第22話 予選2週目前半
予選2週目第4試合は俺の出番だった。今度も運の勝負で相手はレイだった。
「よう、レイ。レイのおかげでこの勝負は俺の勝ちだ」
「それはどうかの。これは運の勝負だしの絶対はないはずなのじゃが」
「じゃあやってみようか。グランジュ、頼む」
「分かった。じゃーん、ケーン、「『電光石火』」ぽい」
レイはチョキ、俺はグーだ。
『電光石火』は思考の加速の力でもある。それを利用して相手の出そうとしている手を先読みしたのだ。超高度な後出しだ。後出しなのだが、ルール的には誤差の範囲内だと判断されるレベルでの後出しなので反則として認識されなかった。ある程度自信はあったが、不安もあったので俺にとって有利な結果となった。
正確には、この世界のルールとして決闘での反則は自動的に判断され、反則負けとなることはほぼない。対戦相手からの申告と自白もしくは証拠が必要である。今回の場合レイの申告と俺が『電光石火』を使ったことは明白であり、それを証拠としたが、世界がそれを不正とはみなさなかった。
なお、俺が『疾風迅雷』ではなく『電光石火』を使うことには理由がある。まずは消費体力の差だ。『疾風迅雷』はかなり燃費が悪い。もう1つ、こちらがメインなのだが、使えないのだ。『疾風迅雷』のアビリティは『電光石火』を『覚醒の日』で進化させることで一時的に入手することで使用可能となる。あの戦いからアビリティカードや実証実験などで確かめた『覚醒の日』の力は2つ。1つは所持アビリティの永続的な強化だ。『電光石火』が実践的なアビリティとなったのはこの力のおかげだ。もう1つは気力が満ち溢れているときのみ行えるアビリティの進化だ。気力とは集中力など様々なものを指すが、普段は無意識に一定のラインでセーブ、手加減をしている状態にある。それを取り払うには途方もない修行か、外的要因による突発的で一時的な発生に頼るかしかない。修行はまだ到底終わる気配を見せないので後者が主となる。しかし、黒雷と戦ったときのように絶対に勝つという本気の気持ちがなければならない。この半分お遊びのような決闘では発動しない。
「ひと悶着あったが、決闘を続ける。第5試合1人目は……ワールド・ハンター・レガード、2人目は……カーニバル・コード」
「コードの相手はレガードさんかぁ。やばいかもね」
「そうだな。レガードは力の決闘では負けることはないだろうな。他のなら何とかなるかもしれないが」
「レガード、くじを引いてくれ」
「ああ。……力だな」
「大丈夫でしょうかコードさんっ」
大丈夫じゃないだろうな。2人はステージに上がる。
「テメェに用はねぇよ。さっさと終わらせるとするか」
「私にはあります。こちらのマスターを侮辱したらしいですね。彼女は私たちを命を懸けて守ってくださいました」
「それはもう聞いた。だが、元黒雷には変わりないだろう」
「それくらいにしろ。始めるぞ。レディー・ファイッ」
「オラァッ!」
「くっ」
案の定コードの負けだ。これで2敗。敗退が確定した。
「私は負けました。しかし、アキネは負けません。彼女は私と違って強いですから」
「ほざいてろ、ザコが」
「コードってやけにアキネのことを信じてるな」
「カーニバルのみんなは大抵そうなんだよね。ちょっと体張っただけなのに。むず痒くってしょうがないよ」
「コードさん残念でしたねぇっ」
「仕方ないさ。全員上がれるとも思っててなかったしね」
「次行くぞ。第6試合は……1人目、カーニバル・アキネ、2人目、刀匠団・ラクーン」
「相手はラクーンさんかぁ。大きい取引先だけど、コードがあんなこと言った手前、負けられないっしょっ!」
こういうことを平気で言うから人気者になるんだよ。と思ったが、口には出さないでおこう。
ラクーンは刀系のアイテムを生産するギルドのマスターで、よぼよぼのおじいさんだ。これで1週目の力で勝っているんだから、ドワーフは恐ろしい。
アキネが引いた決闘は運。じゃんけんだ。
「これはアビリティの使いようがないのぉ」
「そうでもないんですよねーこれが」
「ほう?」
「まぁ、お楽しみってことで」
「では行くぞ2人とも。じゃーん・ケーン・「『交渉術』」ぽい」
アキネのチョキに対し、ラクーンはパー。アキネの勝ちだ。
「その『交渉術』とやらがうぬのアビリティかのぉ」
「そうです。『交渉術』は相手の手札を見ることができるんです。どの手札を切ろうとしているのかも。今回はグー・チョキ・パーの3枚の手札からラクーンさんがパーを切ろうとしているのが分かったので。あまり言うと不信感を向けられそうなんであまり使わないし、公にしないんですけど。今回はコードのためにも勝たないとですしね」
「仲間想いじゃのぉ」
「そんなんじゃないですよ。同じギルドの仲間として当然のことです」
「第7試合、1人目春風・カノン、2人目ワールド・ハンター・ピカール」
「私ですかっ?」
「ピカールさんはワールド・ハンターのサブマスだったよね。1週目は大して何もなく負けちゃったけど今度はどうなるのかな」
「行って来い、カノン」
「はいっ!」
カノンが引いたのは知の決闘。クイズか。カノン苦手そうだよな。一応成人してるみたいだけど精神年齢は低そうだし。悪いが。
「では問題。アビリティ名に関するものだ。アビリティ名は2つ以上の部分で構成されていることがあるが、何かの性質を一時的に自分に適応させるタイプの能力につく接尾辞は?」
アビリティの知識に関する問題だった。この世界でアビリティの情報の多寡は戦略の面に大きく影響する。接尾辞とはアビリティ名の最後につくアビリティの特性を表すものだ。逆に接頭辞として『ドラゴン』や『ソウル』等がある。
「……『アウト』ですかっ?」
「正解だ」
「あらら、負けちゃったみたいだな。」
勝ったはずのカノンはなぜか思いつめたような表情をしていた。




