である。


 給料が上がった。


 以前は。


『勇者税』


『リーダー管理費』


『精神的支援料』


 など意味不明な名目でレイに金を吸われていた。


 だが今。


 吸う存在がいない。


 結果。


「生活ってこんな楽だったんですね……」


 ミーナは最近ちょっと感動していた。


 しかも。


 騎士団所属になってから待遇が激変した。


 個室。


 研究費。


 食事付き。


 魔法書購入補助。


 さらに。


「ミーナ殿、次の研究予算ですが」


「追加承認されましたよ」


「えっ、本当に?」


 予算が通る。


 レイ時代。


「魔法書? 高いのだぁ! 吾輩の昼寝代の方が大事なのだぁ!」


 と言われ続けた女である。


 そりゃ感動もする。


 一方。


 神官ルナも順調だった。


「聖堂騎士団から正式招集?」


「はい」


「大神殿直属です」


 出世である。


 しかも超高速。


 理由は単純。


 実力が本物だった。


 レイ時代は。


「回復もっと早くするのだぁ!」


「吾輩を優先なのだぁ!」


「他のやつは後回しでいいのだぁ!」


 などと雑に扱われていた。


 だが今。


「ルナ殿の結界術は王都でも最上位です」


「ぜひ後進育成を」


「結婚予定は……」


「ないです」


「そうですか……」


 貴族たちがめちゃくちゃ残念そうだった。


 そして。


 元レイパーティ最大の問題児。


 戦士ガドック。


 筋肉ダルマ。


 脳筋。


 酒好き。


 元々はレイと同レベルの雑さだった男である。


 だが。


「ガドック隊長!!」


「訓練終わりました!!」


「おう!!」


 なぜか今、若手騎士からめちゃくちゃ慕われていた。


 理由。


 面倒見が良い。


 あと普通に強い。


 さらに。


「ガドックさんって優しいですよね」


「飯奢ってくれるし」


「怪我人運ぶの手伝ってくれた」


 比較対象がレイだった。


 そのせいで。


 多少口が悪くても「常識人」に分類されていた。


 本人が一番困惑していた。


「俺ぁ別に人格者じゃねぇんだが……」


「レイさんの後だと神に見えます」


「そこまでか?」


「そこまでです」


 即答だった。


 そして現在。


 元レイパーティは王国でも注目株になっていた。


 理由は単純。


 実績がおかしい。


 魔王軍幹部討伐。


 古代遺跡攻略。


 大型魔獣制圧。


 しかも。


 レイが抜けてから成功率が激増した。


 王国上層部も察し始めていた。


「……もしかして前の勇者いらなかったのでは?」


「言うな」


「でも実際……」


 皆、薄々気づいていた。


 あの勇者。


 邪魔だったのでは?


 一方その頃。


 山奥。


「のだぁああああ!!やめるのだぁあああ!!」


 レイは盗賊団の娘リズにまた顔へ落書きされていた。


 今日は。


 額に。


『税金未納』


 と書かれていた。


「のだぁあああ!!」


「似合ってますよ」


「嫌なのだぁああ!!」


 しかも。


 盗賊団の連中は最近、レイを普通に面白いペット扱いしていた。


「おい勇者」


「のだぁ?」


「芸やれ芸」


「吾輩は犬じゃないのだぁ!!」


「じゃあ飯抜きな」


「のだっ♡」


 即座に尻を振り始めた。


「のだだだだ〜〜♪」


「……最低だなこいつ」


 リズは本気で呆れていた。


 その頃。


 王都では。


「アレン様の肖像画集、予約完売です!」


「追加印刷を!」


「次は英雄譚の出版も!」


「舞踏会の招待状が山ほど来ています!」


 順調すぎる出世が続いていた。


 しかも。


 アレン本人は割と真面目なので。


「いや、そこまで大げさなことでは……」


 と困惑していた。


 だが周囲は放っておかない。


「謙虚……」


「素敵……」


「勇者とは違う……」


 比較対象が最悪だった。


 そのため。


 何をしても好感度が上がる。


 ある意味無敵である。


 そしてミーナは遠い目をしていた。


「……今思うと、よくあんな人と組んでましたね私たち」


「腐れ縁って怖ぇよな……」


 ガドックが酒を飲みながら頷く。


 ルナは静かに紅茶を置いた。


「でも」


「?」


「たぶん今頃、どこかで普通に生きてますよ」


「……」


「……それはそう」


 全員納得した。


 あの男。


 異常にしぶといのである。


 一方その頃。


「のだぁあああ!!」


 レイは盗賊団の宴会芸で変な踊りをやらされていた。


「もっと腰振れ!!」


「飯食いたいのだぁああ!!」


 なお。


 女神エリシアは頭を抱えていた。


「……なんでまだ生きてるのよあの馬鹿……」

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