第25話 刀の魂
最近の不調から脱っした可能性がありますね(中盤以降
「……は?」
あの謎英語は一文に一つ程度だろうと思っていたが、どうやら甘かったらしい。わざとやっているのかはわからないが、ある意味難題だ。
一つずつ考えようか。まず、最後の残りはいくつということと、文の長さからそう難しくない計算問題だと分かる。そして、英単語だが、
キャンドル=蝋燭
ニードル=針
ビー=蜂
ナウ=今
ノーズ=鼻
ティー=お茶
カバー=蓋
ヒューマン=人間
アイランド=島
当てはめると
太蝋燭くん針んごを蜂個か今した。鼻子お茶んが蓋つ食べました。マリが人間つふや島した。残ったの はいくつでしょー?
これなら何となく分かるな。切り方をわざとわかりにくくしているあたり、やはりわざとなのではないだろうか。つまりはりんごを足したり引いたりすればいいのだろう。蝋燭ではなく、ろう、ヒューマンはおそらく人と訳して、1つとなるのだろう。つまり、8-2+1=?という問題なのだ。なめられているのだろうか。
「答えは7個だな」
「オー、せスクイードいです!」(いか)
「切符寄越せ」
「せっウィンですねぇ」(かち)
これで切符3枚目だ。あと2時間15分。可能性が見えてきたか。
次に出会ったのは、刀匠団のギルマス・ラグーンだ。ドワーフという種族は老いが早いと聞く。今回のような街を駆け回る|決闘≪ゲーム≫は苦手そうだ。街自体はほぼ平坦だが、移動距離が大きくなるので体力的に大変だろう。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。お主今年寄りは大変だとか思ったじゃろ」
「なんでそれを?」
「隠しはせんか。アビリティではないぞ。この年まで生きるとなんとなくわかってしまうのじゃよ」
恐ろしい爺さんだな。
「今恐ろしいと思ったじゃろ。ふぉ、ふぉ。構いはせんて。事実じゃしの。お主が考えとる通りそろそろ体力がなくなってきてのぉ。あまり街を駆け回ることもできそうにない。いま切符を3枚持っておるのじゃが、2枚掛けとして一気に終わらせたいのじゃよ。付き合ってくれるか?」
「俺としても文句はない。勝負方法はどうするんだ?さっき、そちらのサブマスに斬られかけてもうバトルは懲り懲りなんだが」
「この老い耄れにバトルなどはできんよ。そうじゃな……、わしが打った刀を扱うことができるか、というのはどうじゃ?」
「刀は武器の中で唯一使える種類だ。それでいいよ」
実は俺は元の世界で一時期だけ部活に入っていたといったが、それが剣道部なのだ。小さい頃は道場にも通っていて、市大会で準優勝の経験もある。人間関係で道場も部活も辞めたが、それなりの実力はあるはずだ。相手がかなり無茶な刀を出さない限り大丈夫だろう。
「では、お主に授けよう。銘は|長曾禰虎徹≪ながそねこてつ≫。使うものを選ぶ刀じゃ。抜いてみぃ」
どこからか取り出したその刀はうっすらと黒光りする美しいものだった。だが、手にした途端わかった。明らかに曰く憑きであろうその刀は気を抜けば最後、狂気に飲まれてしまいそうだ。それを抜くのはかなり気が進まない。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。やめてもいいのじゃぞ?それを使いこなせずに廃人となった者は数知れず。退くのもまた勇気じゃて」
「そうかもしれないな。だが、今は違う。退いてはいけない。そんな気がするんだ」
「そうかいのぉ」
「じゃぁ、抜くぞ」
柄に手をかけた瞬間、俺の意識は刀に引きずりこまれた。
★
ここは、どこだ?真っ白の空間が延々と続いている。俺はラグーンとの|決闘≪ゲーム≫に挑んだ。その中で刀を受け取った。そうだ、その刀を抜こうとしてここに落ちたんだ。この世界の刀にはつくづくひどい目に遭わされる。
「よう」
そんな世界で誰かが語り掛けてくる。青い法被のようなものに黒いスーツ、いや、軍服か?
「おまえは誰だ?」
「近藤勇といえばわかるか?」
近藤勇。そうだ、あの服には見覚えがある。某民放のドラマなどでよく取り上げられていた新撰組の衣装だ。そして、あいつはその局長だったはずだ。だが、なぜそんな奴がこんなところに?
「どうしてって顔してるな。安心しろ、ここは黄泉の国ってわけじゃない。気づかないか?刀匠団が打つ刀が地球の日本に実在する刀だってことに」
「確かに刀そのものが日本のものだし、名前も和風な感じがしたが」
「そうか。お前は俺たちの時代よりもずっと後に生まれたんだったな。少なくとも俺たちの時代じゃあの刀の銘を知らぬ者はいなかったのだがな。長曾禰虎徹は元々俺の愛刀だ。今剣も源義経が自害するときに使われたといわれ、大太刀から打ち直されて小太刀となったという」
「その話が事実なら、単なる偶然にしちゃ変だな」
「そうだろう。能力まで同じなんだ。いまおれがおまえと話せているのもおまえが地球出身だからだろうな。おそらくこの世界にとって地球は大きな意味を持つ世界なのだろう」
「そんなこと詳しく考えたってわからん。今重要なのは俺が長曾禰虎徹を使えるかどうかだ」
「それは心配いらんだろう。俺は刀の残留思念のようなものだ。今までの奴は俺と波長が合わず、自滅しただけだ。おまえならば問題なく使えるだろう。その上、俺がより上手く扱えるように手伝ってやろう」
「それはありがたい。よろしく頼む」
★
現実に意識を引きもどされた俺は、問題なく刀を抜くことができた。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。やりよるのぉ。だが、扱えるかどうかは別の話じゃぞ?」
「もちろんだ。いくぞ、『龍尾剣』」
脇構えから上方向に一振り、そのまま切り替えし、斜め下方向に一振り。止めに突きを放つ、3連撃の型だ。初撃で敵の刀をいなし、追撃で上からはたき落とす。実践重視の型である。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。まさかそこまで使いこなすとはのぉ。その刀に憑いている魂に気に入られたようじゃのぉ。|決闘≪ゲーム≫はお主の勝ちじゃ。ついでに、その刀も持っていけばよい」
「いいのか?貴重なものなんだろ?」
「貴重なのじゃが、刀は使わなければ意味がない。わしらでは使いこなせなくてのぉ。お主が持っていれば刀も喜ぶじゃろうて」
「ならばありがたく頂戴するよ」
これで切符も5枚。本線突破だ。




