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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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 王都アルメリア。


 地下牢。


 カツン、カツン、と衛兵の足音が響いていた。


 重い鉄格子。


 薄暗い石壁。


 じめじめした空気。


 犯罪者たちのうめき声。


 普通の人間なら絶望する場所である。


 だが。


「のだっ♡」


 勇者レイは超ご機嫌だった。


「無料の宿ゲットなのだっ♡」


 衛兵が真顔になった。


「……は?」


 レイは牢の中でゴロゴロ転がっていた。


「しかもご飯付きなのだぁ♡」


「お前投獄されてるんだぞ」


「宿代ゼロなのだっ♡」


 発想が終わっていた。


 隣の牢では。


 盗賊団《黒犬団》の連中が死んだ顔をしていた。


「……」


「……」


「……」


 頭領ガルドなんか完全に魂が抜けている。


 リズもイライラしていた。


「……なんであんたそんな元気なの」


「無料だからなのだっ♡」


「腹立つ……」


 ちなみに。


 盗賊団側は本当に重罪だった。


 強盗。


 誘拐。


 密輸。


 襲撃。


 その他いろいろ。


 普通に長期投獄コースである。


 一方。


 レイ。


 罪状。


『王命無視』


『市場混乱』


『王族タブー刺激』


『騒乱』


 あと。


『盗賊団への異常な落書き』


 最後だけ妙に小物だった。


 しかし。


 国王がキレているので割と危険だった。


 だが。


「のだぁ〜〜♡」


 本人。


 全く危機感なし。


「ベッドあるのだぁ♡」


 藁束へダイブ。


「柔らかいのだぁ♡」


「硬いだろそれ」


「屋外よりマシなのだっ♡」


 エリシアは本気で呆れていた。


「……この男、本当にどこでも生きていけるわね」


 一方。


 保護されたカイは、別室で事情聴取を受けていた。


「怖くなかったか?」


「……うん」


「勇者に変なことされなかったか?」


 カイは少し考える。


「……盗みの姿勢を教えられた」


「駄目だろそれ!!」


 騎士たちが頭を抱えた。


「あと逃げ方」


「最低だなあいつ……」


「でも肉くれた」


「……」


「あと死ぬなって言ってた」


 騎士たちが微妙な顔になる。


「なんなんだあいつ……」


 その頃。


 地下牢。


「のだっ♡」


 レイはパンを食べていた。


「美味いのだぁ♡」


 衛兵が呆れる。


「お前、本当に投獄されてる自覚あるか?」


「宿なのだっ♡」


「牢屋だよ」


「無料なのだぁ♡」


 会話にならなかった。


 しかも。


 レイ。


 盗賊団へ話しかけ始める。


「のだっ♡」


「……」


「お主らも宿代浮いて良かったのだぁ♡」


「殺すぞ」


 ガルドが真顔で言った。


 レイは即鉄格子の奥へ逃げた。


「のだぁっ」


「まだ根に持ってるのだぁ?」


「当たり前だろ!!」


 リズも怒鳴る。


「誰のせいで捕まったと思ってるのよ!!」


「騎士団なのだぁ?」


「お前だ!!」


 レイは数秒考える。


「……でも顔にうんこって書いたのは楽しかったのだぁ♡」


「ぶっ殺す!!」


 盗賊団が鉄格子をガンガン叩く。


 衛兵が怒鳴った。


「静かにしろ!!」


「のだぁああ!!」


 カオスだった。


 すると。


 足音。


 静かに近づいてくる。


 アレンだった。


 白銀騎士服。


 疲れた顔。


「……」


「のだっ♡」


 レイが即ニコニコする。


「アレンなのだぁ♡」


「元気そうですね」


「無料宿最高なのだっ♡」


 アレンは額を押さえた。


「……あなた、本当に状況わかってます?」


「のだぁ?」


「国王陛下がかなり怒ってます」


「……」


「……」


「……のだっ♡」


 レイ、目を逸らした。


「逃げるのだぁ?」


「牢屋からどうやって」


「穴掘るのだっ♡」


「やめてください」


 アレンは本気で疲れていた。


 だが。


 レイは急に真顔になった。


「……アレン」


「?」


「カイは無事なのだぁ?」


 少しだけ静かだった。


 アレンは目を瞬かせる。


「ええ」


「ちゃんと保護されました」


「……のだぁ」


 レイは少し安心した顔をした。


 ほんの一瞬だけ。


 エリシアはそれを見て小さく目を細める。


 だが。


 次の瞬間。


「なら安心して寝るのだっ♡」


 レイ、藁へダイブ。


「ぐごぉおおお……」


「早っ」


 アレンが呆れる。


「普通、もっと不安になりません?」


「この男に常識を求めるだけ無駄よ」


 エリシアが遠い目で言った。


 その時。


 隣牢。


 リズがジト目でレイを見ていた。


「……」


「……?」


「……なんであんた、孤児助けてたのよ」


「のだぁ?」


 レイは半分寝ながら答える。


「なんとなくなのだぁ」


「……」


「腹減るの嫌なのだぁ」


 それだけだった。


 リズは少し黙る。


 だが。


 次の瞬間。


「でも顔にうんこって書いたのは許さぬのだぁ♡」


「やっぱり殺す」


 地下牢に怒号が響いた。


 一方。


 レイはもう寝ていた。


「ぐごぉおおお……無料ぉ……」


 エリシアは静かに天を仰ぐ。


「……本当に図太いわねこの勇者……」

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