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全てが集まる異世界で  作者: トーマス
第2章 ベルガで生きること
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第29話 切り札

「1回戦最終試合、到着順第1位・レガード対第9位シグレ。なお、人数の関係上この試合の勝者を決勝戦進出とする」

「それはズルではござらんか?」

「10人しかいない時点でこうなることは決まっていた。あとは第1位かそれを倒したものを決勝に進めるのは間違っていないと思うが」

「なんだって構わねぇよ。さっさとやんぞ。そういやお前刀匠団だったな。刀、使っていいぞ」

「しかし、それは危険だから禁止だと先程グランジュ殿が申されたはずでござろう」

「お前の刀ごときで俺を切れるはずねぇだろナマクラが」

「この刀を打ったのは拙者の主、ラクーン殿にござる。主を馬鹿にされて黙っているわけにもいかないでござる。武士の心見せてしんぜようぞ」


「始め!」

シグレは今剣を抜くと、正面から切りかかっていった。だが、レガードのアビリティ『岩窟』に相性が悪かった。全身を岩に包み、攻撃力と防御力を高めるというシンプルなものだが、威力は絶大だ。刀が長くなろうが、短くなろうが、その岩に傷1つつけることはできなかった。結局、シグレはなすすべなレガードに3本取られ、あっけなく敗退した。それでも刀が折れることはなかった。レガードは心底見下したような目でシグレを一瞥すると、舌打ちをしてその場を離れていった。


「……無念でござる。かくなる上は腹を切って主にお詫びを」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、その必要はないのぉ」

どこから現れたのか、刀匠団のギルドマスター、ラクーンがそこに立っていた。

「しかし、主よ。主は拙者がこの世界で彷徨い歩いていたところを助けてくださったでござる。その恩にあろうことか泥を塗ることで応えてしまうという大失態。腹を切って詫びるのが当然の理ではござらんか」

「命は大事にするものじゃて。お主はこの世界で第2の生を受けた。わしにその命を救われたと言うのならわしの許可なく死ぬことは許さぬぞ?」

「……承知いたした。ご無礼をお許しくだされ」

「咎める気など毛頭ないわい」


突然の乱入者があったものの、延長戦は2回戦に突入した。第1試合はアキネ対マリ。マリの実力が未知数なだけあって不安がある。

「なんでユウキがそんな心配そうなのさ」

「いや、すまない。相手が強そうだったり、未知数だったりすると妙に緊張しちゃってさ」

「警戒するのはいいけど、その緊張が仲間に伝わって悪影響だよ?私には効かないけどね」

そう軽口を叩いたアキネはマリと向かい合う。初戦が不戦勝、予選でも本選でもアビリティを見せていない。アキネにはマリの手札が見えているが、それだけのアビリティを制限なしで使えるとは思わない。大方、アビリティは読めないとか、そういった制約があるのだろう。


「始め!」

アキネもマリもこれまでとは違い様子見に入る。1分ほど場が動かずにいたが、マリの一言で一変した。

「全部は見えてないでしょ」

「バレた?」

「そりゃバレるでしょうよ。こんだけ長い間じっと動かないなんて相手の行動を読めるアンタならあり得ないはずだよ。でも、全部は見えなくてその見えてない手札を切られたら対処できない。だから、私が動くのを待っていた。見えない手札はアビリティっていうのが有力候補かな」

「完全に正解だね。私が見えるのは戦略、意識的に伏せていること、大体の攻撃・防御パターンといくつアビリティやアイテムを持っているか。さらに言えばその場で使おうとしていないものは手札にすら入らない。アビリティ、アイテム関連の手札はそれぞれA,B,Cが割り振られていて、一度そのアビリティなんかを見た後なら、再使用時に先読みすることはできる。大体こんなところかな」

「どうしてそこまで教えるの?聞いた私が言うのもなんだけど、黙っていた方がアンタにとって有利だったはずでしょ」

「もう十傑の仲間でしょ。……というのは建前で、もちろん本心ではあるのだけれど、本当の理由はアビリティ使用中は聞かれたことに対して正直に答えなければならないっていう制約があるのさ」

「それ絶対言ったらダメな制約だよね」

「それはみんなのことを信じているからね」

「天然といった方が正しそうだね。ま、信じてくれるのはありがたいけどさ、もう少し気にした方がいいよ。いつ裏切られるかわからないんだし」

最後の言葉はなぜか他よりも悲しく聞こえた。


「さて、それならアタシから動かないと永遠に終わりそうにないし、使ってあげるよ」

マリは木の人形を取り出す。呪いのわら人形のような形に、気味の悪い顔が彫られている。

「『悪魔樹人形イービル・ドール』」

木に何かが宿る。片手サイズの人形はひとりでに浮遊し、黒いオーラを纏う。そのオーラが人型に変形する。その姿はさながら死神のようだ。オーラの一部が鎌の形になる。

「気を付けてね。そいつに狩られると生命力奪われるから。もちろん死なない程度に加減はするけどね」

「それは怖いね」


アキネは強がっているようには見えなかった。死神のスピード自体は遅いが、あくまでオーラの塊であり、形を変化させることができる。攻撃を躱したと思っても、全く別の場所から再び鎌が現れることもあり得る。実際、アキネは来ることを予測しつつも、躱しきれず1本を取られる。斬られた箇所からの出血はない。代わりに、黒い傷跡から白いオーラのようなものが出ている。死神はそのオーラを吸ってさらに大きくなる。アキネは少しふらついた。


「これはきついね。眩暈しちゃうよ」

「降参するなら今のうちだからね」

「しないよ。でも、切り札切るしかないよね」

「まだなんかあるっていうの?」

「実は1回戦から使っていたんだけどね。『手札回収サルベージ』」

死神がもう1体現れる。その死神はマリの出したものと全く同じ形状で、なぜか媒体とした人形まであった。

「そういうことか。リクのアビリティはどうにか隠せるもんね」

「そういうことだよ。制約上説明しておくけど、『手札回収サルベージ』は相手が使ったアビリティを自分のものとして再利用できるアビリティだよ。その際ほとんどの制約を無視できる。『強化術』は自分がものすごく鍛えているように見せることができて、なんとかごまかしたけど、今度はそうもいかないね」

「死神は死神を止めるので精一杯。アタシにはもう戦闘用アビリティはないし、アイテム使う気もないんだけど」

「体術なら負けないよ?」

「体術にはまったく自信はないね。はぁ、まいったよ。降参だ」

両手を上にあげたマリは、先程とは逆に自分が降参することで勝負を終えた。


次の試合は俺とメニアだ。

「よろしくおねがいしますヨ」

メニアは黒い瞳でこちらを見ながら言った。

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