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全てが集まる異世界で  作者: トーマス
第2章 ベルガで生きること
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第26話 変わる者

今までの最長記録更新!

今度は最短でこれを書けるようになりたいものです

本選突破に必要な切符5枚は集まった。だが、この後どうすればいいのか聞いていなった。ひとまず広場に戻ろうと動いていると、どういうわけか、アナウンスが聞こえてきた。

「こちら、グランジュ。残り10分となった。すでに5枚集めているものに集合場所の連絡だ。切符をすべて重ねろ。そうすればおのずと目的地が示されるであろう」


言われた通り、切符を5枚重ねる。すると、方位磁石のような立体映像が現れた。指しているのは北ではなく、東。こっちに進めということなのか。こんな回りくどいことをする以上まだ何か仕掛けて来る気なのだろう。何人が突破したのかはわからないが、10人以上であれば先着順の可能性もあるので急いで移動するか。

「『電光石火』」


方位磁石が示したのはベルガ東部からさらに少し進んだ山地だった。そこまで大きいわけではないが、ベルガと比べ険しい道であるのには違いない。

目的地はそんな山の中でも平坦な場所だった。木々もその場所には生えておらず、円形の広場を作っていた。俺が着いたときには既にアキネ、レイ、カノン、マリ、メニア、レガードがいた。かなり早い段階で切符の仕掛けに気づいたようだ。カノンが無事に突破できていたのは素直にうれしい。俺の後にはザーク、シグレ、リクの順で到着した。この時点で陽が傾き始めていた。グランジュが急いでいたのもうなずける。


「諸君、ご苦労だった。条件を満たしたのはちょうど10人で、追加も削除も行う必要はない。選定選はこれにて終了だ。だが、もう1つやっておくべきことがあるだろう」

「なんだよ、グランジュ。もうこれ以上何かあるのか?せいぜいお披露目会ぐらいなものだろう」

俺は疑問を口にする。

「それも大切だがな。十傑会議というものはそもそもおかしいのだ」

「グランジュさん、それは聞き捨てならないね。私たちはベルガを正しく発展させるために頑張ってこの企画を作ったんだ。それをおかしいなんて」

「すまないな、アキネ。おかしいというのは語弊があるか。正確には10という数字が悪い、とでもいうのか。こういった会議は大抵多数決で採決されるものだろう?ならばその数が偶数というのはどうかと思うがね」

「それはそうですが……」

「じゃぁなんだ?席順でも決めようってか?」

「待ってくだされ、レガード殿。十傑会議に順位があるのはどうかと思うでござるよ」

「そうではない。ただ、議長くらいは決めたほうがよいと思ったのでな。あまりに反対意見があるようだったら押し通す意味はないが」

「やればいいんじゃないか?」

「そうじゃの。面白そうじゃ」

「同数なら議長の決定に従うということなら俺は賛成だ」

「私も賛成するよ」「私もですっ」

リク、レイ、ザーク、マリ、そしてカノンも賛成の意を示した。メニアも別に反対というわけではなさそうだ。


「決まりだな。決闘ゲームの内容だが、今回は戦闘能力を測りたいと思う。リーダーが真っ先にやられるようではいけないからな。基本的に今回の選定選では戦闘能力を測る決闘ゲームはなかったしな。形式はトーナメント、対戦相手はこちらで到着順などをもとに決める。勝負は3本勝負。先に有効打を3本入れたほうが勝ちだ、有効打はこちらで判断する。以上、質問は?」

誰からも異議は唱えられない。


「では行くぞ。まずは到着順第2位・アキネ対第10位・リク」

アキネのアビリティはこの場にいる者なら皆知っている。リクのものも大体は見当ついているだろう。俺の主観ではアキネに不利だと思うが。


アキネとリクが向かい合う。リクは多少不安げな表情である一方、アキネは薄ら笑みを浮かべているように見える。勝算があるのか、或は単なるブラフなのか。2人の表情から推察していると、グランジュが始めの合図を出した。

