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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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24 処刑の日

 数週間後。


 王都アルメリア。


 朝。


 空気が重かった。


 中央広場には大量の人が集まっている。


 衛兵。


 騎士。


 貴族。


 野次馬。


 屋台まで出ていた。


「今日らしいぞ」


「あの勇者」


「とうとう処刑か……」


「何やったんだっけ?」


「王家の禁忌に触れた」


「あと騒乱」


「あと盗賊団とうんこ戦争」


「最後いる?」


 だいぶ酷かった。


 広場中央。


 処刑台。


 その上。


「のだぁ……」


 勇者レイ。


 両手拘束。


 ボロボロ。


 しかし。


 妙に落ち着いていた。


 いや。


 違う。


 ふてぶてしい。


「人多いのだぁ……」


 エリシアは遠くから見ていた。


 神気を薄めている。


 表情は険しい。


「……本当に処刑まで行くとはね」


 もちろん。


 国王も本気で殺したいわけではなかった。


 だが。


 王家の威信。


 貴族社会。


 政治。


 色々積み重なりすぎた。


 特に。


 クラウディアの件。


 あれが致命傷だった。


 そして。


 今。


 国王は玉座席から静かにレイを見下ろしていた。


「……」


 表情は硬い。


 アレンもいた。


 白銀騎士服。


 副団長席。


 かなり複雑そうな顔である。


 ミーナ。


 ルナ。


 ガドックも来ていた。


「……本当にやるのかよ」


 ガドックが低く呟く。


 ミーナは唇を噛む。


「レイさん……」


 だが。


 本人。


「のだぁ〜〜」


 あくびしていた。


 緊張感ゼロ。


 衛兵が怒鳴る。


「静かにしろ!!」


「眠いのだぁ」


「処刑されるんだぞお前!」


「無料で寝れてたから生活リズム崩れたのだぁ……」


 最低だった。


 その時。


 処刑執行官が前へ出る。


「勇者レイ」


「のだぁ?」


「最後に言い残すことはあるか」


 広場が静まる。


 皆が見る。


 普通なら。


 謝罪。


 後悔。


 涙。


 そういう場面である。


 だが。


 レイは数秒考えた後。


「……」


「……」


「……盗賊どもは元気なのだぁ?」


 広場が静まり返った。


 リズが牢席から叫ぶ。


「殺すわよ!!」


「元気そうなのだっ♡」


 レイはちょっと安心した顔になった。


 国王が額を押さえる。


 アレンは本気で疲れていた。


「最後までこれか……」


 そして。


 処刑執行官が剣を抜く。


 空気が張り詰める。


 人々が息を呑む。


 レイは静かに空を見上げた。


「……のだぁ」


 珍しく静かだった。


 エリシアが目を細める。


「……」


 だが。


 次の瞬間。


「ではさらばなのだぁ♡」


「……?」


 レイがニヤァァと笑った。


 嫌な予感。


 そして。


 ボフン!!


 白煙。


「!?」


「煙!?」


 広場が騒然となる。


 次の瞬間。


 処刑台の上。


 そこにいたのは。


「……犬?」


 一匹の野良犬だった。


「わんっ♡」


 沈黙。


「……」


「……」


「……」


 国王が固まる。


 アレンが目を見開く。


 エリシアは天を仰いだ。


「……変幻魔法」


 そう。


 レイ。


 昔。


 孤児時代。


 盗みのために。


 変幻魔法を覚えていた。


 しかも。


 理由が最低。


『パン屋の犬を誤魔化すため』


 である。


 なお。


 教えてくれた魔法使いの老人には、死ぬほど媚びた。


『おじいちゃまぁ♡』


『天才なのだぁ♡』


『世界一なのだぁ♡』


 など延々ゴマを擦り続け、最終的に呆れられて教えてもらった。


 最低だった。


 そして今。


 その才能が最悪の形で発揮された。


「逃げたぞォォォ!!」


「勇者が逃げた!!」


「犬だ!!」


「違うそっち本物だ!!」


 広場大混乱。


 その頃。


 広場外周。


「のだぁあああああ!!!」


 変装解除したレイが全力疾走していた。


「死ぬかと思ったのだぁああああ!!」


 超速い。


 やはり逃走だけ異常。


 しかも。


 服まで変えていた。


 完全に準備済みだった。


「待てぇぇぇ!!」


「嫌なのだぁ!!」


 アレンが追う。


 だが。


 レイ。


 人混みへ飛び込む。


 屋台を蹴る。


 パンを投げる。


 犬を抱えて放る。


「また犬!!」


 アレンが叫ぶ。


「なんで毎回犬使うんですか!!」


「便利なのだぁ♡」


 そして。


 レイは路地へ飛び込む。


 壁を蹴る。


 屋根へ。


 煙玉。


 変装。


 全部使う。


「のだぁあああ!!」


 アレンですら追い切れない。


「速すぎる……!」


 エリシアは遠くから見ていた。


「……」


 そして。


 小さくため息。


「本当に……」


 レイは遠くの屋根で振り返った。


 風。


 マント。


 ニヤァァという笑顔。


「処刑反対なのだぁあああ♡」


 そして。


 ビシィッ!!


 王城方向へ変なポーズ。


「吾輩は永遠に不滅なのだぁああああ!!!」


 次の瞬間。


 屋根から落ちた。


「のだぁっ!?」


 ドゴォン!!


 荷車へ突っ込む。


「痛いのだぁあああ!!」


 アレンは思わず顔を覆った。


「……本当に台無しですねあの人」

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