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翌朝。
滅びた町ルグナードに朝日が差し込んでいた。
崩れた教会の中。
「ぐごぉおおお……」
勇者レイは大の字で寝ていた。
しかも祭壇の前である。
罰当たりにも程があった。
女神エリシアは腕を組み、ジト目で見下ろしていた。
「……帰れば?」
「のだぁ?」
レイは寝ぼけ眼で起き上がった。
「嫌なのだぁ」
「なんで」
「王都、宿代取られるのだぁ」
「当たり前でしょうが」
レイはしょんぼりした。
だが数秒後。
「のだっ♡」
急に立ち上がる。
「今日はお金を稼ぐのだぁ♡」
「へぇ」
女神は全く期待していなかった。
レイは鼻息荒く言った。
「弱い魔物をいっぱい倒して安全に稼ぐのだぁ♡」
「珍しく賢いわね」
「うむ! 危険なのは嫌なのだっ♡」
レイは荷物をまとめ始めた。
干し肉。
水筒。
謎の勇者グッズ。
その辺で拾った石。
女神は聞いた。
「……なんで石持ってくの?」
「勇者石なのだぁ♡」
「まだ売る気なのね」
「在庫なのだっ♡」
最低である。
一時間後。
レイは南部平原へ来ていた。
ここは初心者冒険者向けの狩場。
スライム。
小型ゴブリン。
弱い狼型魔物。
その程度しか出ない。
レイはドヤ顔だった。
「うむ!」
剣を肩に担ぐ。
「これぞ完璧な戦略なのだぁ♡」
なお。
本当に強い冒険者はここへ来ない。
儲からないからである。
だがレイは違った。
「安全第一なのだっ♡」
すると。
草むらから小型スライムが出てきた。
「ぴゅるる」
「のだぁああ!!」
レイは全力で斬った。
ズバァン!!
必要以上に派手な斬撃。
スライム爆散。
「うむ!」
レイはドヤ顔。
「勝ったのだぁ♡」
周囲の初心者冒険者たちが微妙な顔をしていた。
「あれ、勇者だよな……?」
「なんで初心者狩場に……?」
「しかもスライム相手に本気……」
だがレイは気にしない。
「へっへっへなのだぁ♡」
革袋を揺らす。
中には少しの素材。
「これを売って稼ぐのだぁ♡」
なお、利益はかなり少ない。
昼頃。
レイは森の中を歩いていた。
「のだぁ〜〜♪ 安全なのだぁ〜〜♪」
超ご機嫌である。
その時。
ガサッ。
「のだ?」
振り向く。
誰もいない。
「……のだぁ?」
再び歩く。
ガサガサッ。
「のだ?」
また音。
だがレイ。
危機感が異常に薄かった。
「小動物なのだっ♡」
普通に進んだ。
そして。
数分後。
「今だ!!」
「捕まえろ!!」
「のだっ!?」
網が飛んできた。
レイ、即転倒。
「のだぁあああああ!!?」
さらに。
ドガッ!!
「ぐぼぁっ」
後頭部に鈍器。
レイは地面に突っ伏した。
「よぉし捕まえたぞ!」
「本当に勇者かこいつ!?」
「めちゃくちゃ弱ぇ!!」
現れたのは盗賊団だった。
十数人。
汚れた鎧。
剣。
弓。
典型的な山賊集団である。
レイは網の中で暴れた。
「のだぁあああああ!!離せなのだぁあああああ!!」
「うるせぇ!!」
「吾輩は勇者なのだぁああ!!」
「だから捕まえたんだろうが!」
盗賊たちは大笑いしていた。
「ギャハハハ!!」
「勇者ってもっと強いと思ってたぜ!」
「雑魚じゃねぇか!!」
レイは涙目だった。
「卑怯なのだぁああ!!正々堂々戦えなのだぁああ!!」
「盗賊に何言ってんだお前」
正論である。
しかも。
盗賊団の頭目がニヤニヤ近づいてきた。
大男だった。
傷だらけ。
斧持ち。
見るからに強い。
「へぇ……」
頭目はレイを眺めた。
「本当に勇者様か?」
「のだっ♡」
レイは急にドヤ顔。
「偉いのだっ♡」
「……」
「だから丁重に扱うのだぁ♡」
盗賊たちは吹き出した。
「ギャハハハハ!!」
「頭おかしいぞこいつ!!」
頭目も笑っていた。
だが次の瞬間。
レイは真顔で言った。
「あと身代金いっぱい取るなら吾輩にも分け前寄越せなのだぁ♡」
空気が止まった。
「……は?」
「吾輩、取り分欲しいのだぁ♡」
「お前、捕虜だぞ?」
「でも勇者なのだぁ♡」
意味不明である。
盗賊団全員が困惑していた。
「なんだこいつ……」
「怖ぇよ……」
だがレイは止まらない。
「のだっ♡ あとご飯出せなのだっ♡」
「……」
「肉がいいのだぁ♡」
「お前状況わかってるか?」
「のだぁ?」
本当にわかってなかった。
頭目は額を押さえた。
「……おい」
「はい兄貴」
「なんかもう殺す気失せた」
「わかります」
その頃。
遠く離れた滅びた教会。
女神エリシアは空を見上げていた。
「……」
沈黙。
そして。
「……捕まったわねあの馬鹿」
完全に察していた。
しかも。
妙に慣れていた。
「どうせまた変なこと言ってるんでしょうね……」
一方その頃。
「のだぁあああ!!ロープ痛いのだぁああ!!」
「暴れるな!!」
「あとおやつ欲しいのだぁ!!」
「黙れ!!」
盗賊団のアジトでは。
捕虜のはずの勇者がめちゃくちゃうるさかった。




