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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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18/46

18 孤児の少年

 王都アルメリア。


 夕方。


「のだぁ〜〜♪」


 勇者レイは上機嫌で歩いていた。


 理由。


 逃げ切ったからである。


「うむ!」


 ドヤ顔。


「吾輩の完全勝利なのだっ♡」


 なお。


 王家から追われている。


 全然勝利ではない。


 だがレイは気にしない。


「アレンでも捕まえられなかったのだぁ♡」


 エリシアは呆れていた。


「逃げる技術だけ異常なのよねあなた……」


「生存能力なのだっ♡」


 しかも。


 今日も素材袋はパンパンだった。


 昼間倒した。


・カサカサ亡霊ネズミ

・すね毛スライム

・泣き虫オーク


 などの素材である。


 相変わらず妙な魔物ばかりだった。


「お金なのだぁ♡」


 レイは袋を抱きしめる。


 完全に金袋扱いだった。


 その時。


 ドンッ!!


「のだっ!?」


 誰かがぶつかってきた。


 小さい影。


 ボロ布。


 痩せた腕。


 孤児の少年だった。


「ご、ごめ――」


 次の瞬間。


 ダッ!!


 少年が全力で逃げ出す。


「のだぁ?」


 レイが首を傾げる。


 数秒後。


「……」


「……」


「……軽いのだぁ?」


 素材袋を確認。


 中身が減っていた。


「のだぁあああああ!!!」


 絶叫。


「盗んだのだぁあああ!!」


 レイ。


 ブチ切れた。


「許さぬのだぁああああ!!」


 そして。


 猛ダッシュ。


「待つのだぁあああ!!」


 エリシアが呆れる。


「すごい勢いね……」


「お金なのだぁあああ!!」


 完全に守銭奴の顔だった。


 王都裏路地。


 少年は必死に走る。


「はぁっ……はぁっ……!」


 だが。


 後ろから。


「のだぁああああ!!」


 異常に速い勇者。


「ひぃっ!?」


 少年が泣きそうになる。


「返せなのだぁああ!!」


「ご、ごめんなさい!!」


「嫌なのだぁ!!」


 レイは壁を蹴り。


 樽を飛び越え。


 洗濯物を突破。


 追跡能力まで妙に高かった。


「なんでこんな時だけ本気なのよ……」


 エリシアは本気で呆れていた。


 そして。


 数分後。


「のだぁっ!!」


 ガシィ!!


「うわぁぁぁ!!」


 ついに少年を捕まえた。


 路地裏。


 逃げ場なし。


 レイは少年の首根っこを掴みながら激怒していた。


「許さぬのだぁああああ!!」


「ご、ごめんなさい!!」


 少年はガタガタ震える。


 十歳くらい。


 ガリガリ。


 顔色も悪い。


 いかにも貧民街の孤児だった。


 だが。


 レイは容赦しない。


「盗みはいけないのだぁああ!!」


「うぇぇ……」


「孤児の先輩として教育してやるのだぁあああ!!」


 少年が固まる。


「……え?」


 エリシアも目を瞬かせた。


「孤児?」


「のだっ♡」


 レイはドヤ顔。


「吾輩も昔は孤児だったのだぁ♡」


 少年はポカンとしていた。


 あまりにも胡散臭いからである。


「……本当に?」


「本当なのだぁ♡」


 レイは腕を組む。


「だから教育するのだぁ!!」


「どんな教育よ」


 エリシアが即ツッコむ。


 しかし。


 レイは真顔だった。


「盗むならもっと上手くやるのだぁ」


「最低」


 即答。


 少年も固まる。


「の、のだぁ……」


「ぶつかり方が下手なのだぁ!」


 レイは指導を始めた。


「まず視線誘導なのだぁ!」


「はい……」


「あと軽い袋を狙うななのだぁ!」


「えっ」


「重い袋の方がお金あるのだぁ!」


「教育内容が犯罪者なのよ」


 しかし。


 レイ本人は妙に真剣だった。


「吾輩レベルになるとぉ〜〜♡」


「ならなくていい」


「逃走経路まで考えるのだぁ♡」


 少年が困惑している。


「……なんでそんな詳しいの」


「勇者だからなのだっ♡」


「絶対違う」


 その時。


 少年のお腹が鳴った。


 ぐぅぅぅ……


「……」


「……」


 レイが止まる。


「腹減ってるのだぁ?」


「……」


 少年は目を逸らした。


 エリシアが静かに言う。


「数日まともに食べてないわね」


「のだぁ……」


 レイはしばらく黙る。


 そして。


「……しょうがないのだぁ」


 ゴソゴソ。


 袋から干し肉を出す。


「ほれ」


「……え?」


「食えなのだぁ」


 少年が固まった。


「い、いいの?」


「盗みは駄目なのだぁ」


「……」


「でも腹減るのはわかるのだぁ」


 レイは妙に複雑な顔だった。


「吾輩も昔、お腹減って死にそうだったのだぁ……」


 珍しく。


 少しだけ静かな声だった。


 少年は恐る恐る干し肉を受け取る。


「……ありがとう」


「のだっ♡」


 レイはドヤ顔。


「感謝するのだぁ♡」


 しかし。


 次の瞬間。


「代金銀貨二枚なのだっ♡」


「うわぁぁぁん!!」


 少年、泣いた。


「冗談なのだぁ!!」


「最低すぎるわよ!!」


 エリシアが本気で怒った。


 だが。


 レイはケラケラ笑っていた。


「あーはっはっは!!」


 そして。


 少年の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。


「次からはもっとマシな盗み方するのだぁ♡」


「だから教育内容!!」


 少年は泣きながら肉を食べていた。


 だが。


 少しだけ笑っていた。


 レイはそんな様子を見ながら腕を組む。


「のだぁ……」


「何」


「孤児って大変なのだぁ」


「……そうね」


「でも」


 レイはニヤリと笑った。


「逃げ足だけは鍛えとくのだぁ♡」


「あなた基準で人生語らないで」

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