「相手の手が読めるんだったな。なら出し惜しみしても意味がない。全力でいかせてもらうぞ。『強化術・自己強化』」

「私も体力には自信があるからね」


リクが一直線に突撃する。スピードは俺の『電光石火』に少し劣る程度、攻撃力は俺より数段上だろうか。だが、アキネも負けていなかった。驚くべきことに、リクの右ストレートを受け止めて見せたのだ。リクもこの予想外の展開に戸惑い、隙ができる。当然、アキネが見逃すわけもなく空いた右のわき腹に渾身の一撃をお見舞いする。多少なりとも防御力も上がっているはずのリクが軽々と吹っ飛んでいく。これには一同固まるしかなかった。グランジュの1本の判定で、両者は元の位置へと戻る。


「私は負けられないんだよ。カーニバルのみんなのために、そして、ベルガのために」

「俺だって負けるわけにはいかない。今までの俺はザークに隠れてばかりだった。だが、黒雷ブラックサンダーから解放され、エレクセリアの皆が生き生きとしている姿を見て、これじゃだめだと思い始めた。自分を変えるために、俺は十傑を目指して今日ここに来た。だが、ただ十傑に入るだけでは今までと同じかもしれない。なら、さらにその上に行けば何かが見える。そんな気がするんだよ」

俺は思う。別に勝たなくては見えないわけではないはずだと。リクだってそれを薄々気づいてはいるのだろう。だが、変わるきっかけは必要だ。そのきっかけを探しているのだろう。変わり始めたリクが完全に羽化するための勇気を探しているのだろう。


「だからって手加減はできないよ」

「もちろんだ。こちらも全力で行く」

今度のリクはまっすぐには進まなかった。斜めに行ってみたり、真横に行ってみたり。その不規則な動きに俺たちは困惑する。だが、

「私にそれは通じないよ」

動く方向を先読みしたのだろう。アキネはある程度近づいたリクに向けて駆け出し、またも不意を突かれてリクは一撃をもらう。2本目、とグランジュが宣言した。しかし、リクの目にはまだあきらめの色は見えなかった。以前のリクならばおそらくはすでに降参なり手抜きなりしていたはずだ。それをしないということはやはりそういうことだろう。


三本目もリクから動いた。だが、さっきまでとはスピードが違う。少し抑えているのだ。

「へぇ、いいカードを引き込むね。私のアビリティは相手の背後にカードを持ったもう一人の相手が見えるんだけど、新しく獲得した手札を見るには少しタイムラグがあるんだ。だから、今君がどう動くかは読めなかった。感覚で動いている証拠だね」

あくまで手札とは、自分が意識しなければ切ることはできないもので、作戦とも言い換えることができるだろう。だが、今のリクは作戦を捨て、本能で動いている。自分を探し、見つけ、また探し。そんなリクを表しているようだ。


アキネは射程範囲内に近づいたリクを攻撃する。しかし、リクは余力を以てそれを躱す。反撃とばかりにリクがカウンターを放ち、アキネが寸前で受け止める。そんな応酬がスピードを少しずつ上げながら続く。リクの左、右で躱したアキネの左、右ではじきつつその勢いでリクの右フック、ひざを曲げてよけるアキネの右アッパー、体を引いて躱したリクの膝蹴り。これが鳩尾に当たり、アキネがもだえる。同時にグランジュの1本判定が下る。俺はアキネがやられているところをその時、初めて見た。


「まさかここまでやるとはね。さすが十傑といったところかな」

「次も行くぞ」

4本目。同じくリクから攻める。スピード抑制作戦は今回も使われている。一方、アキネも今度は動く。スピードはリクと同じくらいだ。ちょうど中央で衝突した2人はまた先ほどと同じような攻防を繰り返す。そしてその3回目の攻防でリクがアッパーを繰り出し、アキネが身を引くことで躱し、鳩尾に膝蹴りを入れた。グランジュの判定もあり、アキネの勝利が確定した。


「負けちまったか」

「いい勝負だったよ。私も本気だったし。それに、リク君は変わったよ。黒雷ブラックサンダーも十傑も議長も関係ない。君は新しい君として私と互角に戦った。それで十分だよ」

「そう……なのかな」

エレクセリアのリク。意外なライバル出現に俺は笑みをこぼすのだった。

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