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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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29 反省ポーズ

 王都郊外。


 古びた教会。


 夜。


 雨が降っていた。


 ポツ、ポツ、と屋根を叩く音だけが静かに響いている。


 礼拝堂の中。


 長椅子。


 蝋燭。


 女神像。


 そして。


「のだぁ……」


 勇者レイはしょんぼり座っていた。


 膝の上に手。


 背筋だけ妙にピンとしている。


 なぜなら。


「反省ポーズなのだぁ」


 怒られているからである。


 しかも。


 本気で。


 目の前。


 女神エリシア。


 腕組み。


 完全に呆れ顔。


「……」


「……のだぁ」


「……」


「……反省してるのだぁ」


「本当に?」


 即ツッコミ。


 レイは目を逸らした。


「……ちょっとだけなのだぁ」


「正直ねぇ……」


 エリシアは深くため息をつく。


 そして。


 静かに言った。


「あなた、自分が今どれだけ危険かわかってる?」


「のだぁ?」


「国王が本気で怒ってるのよ」


「……」


「……」


「……逃げるのだぁ♡」


「そこじゃないの」


 エリシアが額を押さえる。


 だが。


 今回ばかりは本当に危なかった。


 クラウディアへの変身。


 盗賊脱獄。


 処刑逃亡。


 全部積み重なっている。


 しかも。


 レイ。


 危機感が薄い。


「のだぁ……」


 長椅子の上でちょこんと座る。


 妙に幼児っぽい。


 エリシアは本気で頭が痛かった。


「あなたねぇ……」


「のだぁ?」


「どうして毎回余計なことするの」


「面白いからなのだぁ♡」


「はぁ……」


 即答だった。


 エリシアは椅子へ座る。


 そして。


 少し静かに言った。


「クラウディアは駄目だったわ」


「のだぁ?」


「陛下にとって、あれは傷なの」


「……」


「ただの恋愛じゃない」


 レイも少し黙る。


 エリシアは続けた。


「国が壊れかけたのよ」


「のだぁ……」


「人がいっぱい死んだ」


「……」


「あなたが思ってるより重い話」


 礼拝堂が静かになる。


 レイはしばらく床を見ていた。


「……のだぁ」


「……」


「……ちょっと悪かったのだぁ」


 珍しかった。


 かなり珍しかった。


 エリシアは少し目を細める。


「……ちゃんと理解してる?」


「半分くらいなのだぁ」


「半分なのね……」


 しかし。


 レイは珍しく素直だった。


「陛下、超顔色悪かったのだぁ」


「当然でしょう」


「なんか……」


 レイは少し言葉を探す。


「本当に嫌そうだったのだぁ」


 エリシアは静かに頷く。


「ええ」


「……」


「だから駄目」


 レイはしょんぼりした。


「のだぁ……」


 そして。


 急に。


 ピシッ!!


 妙なポーズになる。


 両手を膝へ置き。


 背筋を伸ばし。


 ぷるぷる震える。


「……?」


「反省ポーズなのだぁ」


「何それ」


「幼少期に教わったのだぁ」


「誰に」


「孤児院のおババなのだぁ」


 エリシアがちょっと吹き出しそうになる。


「……なんで震えてるの」


「怖いのだぁ」


 正直だった。


 レイは半泣きだった。


「また処刑されるの嫌なのだぁ……」


「今度はもっと本気でしょうね」


「のだぁあああ……」


 本気で落ち込む。


 すると。


 エリシアは少し声を柔らかくした。


「でも」


「のだぁ?」


「今回は少しだけ偉かったわ」


 レイが止まる。


「……のだぁ?」


「カイを助けたでしょう」


「……」


「盗賊たちも」


「……」


「ちゃんと助けようとした」


 レイはしばらく黙っていた。


 そして。


「……のだぁ」


 ちょっと照れ臭そうに目を逸らす。


「死ぬの嫌そうだったのだぁ」


「ええ」


「吾輩も嫌なのだぁ」


 エリシアは少し笑った。


「そうね」


 静かな雨音。


 教会は暖かかった。


 レイは毛布へくるまる。


「のだぁ……」


「眠い?」


「ちょっとなのだぁ」


「今日はちゃんと寝なさい」


「のだっ♡」


 レイはゴロゴロ転がる。


 しかし。


 数秒後。


「……でもなのだぁ」


「?」


「クラウディア変身、めちゃくちゃ完成度高かったのだぁ♡」


「反省しなさい」


「陛下の顔すごかったのだぁ♡」


「レイ」


「のだぁっ」


 エリシアがジト目になる。


 レイは即反省ポーズへ戻った。


「反省なのだぁ!!」


「……本当にわかってる?」


「ちょっとだけなのだぁ♡」


「駄目ねぇ……」


 だが。


 エリシアの声は少しだけ優しかった。


 礼拝堂の蝋燭が静かに揺れていた。

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