第13話 対黒雷戦線:打開
戦闘表現は難しいですね
「もしかして……ゲキですか?」
「その通りだガキ。グリンのくそ野郎に閉じ込められてイライラしてんだよ」
ザークとリクが探していたのはグリンが施したと思われる結界だった。リーダー以外の幹部とサブマスが転送されるとその時点で決闘が終了してしまう。それを避けるためにだれか一人を安全な場所に隠すという作戦は有効である。総戦力は下がるが、マスターが十分な力を発揮する前に決闘そのものが終わってしまっては宝の持ち腐れだ。
だが、|黒雷《ブラックサンダーには進んで幽閉されようとする者はいない。全員が短気な戦闘狂である。そこでグリンは強制的に幹部の1人を結界に閉じ込めることによりこの作戦を遂行したのだ。レイは解放された幹部がグリンを襲うと予想していたが、それは最悪の形で外れた。最も非力且つ大将のカノンと遭遇してしまったのである。ゲキが通常の精神状態であったならばやり過ごすことも出来ただろうが、怒りによる暴走行によってそれもできなかった。
「つーわけでテメェには恨みはねぇが死ね。『不良七技ノ参:竹刀剣技』」
どこから現れたのか赤く輝く竹刀を片手に構えを取る。そしてとてつもない速さでカノンに接近し、竹刀をふるう。カノンにとってその光景はとても遅く感じられた。死ぬ間際の現象である。カノンは涙を浮かべることなく死ぬ―――――はずだった。
『あなたに死なれると困ります』
「だっ、誰ですか?」
『私はあなた自身であり、あなたの力です』
「力……?もっとわかるように教えてくださいっ」
『ではユウキさんはどのようにしてフラーを倒しましたか?』
「どうやって……?どうやってでしょう」
『あれは私がやったのです。私はペトロという精霊族です。攻撃が得意な種族なので、あの程度は軽く捻ることができます』
「私はラダですよ……?」
『ペトロとラダはもともと同じようなものです。厄災を与えるか慈愛を与えるかの違いです』
「それで、何の用なんですかっ?」
『言ったでしょう。死なれては困ると。私の力を貸します。それで彼を倒してください』
「そんなの無理ですっ。ユウキさんを助けたようにあなたがやればいいじゃないですかっ」
『それは不可能です。私はあなたの力です。そう何度も表に出ることはできません。ですが、影響を与えることはできます』
「そんなこと言ったって無理なものは無理ですっ」
『ならジュンさんを助け出すことも無理ですね』
「っ!?どういうことですか……?ジュンさんの居場所を知っているのですか?」
『それはいずれ分かります。さぁ、ここで果てますか?それとも戦いますか?』
「……やります」
『よかった。では力を貸します。扱い切れるかどうかはあなた次第です』
「死ね、ガキ」
振り下ろされるゲキの竹刀。その剣筋は今なら追える。
「『ソウル・アウト』」
アビリティ『ソウル・アウト』。カノンの体を一瞬本来の姿である霊体に変換し全てをすり抜けることができる。この約1秒の間だけ移動速度もフルパワーの『電光石火』を凌駕する。弱点は連続使用ができないことだ。今のカノンでは10分に1回が限界だ。だが、それで十分だ。ついコンマ数秒前まで力の欠片も感じさせなかったカノンが突然消えたのである。怒り狂い、冷静さを失ったゲキには十分すぎるほどの隙ができた。
「『ソウル・キャノン』」
一瞬にして背後に回ったカノンはフラーを消したアビリティを繰り出す。ゲキが反応できるはずもなく、青白い光の中に飲み込まれていく。
前回との違いは打ったのは無邪気モードのカノンであることだった。そしてそれは致命的な差だった。
「ざけんなよガキがぁぁぁ」
『ソウル』系のアビリティは使用者の心理状態に強く影響を受ける。心のどこかでストッパーを掛けていたのだろう。ゲキを完全に倒しきることはできなかった。ボロボロではあるものの、カノンを倒すに足る攻撃を繰り出す余裕はあった。竹刀を構えて一直線に突撃する。剣道でいう突きだ。地球では死亡事故が多発したことにより中学生以下の突きは禁止されている。それを防具も付けていない幼女に強化して放とうというのだ。確実に死に至る。
「させませんよ。カノンさんは私たちの大切な戦力なのですから」
乱入してきたのはトミーだった。基本的に攻撃力に乏しいトミーでもカノンよりは上であり、瀕死のゲキにとどめを刺すには十分だった。突き攻撃は前方には強いが、それ以外の方向からの攻撃には対応できない。ゲキは横からの蹴りをさばききれずに吹き飛び、転送された。
★黒雷ホーム 中庭
レイはもうまともに動ける状態ではない。『ドラゴン・アウト』もすぐに切れ、『ドラゴン・チャージャー』も間に合わない。レイのスタイルは基本的に味方が傍にいることが前提となる。「ここまでやるとは計算外じゃて」等と心の中で考える。グリンの話を信じるならグランジュはしばらく戻ってこれない。祐樹は負けたか、最低でも満身創痍なのは間違いないだろう。カノンに頼るのは論外である。トミーならば時間稼ぎできるだろうとあれこれ思案するが、ここに来てくれなければ意味がない。
「万事休すってか?」
「そうじゃの」
「隠すってことをしらねぇのかお前は」
「楽にしてあげましょう、ガズ」
「そうだな。『不良七ノ技壱:拳技』『黒雷』「『電光石火』」『インパクト』」
「全乗せかの。豪勢なことじゃのう。祐樹もそうは思わんか?」
「そうだな」
ガズの顔面に俺の拳が炸裂した。




