20 盗賊団《黒犬団》の報復
翌日。
王都南区。
市場通り。
「のだぁ〜〜♡」
勇者レイは上機嫌だった。
隣にはカイ。
昨日より少し顔色が良い。
そして現在。
レイは市場の香辛料屋台を凝視していた。
「のだぁ……」
目が完全に金の目だった。
「高いのだぁ……」
店頭に並ぶ。
黄金色の粉。
赤い香辛料。
異国の香り。
特級スパイスである。
「これ全部お金なのだぁ♡」
「食べ物じゃなくて?」
「売れるのだぁ♡」
守銭奴だった。
その時。
「……勇者様?」
後ろから声。
振り向く。
そこには。
痩せた若い男。
ボロいマント。
怪しい笑顔。
「のだぁ?」
「俺、良い情報知ってるんですよ」
エリシアが即ジト目になった。
「……怪しい」
だが。
レイはもう食いついていた。
「情報なのだぁ?」
「ええ」
男が小声になる。
「山奥に、密輸香辛料の隠し倉庫があるんです」
「のだっ♡」
レイの目が輝く。
「高いのだぁ!?」
「めちゃくちゃ高いですよ」
「のだぁああああ!!」
完全に釣られた。
エリシアが即止める。
「やめなさい」
「お金なのだぁ♡」
「絶対怪しいわよ」
「香辛料なのだぁ♡」
「聞いてない」
カイも不安そうだった。
「……なんか変じゃない?」
「甘いのだぁ♡」
レイはドヤ顔。
「吾輩ほどになると罠は全部見抜けるのだぁ♡」
数時間後。
山奥。
「のだぁ〜〜♪」
レイはニコニコしながら歩いていた。
カイは後ろで震えている。
「……絶対おかしいって」
「大丈夫なのだっ♡」
「でも誰もいないよ?」
「香辛料ぉ〜〜♡」
聞いてなかった。
その時。
ガコン!!
「のだっ!?」
地面が崩れる。
「うわぁぁぁ!?」
カイも巻き込まれる。
ズドォォォン!!
二人まとめて落下。
「のだぁああああ!!!」
数秒後。
地下牢。
「……」
「……」
「……のだっ」
レイがゆっくり顔を上げる。
鉄格子。
ロープ。
そして。
見覚えある洞窟。
「……」
「……」
「……のだぁ?」
聞き慣れた笑い声が響いた。
「あーはっはっはっは!!」
上から現れたのは。
リズ。
盗賊団《黒犬団》の娘。
今日は超ご機嫌だった。
「ようこそ♡」
「のだぁっ」
レイの顔が青ざめる。
「罠なのだぁあああ!!」
「当たり前でしょ」
リズは腹を抱えて笑っていた。
「香辛料で釣れるとか馬鹿すぎるわね!」
「のだぁあああ!!」
レイは牢をガンガン叩く。
「卑怯なのだぁ!!」
「盗賊に何言ってるの?」
正論だった。
しかも。
後ろでは盗賊たちがニヤニヤしている。
「捕まえたぞ勇者ァ!」
「今回は逃がさねぇ!」
「犬勇者め!」
「のだぁあああ!!」
レイは半泣きだった。
しかも。
カイまで捕まっている。
「ご、ごめん……」
「のだぁ……」
レイはガックリ肩を落とした。
「吾輩のせいなのだぁ……」
珍しく。
本気でちょっと反省していた。
だが。
次の瞬間。
「でも香辛料って言われたらしょうがないのだぁ」
「反省してないわね」
エリシアが天井近くで呆れていた。
ちなみに。
彼女。
本当に高みの見物していた。
ふわふわ浮いて紅茶飲んでる。
「助けないのだぁ!?」
レイが絶叫する。
「今回は自業自得すぎるもの」
「酷いのだぁ!!」
リズは牢の前へしゃがみ込む。
「さて♡」
悪い笑顔。
「報復タイムね」
「のだぁっ」
レイが震える。
盗賊たちも超楽しそうだった。
「よぉ勇者!」
「今日は何踊る?」
「またわんわんするか?」
「のだぁあああ!!」
完全にトラウマだった。
リズはニヤァァと笑う。
「今回はもっと酷いわよ?」
「嫌なのだぁ!!」
「まず顔に落書きね♡」
「のだぁっ!?」
「あと三日間、犬役」
「うぇええええん!!」
「それと」
リズが指を鳴らす。
盗賊たちが何かを持ってくる。
巨大な犬耳。
首輪。
そして。
ふわふわ尻尾。
「……」
「……」
「……のだぁ?」
レイの顔から血の気が引いた。
「勇者わんわんセット♡」
「のだぁああああああああ!!!!」
洞窟へ悲鳴が響く。
盗賊団は大爆笑だった。
「ぎゃはははは!!」
「似合いそう!!」
「尻振れ尻!!」
カイはドン引きしていた。
「……勇者って何なんだろう」
エリシアは遠い目をしていた。
「私も最近わからなくなってきたわ……」




