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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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32/46

32 尋問されるカイ

 王都アルメリア。


 騎士団詰所。


 薄暗い取調室。


 机。


 椅子。


 冷めた茶。


 そして。


 カイはぐったりしていた。


「……」


 目の下に隈。


 髪ボサボサ。


 完全に疲れている。


 理由?


「もう一度聞く」


 向かい側。


 騎士団員が真顔で言った。


「勇者レイはどこへ逃げた」


「知らないよ……」


 カイは本気で泣きそうだった。


 数日前。


 彼は保護された。


 孤児。


 軽犯罪。


 事情考慮。


 本来ならもう少し穏やかな扱いになるはずだった。


 だが。


 問題があった。


 レイである。


 王国最大級の問題児。


 現在。


 国王直々に追跡命令が出ている。


 つまり。


 レイと接触していたカイ。


 めちゃくちゃ重要参考人扱いされていた。


「本当に知らないんだって……」


「隠すな」


「隠してないよ!」


「勇者と一緒にいただろう」


「数日だけだよ!!」


 カイは机を叩いた。


「僕だってあいつ何考えてるかわかんないよ!!」


 正論だった。


 騎士団員も少し黙る。


 だが。


 別の騎士が口を開く。


「変幻魔法について聞いたか?」


「知らない!」


「逃走先は?」


「知らない!」


「仲間は?」


「盗賊!」


「盗賊以外は?」


「知らないって!!」


 カイは本気で疲弊していた。


 当然である。


 レイ。


 行動原理がめちゃくちゃなのだ。


 普通なら。


 隠れ家。


 目的。


 思想。


 そういうものがある。


 だが。


 レイ。


『無料だから』


『面白そうだから』


『高く売れそうだから』


 で動く。


 誰にも読めない。


「……」


 騎士団側もだんだん困り始めていた。


「……本当に知らないのか」


「だから知らないって……」


 カイは机へ突っ伏す。


「昨日まで教会いたのに、次の日には王城で女になってるやつだよ……?」


 騎士たちが黙る。


 反論できない。


「しかもその次には犬になってるんだよ!?」


「……」


「僕にわかるわけないだろ!!」


 完全に正論だった。


 その頃。


 別室。


 アレンは報告書を読んでいた。


「……」


 内容。


・王城侵入

・クラウディア変装

・盗賊脱獄幇助

・変幻魔法使用

・逃走中


 頭痛しかしない。


 しかも。


 最後に添えられていた証言。


『子犬姿で自画自賛していた』


「……」


 アレンは静かに目を閉じた。


「……なんなんですかあの人」


 本気で疲れていた。


 その時。


 騎士が入ってくる。


「副団長」


「……カイ君は?」


「何も知りません」


「でしょうね」


 アレンは即答した。


「数日程度一緒にいたくらいで、レイさんを理解できるわけありません」


 騎士たちも微妙な顔になる。


「ですよねぇ……」


 実際。


 騎士団ですら理解できていない。


 レイ。


 行動が読めない。


 しかも。


 無駄に生存能力が高い。


 変幻魔法。


 盗み技術。


 逃走技術。


 妙な人脈。


 全部が厄介。


「……」


 アレンは窓の外を見る。


 雨。


 暗い空。


 そして。


「……」


 少しだけ。


 不安があった。


 レイは危険だ。


 だが。


 国王側も少し危うい。


 最近。


 王はレイへ執着し始めている。


 クラウディア。


 過去。


 秘密。


 全部絡んでいる。


「……」


 アレンは静かに息を吐く。


 一方。


 取調室。


「……だから知らないってば」


 カイはもう半泣きだった。


 騎士団員も困り果てている。


「好きな食べ物は?」


「焼いた肉」


「嫌いなものは?」


「宿代」


「それ情報になるか?」


「知らないよ!!」


 カイがキレた。


「あと犬耳嫌がってた!!」


 騎士団が静まり返る。


「……」


「……」


「……何それ」


「知らないよ!!」


 カイは机をバンバン叩く。


「僕だって意味わかんなかったよ!!」


 そして。


 本気で叫ぶ。


「あいつ本当に勇者なの!?」


 騎士団側、全員黙る。


 数秒後。


「……」


「……」


「……難しい質問だな」


 誰も即答できなかった。


 一方その頃。


 山奥。


「のだっ♡」


 当のレイ。


 盗賊団拠点で肉を焼いていた。


「美味いのだぁ♡」


 危機感ゼロだった。

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