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盗賊団《黒犬団》アジト。
地下牢。
「うぇぇぇぇん……」
勇者レイは隅で丸くなっていた。
目の前。
犬耳。
首輪。
ふわふわ尻尾。
完全に辱めセットである。
「終わりなのだぁ……」
かなり本気で落ち込んでいた。
カイは横でドン引きしている。
「……そんなに嫌なの?」
「嫌なのだぁ!!」
レイは即叫んだ。
「勇者の尊厳なのだぁ!!」
「今さら?」
エリシアが冷静にツッコむ。
すると。
リズがニヤニヤしながら牢へ近づいた。
「さーて♡」
「のだっ」
「どれからやろうかしら」
盗賊たちも超楽しそうだった。
「犬芸!」
「尻振り!」
「わんわん!」
「のだぁあああ!!」
レイは震え始める。
そして。
数秒後。
「……」
「……?」
「……のだぁ」
急に静かになった。
レイはゆっくり立ち上がる。
ゴソゴソ。
素材袋を取り出す。
さらに。
革袋。
金貨。
銀貨。
香辛料。
全部並べ始めた。
「……?」
リズが目を細める。
レイは震える声で言った。
「のだ…………」
ものすごく不本意そうだった。
「これで終わりにしろなのだ」
洞窟が静まり返る。
カイも目を丸くした。
「えっ」
レイ。
本気だった。
今。
彼は。
命の次に大事なものを差し出していた。
金。
素材。
香辛料。
勇者石。
全部。
エリシアすら少し驚いていた。
「……そこまで嫌なのね」
「嫌なのだぁ……」
レイは涙目だった。
「犬耳は嫌なのだぁ……」
完全にトラウマだった。
リズはしばらく黙る。
そして。
盗賊団全員。
大爆笑した。
「ぎゃははははは!!」
「全部出したぞこいつ!!」
「本気で嫌なんだな!!」
「勇者石まである!!」
「のだぁ……」
レイは屈辱で震えていた。
だが。
リズは笑いながらしゃがみ込む。
「……ねぇ勇者」
「のだぁ?」
「勘違いしてない?」
「……?」
リズはニコォっと笑った。
「あなた捕まってるのよ?」
「のだっ」
「つまり」
金貨袋を持ち上げる。
「これ、最初から私たちの物」
「……」
「……」
「……のだぁ?」
レイが固まる。
数秒後。
「のだぁああああああああ!!!!」
絶叫。
「返せなのだぁあああああ!!」
「嫌よ♡」
「吾輩のお金なのだぁ!!」
「もう違うわねぇ」
盗賊たちは腹を抱えて笑っていた。
「傑作だなこいつ!!」
「盗賊に交渉してるつもりだったのか!」
「勇者って馬鹿なんだな!」
「のだぁあああ!!」
レイは鉄格子をガンガン叩く。
「泥棒なのだぁ!!」
「盗賊だからな」
正論だった。
しかも。
盗賊たちはもうレイの荷物を漁り始めていた。
「おっ香辛料!」
「高そうだな!」
「金貨結構あるぞ!」
「やめるのだぁあああ!!」
レイは半泣きで暴れる。
「それ吾輩の人生なのだぁ!!」
「軽い人生ねぇ……」
エリシアが呆れる。
しかし。
レイは本気でショックだった。
「うぇぇ……」
牢の隅で崩れ落ちる。
「全部働いて集めたのだぁ……」
「数日だけどね」
「頑張ったのだぁ……」
珍しく本気で哀れだった。
すると。
リズが犬耳を持って近づいてくる。
「さて♡」
「のだっ」
「そろそろ付けましょうか」
「嫌なのだぁああああ!!!」
レイが本気で後退る。
だが。
牢。
逃げ場なし。
盗賊たちは超笑顔だった。
「観客席作れ!」
「勇者ショーだ!」
「わんわんタイム!!」
「のだぁあああ!!」
その時だった。
――ゴォォォン!!!
洞窟全体が揺れた。
「!?」
「なんだ!?」
盗賊たちが振り向く。
さらに。
外から怒号。
「王国騎士団だ!!」
「包囲した!!」
「武器を捨てろ!!」
洞窟が騒然となる。
リズが顔を変えた。
「騎士団!?」
レイも固まる。
「……のだぁ?」
次の瞬間。
洞窟入口。
白銀の鎧。
剣。
整列する騎士たち。
その中央。
長身の青年。
アレン。
「……やっぱりここでしたか」
「のだぁあああああ!?!?」
レイが絶叫した。
「アレンなのだぁあああ!!」
アレンは静かに洞窟内を見回す。
盗賊。
牢。
犬耳。
首輪。
床へ転がる勇者石。
「……」
「……」
「……」
そして。
ものすごく疲れた顔になった。
「……何してるんですかレイさん」
「のだぁあああ!!」
レイは鉄格子へしがみつく。
「助けるのだぁあああ!!」
「嫌です」
「冷たいのだぁ!!」
しかし。
騎士団は既に盗賊たちを包囲していた。
「動くな!!」
「剣を捨てろ!!」
「くっ……!」
盗賊団も焦る。
リズが舌打ちした。
「最悪……」
レイはその隙に叫ぶ。
「アレン!!」
「はい」
「お金ぃぃぃぃ!!!」
「そこですか」
「盗まれたのだぁあああ!!」
アレンは本気で頭を抱えた。
「……本当にブレませんねあなた」




