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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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 数日後。


 王都アルメリア。


「のだっ♡」


 勇者レイは超上機嫌だった。


 理由?


 復讐が成功したからである。


 広場中央。


 昼。


 人通りの多い場所で、レイはベンチへふんぞり返っていた。


「うむ!」


 腕組み。


 ドヤ顔。


 完全に調子へ乗っている。


「吾輩、完全勝利したのだぁ♡」


 女神エリシアは横で呆れていた。


「顔に落書きしただけでしょう」


「精神的勝利なのだぁ♡」


「小さいわねぇ……」


 しかし。


 レイ本人は本気で満足していた。


「のだっ♡」


 屋台の肉串を頬張りながらニヤニヤする。


「盗賊どもの顔ぉ〜〜♡」


 思い出し笑い。


「大うんこ♡」


「やめなさい」


「リズの変な眉毛ぇ♡」


「本当に最低」


 周囲の通行人たちが微妙な顔をしていた。


「あれ勇者だよな……?」


「なんかすごい機嫌良くない?」


「怖いんだけど」


 だがレイは気にしない。


 なぜなら。


 今の彼の脳内は勝利の余韻でいっぱいだからである。


「のだっ♡」


 しかも。


 今回。


 レイは妙に自信をつけていた。


 魔物退治。


 素材売却。


 盗賊への報復成功。


「吾輩、結構やれるのだぁ♡」


 今さらである。


 エリシアは冷静に言った。


「逃げ回りながらだけどね」


「勝てばよいのだっ♡」


「精神が小悪党なのよ」


 その時。


 広場の子供たちがレイを見つけた。


「勇者だー!」


「うんこ勇者だ!」


「のだっ!?」


 レイが固まる。


「誰が言いふらしたのだぁ!?」


 どうやら。


 盗賊団の一件が一部冒険者経由で妙に広まっていた。


『盗賊団の顔に落書きして逃げた勇者』


『臭い煙玉を使う』


『橋を落として高笑い』


 完全にチンピラだった。


 だが。


 子供人気だけは妙に高かった。


「すげー!」


「悪ガキみたい!」


「のだっ♡」


 レイはちょっと嬉しそうだった。


「英雄譚なのだっ♡」


「違うわよ」


 しかも。


 レイはその場で商売を始めた。


「のだっ♡ 限定販売なのだっ♡」


 机を出す。


 紙を広げる。


 そこには。


『盗賊団壊滅記念グッズ』


 最低だった。


「こちら《大うんこ頭領》記念絵なのだぁ♡」


「うわ最低!」


「銀貨五枚なのだっ♡」


「高っ!」


 なお。


 妙に売れた。


 特に悪ガキ男子に。


「買う!!」


「俺も!!」


「のだっ♡」


 レイはホクホクだった。


 一方その頃。


 山奥。


 盗賊団《黒犬団》アジト。


「……」


「……」


 空気が死んでいた。


 なぜなら。


 まだ少し臭いからである。


「クソ勇者ァァァ……」


 頭領ガルドは顔を真っ赤にしていた。


 額にはまだうっすら。


『大うんこ』


 跡が残っている。


「殺す……」


 超怒っていた。


 しかも。


 リズもブチ切れていた。


「……」


 鏡を見る。


 変な眉毛。


 ヒゲ。


 大量の落書き。


「……」


 バキィ!!


 鏡が割れた。


「絶対殺す」


 怖かった。


 しかも。


 盗賊たちは最近ずっと笑われていた。


「おいおい黒犬団!」


「顔洗ったかぁ?」


「ギャハハハ!!」


 周辺盗賊たちにまでネタ扱いされ始めたのである。


 最悪だった。


 リズは机を叩く。


「……あのクズ勇者」


 ガルドも頷く。


「ああ」


「報復する」


「当然だ」


 そして。


 盗賊団は会議を始めた。


「まず顔に落書きだ」


「いや吊るす」


「犬小屋に閉じ込める」


「また尻振りさせようぜ」


 その瞬間。


 リズがニヤァァと笑った。


「……それ、いいわね」


 全員が悪い顔になる。


「今度は三日三晩踊らせるか」


「うわ最低」


「勇者ショー開催しようぜ」


「『わんっ♡』を延々やらせる」


「ぎゃははは!!」


 完全に復讐モードだった。


 しかも。


 レイの性格を理解してきている。


「あと金袋狙え」


「あいつ絶対パニックになる」


「食料没収も効くぞ」


「毛布取り上げようぜ」


「やめなさいよあんたたち」


 リズが若干引いていた。


 だが。


 少し考えてから。


「……でもやる」


 やる気満々だった。


 一方。


 その頃のレイ。


「のだぁ〜〜♡」


 超高級パンを食べていた。


「豪遊なのだっ♡」


「パン一個で?」


「高いのだぁ♡」


 基準が庶民的だった。


 しかし。


 レイは完全に油断していた。


「盗賊ども、もう心折れたのだぁ♡」


「……そうかしら」


「吾輩の完全勝利なのだっ♡」


 エリシアは何も言わなかった。


 なぜなら。


 あの盗賊団。


 確実に根へ持つタイプだからである。


 その頃。


 山奥では。


「……王都へ行く準備しろ」


 ガルドが静かに言った。


「勇者狩りだ」


「おぉ……」


 リズはナイフを回しながら笑う。


「今度は逃がさない」


 しかも。


 彼女の机の上には。


 レイの似顔絵。


 そこへ。


『犬』


 と大きく書かれていた。


 一方。


 王都。


「のだっ♡」


 レイはパンを食べながらドヤ顔していた。


「復讐とは素晴らしいのだぁ♡」


 なお。


 数日後。


 もっと酷い報復戦が始まることを、まだ知らない。

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