第17話 荒廃したベルガ
いよいよ第2章です。どうぞお付き合いください
出来れば報告書も読んでいただきたいと思います。幹部システムなどの解説ものっています
黒雷との戦いから2週間。俺が受けた傷は完全に治っていた。レイの方も大丈夫らしい。元黒雷幹部組の行方は未だつかめていないままだ。そっちはレイやグランジュに任せておけばいいだろう。人海戦術も時には効果的だ。
それよりも、目下問題なのはベルガの復興だ。黒雷は確かに消滅したが、その爪痕は確実に残っていた。街に活気がないのだ。約3年もの間圧政が敷かれていたのだ。元凶が除かれたくらいでは劇的に変わるわけがないだろう。黒雷の影響から逃れようと別の町に移ったギルドは数知れず。ヨーロッパ風の建物群は薄汚れ、塗装は剥がれ、雑草が生え放題。商店がまともな営業もできず、必要最低限の供給が辛うじて保たれている程度だ。むしろ黒雷がいたから保たれていたとも考えられる。ある面では悪でも、別の面では役に立っているなどということは地球にいたころからよくあることだった。
「皮肉なもんだな」
「どうしたんですかっ?」
「いや、ちょっと考え事をな。なぁカノン、この街についてどう思う?」
「元気がないように思いますっ。皆さんが消える前は元気いっぱいのいい街だったんですよっ」
「そうなんだよな……。黒雷もなくなった以上ギリギリ保たれていた供給がどうにかなる前に何とかしないと」
そんな時、ギルドのチャイムが鳴った。
「ごめんくださーい」
「はーいっ。あっ、アキネさんじゃないですかっ」
「おぉ、アキネか。なんか用か?」
「ちょっと手を貸してほしくてね。最近ベルガの治安が良くないのは知っての通りなんだけど、ひったくりが目につくようになってきてね。ユウキの『電光石火』で手伝ってくれないか?」
アキネはベルガの商人ギルド『カーニバル』のマスターだ。短い赤毛の少女で気さくな話し方が人を惹きつける。商人としてはまだ若すぎるが、そんな人徳もあってか人望は厚い。最近は春風とも友好的な関係を築いていて、ベルガの問題に気を揉んでいる。
この世界において、決闘以外での暴行等は特に禁止されているわけではない。街によっては自警団や特定のアイテム等で厳罰に処されるが、ベルガにはそのようなシステムは存在しない。一部のギルドが非人道的行為を行う人たちを捕まえることはしているが、強制力は低い上に、彼らだって生きるために必死なのだ。ひったくりでもしなければ生きていけないほどにこの街全体は貧困に苦しんでいるのだ。春風は黒雷との戦いで十分な資金を手に入れたし、カーニバルも商人ギルドということもあってある程度は大丈夫らしい。
「ひったくりか。分かった。どうすればいい?」
「相手は常習犯だよ。ギルド全体でひったくりや置き引きなどを行っている。彼らも必死なんだろうけど見逃せはしないからね。そろそろこっちから仕掛けないといけないと思ってね。」
「かわいそうですけどっ……」
「カノンちゃん、かわいそうなんて言うのは持ってる者だから言える言葉なんだよ」
「その辺にしておけ。で、そのギルドってのは?」
「ああ、『ワールド・ハンター』って言うギルドだよ。もともとこの世界を探検するために結成されたらしいんだけどこんなことになるなんてね」
「原因を除いただけじゃ解決しないな。黒雷を退場させた俺たちが最後まで責任もって手伝うよ」
「そうしてくれるとありがたいね。街がこんな有様だと商売あがったりだし、こんな雰囲気好きじゃないしね」
★
俺とアキネの二人はベルガ南側、深緑の森にほど近い場所にいた。カノンは留守番だ。ベルガが辺境にあるといった事情もあり、テロル全体でも深緑の森の調査は進んでいない。そんな場所にワールド・ハンターのホームがある。彼らは深緑の森調査のために結成されたギルドなのだろう。それが黒雷の災禍に巻き込まれてしまった。希望に満ちた人々が絶望に叩き落されたのだ。そんなことを思うと心が痛む。
「じゃ、行こっか」
「ああ」
★ ホーム内
「じゃあ、お話を始めましょうかワールド・ハンターのマスター、レガードさん」
レガードはドワーフだ。力は強いが身長が低めだ。150cmくらいだろうか。黒いひげを生やしている。一般的なドワーフのイメージとは違い、人間と多少スピードは劣るが、同じくらいの動き方ができ、決してずんぐりむっくりではない。それでは森を縦横無尽とはいかないだろう。
「何の用だ?」
「とぼけるなよ。ひったくりに置き引きその他もろもろギルドぐるみでやってるらしいじゃないか」
「ひったくりに置き引きね。ああ、やってるよ。それがどうかしたのかよ」
「どうかするに決まってるだろうが。お前たちは悪い「悪い?」」
「悪いってなんだよ。俺たちは生きるためにやってんだよ。お前らはいいよなぁ黒雷と戦ったり、デカい街で商売できてよ?俺たちは違ぇんだよ。ちっぽけな探索ギルドなんだよ。黒雷の影響をもろに食らってんだよ。お前たちにわかるか?今からやるぞって時にその希望を潰された奴らの気持ちがよ?」
「分かるよ。レガードさん。私は元黒雷の略奪隊だったんだ」




