第18話 アキネという英雄
「私は元黒雷の略奪隊だったんだ。もちろん、略奪は自分の意志で行ってはいなかった。けど、やっていた。」
「それがどうした。言っとくがお前たち元略奪隊も一部の者からは黒雷幹部クラスと同様に恨まれていることを忘れんなよ。俺たちからしたら何も変わらねぇんだからよ。最近元略奪隊の新ギルドができたらしいが俺たちは認めねぇぞ」
「そんなことは分かっているよ。けど、苦しんでいるのはあなたたちだけじゃないって忘れないでほしいんだ」
「黒雷のクセに俺に説教かよ。いい御身分だなぁ。そいつだろ?黒雷を殺ったってのは。英雄のように思ってたが、結局こいつらを庇ってんだもんな。失望したぞ。」
「失望されようが構わないがな。だがとこれは別問題だ」
「ひったくりをやめろってか?俺たちに死ねって言ってんだな」
「そんなことは言ってないよ。私たちはこれからこの街をよくしたいって考えているんだ。そのためには治安維持が必要なんだよ」
「罪滅ぼしのつもりか?残念だがそれは無理だな。お前たちを恨む者が全員死なない限りこの街が再び活気を取り戻すなんてありはしねぇよ。それに、お前たちがこの街を支配する気か?黒雷を倒したからってんなことだれがさせっかよ」
「そうなるだろうと思って策は考えてあるよ。まぁ、今日はひったくりをやめてって言いに来ただけだからこれで帰るとしようか。策については後日ベルガ全域にお知らせするから待っててね」
アキネと別れた後、俺は再びワールド・ハンターのホームを訪れていた。
「今度はなんだ?」
「悪い、レガード。ちょっとは落ち着いたか?アキネについてちょっとな。あいつがいないところで話したくてな」
「俺も頭に血が上ってたのは認めるがよ、一言も嘘偽りは言ってない。あれが本心だ」
「それは分かってる。それでもアキネのことを言っておきたい。お前は誤解している」
「誤解だ?あいつは元黒雷で、略奪行為を繰り返していた。例え黒雷にギルドを潰されて捕まり、強制されていたとしてもそれは変わらねぇよ」
「その通りだ。だが、あいつの場合はギルドを潰されてはいない」
「裏切り者ってことか?」
「いや、あいつは唯一黒雷に襲われながらもギルドを守った英雄だ」
「どういうことだよ」
「アキネのギルドカーニバルは当時そこそこの規模があったという話を聞いている。黒雷が現れてからも1年くらいは以前と大きな変化なく過ごしていたらしい。だが、そんなギルドが奴らに狙われた。その時点でカーニバルはほぼ壊滅したと言ってよかった。だが、あいつはその身を賭けて決闘に挑んだ。条件はあいつが勝ったら自分を、負けたらギルドを奴らに渡すことだった。そして、あいつは勝った。どんな決闘をしたかは知らない。だが、それによってカーニバルは生き残ったんだ」
「……だからどうした。俺たちには関係のない話だな」
「どうとってもらっても構わない。でも、あいつがただ黒雷の言いなりになっていただけじゃないって知っててほしくてな。あいつには言わないでくれよ」
「分かったよ」
「じゃぁ、話は終わりだ。悪かったな、付き合わせてしまって」
「別にかまわねぇよ」
「そうか。例の策は今週中に発表できると思う。できることならお前たちにも参加してほしい」
「内容次第だ」
「そりゃそうだ。じゃあ、またな」
「ああ。」
祐樹がいなくなったホームでレカードは1人悲しげにため息をついた。




