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不良桜  作者: 嫁葉羽華流
8/11

七話目。

翌日。

「できた…!」

すでに朝日は昇り、すずめが鳴き、どこかの鶏小屋でニワトリが『コケコッコー』と鳴いていたその朝。

喜助は、目の前にある黒く、光沢のある長方形のものを見ながら言った。

「ついにできた…!」

「やったね…喜助君!!」

「ああ!!! 俺たちは、やったんだ!! 羊羹作りに成功したんだ!!」

そう言って喜助は死期石とともに肩を組んで飛び上がって喜んで万歳三唱をして胴上げ…は無理だったのでせず、とにかく、狂喜乱舞した。

「さぁ! これをもって一之瀬さんに告白しよう!! 手紙は大丈夫かい?」

「あったぼうよ!!」

そう。前回失敗した手紙は事情を察した左近が指南してくれた。

バイトの合間、おっさんたちが応援してくれていたことも、喜助には分かっていた。

「あとは渡して、思いを伝えるだけ!!」

「ああ! さぁ! 学校へ行くんだ! 相模喜助!!」

「おう!」

そう言って喜助は部屋から出て行った。

そして死期石が物悲しそうにぽつりと言った。

「…これで君の願いはかなえられるんだね…」


その日の放課後。

喜助は一之瀬を体育館裏に呼び出して待っていた。

その物影には、田中左近と、喜助の腰ぎんちゃく、申野が見守っていた。

しかし、約束の時間になっても一之瀬は来なかった。

「一之瀬の奴…何してやがんだよ」

喜助に聞こえないようにぼそぼそと小さい声で喋っていた。

「へんっすよ。一之瀬さん、兄貴の気持ちにはこたえられるような度量の持ち主のはずっす」

「だよなぁ。こんな大事な用事だからちゃんと来る筈なんだけどなぁ」

「おれ、ちょっと一之瀬さん…いや、姉御のクラスに行ってくるっす」

そう言って申野は後者のほうに走って行った。

左近はそれを見ながらふっ、と笑い、

「アイツが姉御って言うなんてな…」

そう言ってほくそえんでいた。


その頃、一之瀬は。プール裏で告白を受けていた。

告白の相手は、七三狩りでごつい眼鏡をかけて、制服にきちんとアイロンをかけている男子生徒だった。

「一之瀬さん…」

「琴口くん…」

「僕は前々から思っていました…あなたのような綺麗で、可憐で、ビューチホーで、ナイスウーマンなあなたが…好きになってくれたらいいのにな、と」

どっちなんだよ、と、心の中で一之瀬は突っ込んでいた。

と、いうか何なのだ。これから喜助くんに呼ばれて体育館裏に行こうとしていた時に琴口に「プール裏に来てくれないだろうか、大事な話があるんだ」と、言われて来てみたら…。

こんなダッサダサな告白文を聞かされるなんて…。

これなら素直に「好きだアァアアァアアァ!!」といわれたほうがうん百万ほどましだ。

なんて事を思いながらその告白を聞いていた。

そんなことを考えている間にも琴口の告白はまだ続いており、やっと本文に入った。

「…つまりですね、相対性理論やらガリレオの地動説やら最近の若者の科学離れ、そして文学離れを見て聞いて触って調べましたところ、僕とあなたはとても相性がいい。子供もきっと、僕らのようなエリートに育ってくれるでしょう。ですからお願いです。僕と…」

来たか。そう思って口を開き、そのまま「ごめんなさい」の言葉を言うだけ…!

「僕と、結婚を前提に付き合ってください!!!」

(えええええええええ〜〜〜〜!!!????)

け、結婚を前提に付き合って下さい〜〜〜!?

一之瀬は驚愕した。世の中には世界を凌駕するような天才も、一人の女性に告白するときには、やはり一人のバカになるのだな…と。

そして一之瀬は相手の目を見てみた。

(…澱んでる…)

目的がないような生き方をしているような目。

自分より下のものは生きている価値などない、といったような目。

そして何より、

(こんな人でいいか)

と、言ったような、適当感丸出しの目。

そして答えはもちろん、

「ごめんなさい。私、好きな人がいるの」

断った。とたん、

一之瀬の目の前が暗くなった。


(あ、ああああああああ姉御ぉぉぉ!!?)

そんな一部始終をきっちりとみていたのは申野だった。

無駄に長く、おおよそ恋愛とは一ミクロンほどの関係もなさそうな告白文もきっちりと(意味は分からなかったが)聞いていた。

そして、琴口からすばやく、スタンガンが引き抜かれ、そのまま一之瀬の首筋に当てられているのも、きっちりと。

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