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性格最悪勇者の逃亡記 ~気づけば賢王と王国が壊れていました~  作者: 雪だるま


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 夜。


 ベルン郊外。


 安宿にも泊まらず、レイはまた廃屋にいた。


 理由?


「宿代が高いのだぁ!!」


 金貨七枚持ってるくせにである。


 現在。


 レイはボロい机に向かっていた。


 ロウソク。


 紙。


 謎の設計図。


 そして。


 異様に真剣な顔。


「……」


 女神エリシアは嫌な予感しかしなかった。


「……何してるの」


「復讐計画なのだぁ」


「やっぱり」


 レイはギラギラした目で紙を広げた。


 そこには。


『黒犬団壊滅計画』


 と雑に書かれていた。


 なお。


 文字が微妙に汚い。


「のだぁ……」


 レイは腕を組む。


「全員の顔にうんこと書くまでは死ねぬのだぁあああああ!!」


「スケールが最低」


 エリシアが即答した。


 しかし。


 レイ本人は超真剣だった。


「許せぬのだぁ……」


 机を叩く。


「吾輩を犬扱いしおってぇええ!!」


 かなり根に持っていた。


「尻振りさせられたのだぁ!!」


「自分で振ったんでしょう」


「ご飯のためなのだぁ!!」


 レイは涙目だった。


 そして。


 紙へ何かを書き足す。


『リズ → 顔にうんこ』


『頭領 → 顔に大うんこ』


『うるさかった盗賊 → いっぱい』


「語彙が終わってるわね」


「復讐なのだぁ!!」


 レイは燃えていた。


 しかも。


 妙に細かい。


「のだぁ……まず夜中に潜入するのだぁ……」


「へぇ」


「そして寝てる間に顔へ落書きするのだぁ♡」


「うん」


「その後、食料を盗むのだぁ♡」


「小悪党すぎる」


「さらに!」


 レイはニヤァァと笑った。


「酒樽に塩を入れるのだぁ♡」


「地味に嫌」


「復讐とは精神攻撃なのだぁ♡」


 エリシアは頭を抱えた。


 すると。


 レイは急に机へ突っ伏した。


「……でもなのだぁ」


「何」


「ちょっと怖いのだぁ」


「当然でしょう」


「また捕まったら嫌なのだぁ……」


 情けなかった。


 だが。


 次の瞬間。


「のだっ♡」


 レイは金貨袋を取り出した。


 チャリンチャリン。


「お金があるのだぁ♡」


「現金ねぇ」


「装備を買えば勝てるのだぁ♡」


 完全に成金思考だった。


 しかも。


 今のレイ。


 ちょっとだけ成功体験を得ていた。


 魔物退治。


 素材売却。


 利益。


「働けばお金になるのだぁ♡」


 今さら社会の基本を理解し始めていた。


 女神は遠い目をした。


「成長が遅いわねぇ……」


 しかし。


 レイは急に立ち上がった。


「のだっ♡」


「今から武器屋行くのだぁ♡」


「こんな夜に?」


「復讐準備なのだっ♡」


 一時間後。


 ベルン夜市。


 夜でも開いてる怪しい店が並んでいた。


「へへへ……何をお探しで?」


 怪しい商人。


 レイは真顔で言った。


「顔にうんこって書くための道具が欲しいのだぁ」


「……は?」


「あと臭い液体」


「何する気だお前」


 エリシアは即止めた。


「やめなさい」


「復讐なのだぁ!!」


 結局。


 レイが買ったのは。


・煙玉

・安物ロープ

・顔料

・臭い草

・謎のマスク


 完全に小悪党セットだった。


 しかも。


 マスクを装着してドヤ顔。


「のだっ♡」


 変だった。


 妙に変だった。


 エリシアが聞く。


「そのマスク必要?」


「正体隠すのだぁ♡」


「普通に声でバレると思うけど」


「のだっ!?」


 レイは固まった。


 数秒後。


「……黙って潜入するのだぁ」


「できるの?」


「……」


 沈黙。


 できない顔だった。


 そして。


 深夜。


 廃屋へ戻ったレイ。


 机に復讐道具を並べ始める。


「のだっ♡」


 妙に楽しそうだった。


「まず煙玉で混乱させるのだぁ♡」


「うん」


「その後、顔に『うんこ』と書くのだぁ♡」


「そこ絶対なのね」


「大事なのだぁ!!」


 さらに。


「リズのやつには『性格悪い』って書くのだぁ!!」


「あなたが言う?」


「吾輩は勇者なのだぁ♡」


「意味不明ねぇ……」


 すると。


 レイは急に真顔になった。


「……」


「どうしたの」


「のだぁ……」


 少し静かになる。


「吾輩……」


「?」


「ちょっと悔しかったのだぁ」


 エリシアは黙った。


 レイは毛布へ包まりながら言う。


「盗賊どもに笑われたのも……」


「……」


「アレンたちが出世してるのも……」


「……」


「なんか全部悔しいのだぁ……」


 珍しかった。


 本音っぽかった。


 だが。


 次の瞬間。


「だから絶対顔にうんこって書くのだぁあああ!!」


「台無し」


 レイは拳を突き上げた。


「復讐なのだぁあああ!!」


 エリシアは本気で疲れた顔をしていた。


「……なんでこの男、感情の着地点が全部そこなのよ……」

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