13
数日後。
山岳地帯。
「のだぁ……」
勇者レイはフラフラになりながら山道を歩いていた。
顔は疲労困憊。
髪ボサボサ。
服も泥だらけ。
だが。
背中の袋だけはパンパンだった。
「重いのだぁ……」
女神エリシアは横を浮きながらため息をつく。
「なら捨てれば?」
「嫌なのだぁ!!」
即答だった。
「全部お金なのだぁ!!」
現金な男である。
しかも。
今回の道中。
レイは妙に頑張っていた。
理由?
復讐心である。
「盗賊どもぉ……」
レイの目が暗かった。
「絶対に顔へうんこって書くのだぁ……」
「執念の方向がおかしいのよ」
最初に遭遇したのは。
昼寝ラクシャサ。
巨大な鬼神系魔物。
筋肉モリモリ。
超怖い。
だが。
「ぐごぉおおお……」
寝ていた。
「……」
「……」
「昼寝ラクシャサね」
「働いてないのだぁ♡」
レイの目が輝く。
「親近感なのだぁ♡」
「あなたと一緒にしない」
だが。
昼寝ラクシャサは突然起きた。
「グオォォォ!!」
「のだぁあああ!!」
レイは泣きながら逃げた。
「怖いのだぁ!!」
「戦いなさい!!」
最終的に。
レイが岩を落として撃破。
「ぐぼぁ……」
昼寝ラクシャサ死亡。
レイはドヤ顔。
「うむ!」
「偶然勝っただけでしょう」
「勝ちは勝ちなのだぁ♡」
次。
ぼったくり蛇神。
巨大な白蛇。
しかも。
「通行料を払えぇぇ……」
妙に商売人っぽかった。
「のだぁ!?」
レイが反応する。
「お金取るのだぁ!?」
「金貨十枚……」
「高いのだぁあああ!!」
レイはブチ切れた。
「ぼったくりなのだぁ!!」
「あなたも似たようなことしてるでしょう」
「吾輩は勇者価格なのだぁ♡」
「最低」
しかも。
レイはなぜか異様に怒った。
「吾輩よりぼったくるやつは許さぬのだぁ!!」
「小物ねぇ……」
結果。
半泣きで戦って勝利。
ぼったくり蛇神の牙は高値で売れるらしい。
「のだっ♡」
即笑顔だった。
さらに。
カレー臭ゴーレム。
出現した瞬間。
「……臭いのだぁ」
「本当に臭いわね……」
妙にスパイス臭かった。
しかも。
殴るたびカレー粉が飛ぶ。
「のだぁああ!!目がぁああ!!」
レイ、涙目。
女神すら咳き込んでいた。
「なにこの魔物……」
最終的に。
レイは水をぶっかけて泥状にして倒した。
「うぇぇ……」
「全身カレー臭いわよ」
「最悪なのだぁ……」
しかし。
素材が香辛料商に高く売れると聞いた瞬間。
「のだっ♡」
復活。
現金だった。
その後。
修行サボり仙人猿。
仙人みたいな格好の猿である。
木の上で寝転がっていた。
「修行めんどくせぇ〜……」
「……」
「……」
レイが真顔になる。
「親近感なのだぁ」
「また?」
しかも。
仙人猿は妙に口が悪かった。
「働きたくねぇ〜……」
「わかるのだぁ!!」
「戦うのだりぃ〜……」
「超わかるのだぁ!!」
なぜか意気投合しかけた。
だが。
突然。
仙人猿がレイの金袋を盗んだ。
「のだっ!?」
「金ぃ〜〜♪」
「返せなのだぁああああ!!」
レイ、激怒。
ものすごい勢いで追いかけ回した。
「許さぬのだぁあああ!!」
最終的に。
木ごと倒して勝利。
レイは金袋を抱きしめて泣いていた。
「うぇええええん!!」
「そこまで大事なのね」
最後。
眠たい鬼神。
「……ねむぃ……」
超強そうなのに半分寝ていた。
「帰りたい……」
「なんかこの辺ダメ魔物多くない?」
エリシアが本気で困惑していた。
だが。
眠たい鬼神は普通に強かった。
巨大棍棒。
怪力。
しかも眠そうなまま暴れる。
「のだぁあああ!!」
レイは泣きながら岩陰へ隠れる。
「女神ぃ!!」
「あなたも戦いなさい!!」
最終的に。
レイが偶然崖を崩して勝利。
鬼神は谷底へ落ちた。
「ぐごぉぉぉ……」
静寂。
「……」
「……勝ったのだぁ?」
「ええ」
「のだっ♡」
レイは超笑顔だった。
そして。
数時間後。
ついに。
山奥の洞窟が見えてきた。
盗賊団《黒犬団》のアジト。
「……」
レイが止まる。
「のだぁ……」
プルプル震え始めた。
「どうしたの」
「……思い出したのだぁ」
「何を?」
「尻振り……」
レイの顔が青くなる。
「わんっ♡って言わされたのだぁ……」
「……」
「皆に笑われたのだぁ……」
完全にトラウマだった。
レイはガタガタ震えながら毛布を抱きしめる。
「うぇぇ……」
「そんなに嫌だったのね」
「勇者なのにぃ……」
エリシアは呆れた顔だった。
だが。
次の瞬間。
「……ほら」
「のだぁ?」
淡い光がレイを包む。
疲労が少し和らぐ。
「落ち着きなさい」
「女神ぃ……」
「深呼吸」
「のだぁ……すぅ〜……」
「大丈夫」
「……」
「今のあなた、前よりちゃんと強くなってるわ」
レイが少し固まる。
「……のだぁ?」
「ちゃんと魔物を倒してきたでしょう」
「……」
「前みたいに、全部他人任せじゃない」
珍しく。
エリシアの声は優しかった。
レイはしばらく黙る。
そして。
「……のだぁ」
ちょっとだけ。
本当にちょっとだけ。
嬉しそうだった。
だが。
数秒後。
「でも顔にうんこって書くのだぁ♡」
「台無しねぇ……」
レイはマスクを装着した。
煙玉確認。
顔料確認。
臭い草確認。
完全に小悪党装備だった。
そして。
洞窟を見上げながら。
「……復讐なのだぁ♡」
ニヤァァと笑った。
女神エリシアは天を仰いだ。
「……本当に成長してるのかしらこの男……」




