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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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 深夜。


 王都地下牢。


 静まり返った廊下。


 ランプの火だけが揺れていた。


 カツン。


 カツン。


 一人の看守が歩いてくる。


 帽子。


 鎧。


 鍵束。


 普通の看守だった。


 だが。


 鉄格子の奥。


 リズが顔を上げた瞬間。


「……」


「……」


「……レイ」


 看守がニヤァァと笑った。


「のだっ♡」


 変幻魔法だった。


 看守へ化けたレイ。


 なお。


 微妙に目がキラキラしているので全然怪しい。


「静かなのだぁ♡」


「お前、本当に来たのか……」


 ガルドですら少し驚いていた。


 レイはドヤ顔。


「吾輩、義理堅いのだっ♡」


 エリシアは遠くで腕を組んでいた。


「……その代わり妙なこと考えてる顔ね」


 正解だった。


 レイはゴソゴソと鍵束を取り出す。


 チャリン。


「ほれ」


「……!」


 リズが息を呑む。


 本物。


 牢の鍵。


「どうしたのよそれ」


「盗んだのだっ♡」


「最低」


「看守さん寝てたのだぁ♡」


 しかも。


 妙に手際が良かった。


 孤児時代に積み上げた犯罪技術である。


 ガチャ。


 牢が開く。


 盗賊団たちが静かに外へ出る。


 だが。


 ガルドはレイを見た。


「……お前は?」


「吾輩は別行動なのだっ♡」


「?」


 レイはニヤァァと笑う。


 嫌な予感しかしない。


「派手にやるのだぁ♡」


 翌日。


 朝。


 王都。


 鐘が鳴る。


「脱獄だァァァ!!」


「盗賊団が逃げた!!」


 騎士団が大混乱していた。


 地下牢。


 空っぽ。


 看守は気絶。


 鍵紛失。


 王都が騒然となる。


 アレンが怒鳴っていた。


「西区封鎖!!」


「門を閉めろ!!」


「絶対逃がすな!!」


 騎士団が動く。


 当然。


 国王にも報告が行く。


「……脱獄?」


 玉座の間。


 空気が凍る。


「はい陛下」


「……誰だ」


「恐らく勇者レイの協力かと」


 国王のこめかみに青筋。


「またあいつか……」


 だが。


 その時だった。


 ――コンコン。


 静かなノック音。


 玉座の間が少しざわつく。


 侍従が困惑した顔で振り返る。


「……誰だ?」


 扉が開く。


 そして。


 全員が凍りついた。


「……」


「……」


「……」


 赤いドレス。


 長い黒髪。


 白い肌。


 氷みたいな美貌。


 そこに立っていたのは。


 クラウディアだった。


 数十年前に処刑されたはずの。


 あの。


 公爵令嬢。


「陛下ぁ♡」


 甘い声。


 国王が立ち上がる。


「……っ」


 顔色が変わった。


 完全に。


 血の気が引いていた。


「……クラウ、ディア……?」


 玉座の間が静まり返る。


 貴族たちが震えていた。


「ば、馬鹿な……」


「亡霊!?」


「そんな……!」


 しかし。


 クラウディアはゆっくり微笑む。


「酷いですわぁ♡」


 優雅に歩く。


 カツン。


 カツン。


 国王の呼吸が乱れる。


「……どうして」


「お忘れになりましたのぉ♡」


 その声。


 その仕草。


 完全に本人だった。


 アレンですら息を呑む。


「……まさか」


 エリシアは遠くで頭を抱えていた。


「……最悪」


 当然である。


 クラウディアの正体。


 レイだからだ。


 変幻魔法。


 しかも。


 異様に完成度が高い。


 なぜなら。


 レイ。


 昔から人を騙すことだけは本気だった。


 しかも。


 今回は。


 わざわざクラウディア本人へ会って観察済み。


 無駄に再現度が高い。


「陛下ぁ♡」


 クラウディア姿のレイが微笑む。


 国王が数歩後退る。


「……っ」


 完全に狼狽えていた。


 数十年前。


 忘れようとして。


 消そうとして。


 封じ込めていた過去。


 それが目の前へ現れた。


 しかも。


 あまりにも鮮明に。


「お久しぶりですわぁ♡」


「……」


「お元気でしたぁ♡」


 国王の手が震えていた。


 アレンが即動こうとする。


「陛下、下がって――」


「駄目ですわぁ♡」


 レイクラウディアが扇子を振る。


 ボフン!!


 煙玉。


「!?」


「煙!?」


 さらに。


「きゃあああ!?」


 侍女たちが悲鳴。


 兵士たちが混乱。


 その間。


 レイは全力で走っていた。


 ドレス姿で。


「のだぁああああ!!!」


 廊下を爆走。


 裾を踏んで転びかける。


「歩きにくいのだぁ!!」


 完全に台無しだった。


 だが。


 効果は絶大だった。


 王城中が。


『クラウディアの亡霊が出た』


 でパニックになっていた。


 その頃。


 ガルドたちは王都外周を突破していた。


「……」


「……」


 リズが後ろを振り返る。


 遠くの王城。


 鐘。


 騒ぎ。


 煙。


「……あいつ、本当にやったのね」


 ガルドも呆れていた。


「命懸けで国王煽ってやがる……」


 リズは小さく笑った。


「馬鹿ねぇ……」


 一方。


 王城。


 国王はまだ立ち尽くしていた。


「……」


 震える手。


 苦い記憶。


 そして。


 廊下の奥から響く。


「のだぁああああ!!!」


「転ぶのだぁあああ!!」


 完全にレイの声。


 沈黙。


「……」


「……」


「……レイかァァァァァァ!!!!」


 国王の怒号が王城へ響き渡った。

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