第九話
逢見祭一ヵ月前。
学校は普段の光景から一転して、何だか慌ただしい。慣れた雰囲気の先輩たちは機敏に動いて出し物の準備をしている。飲食物の試作に使う食材の買い出しだとか、看板の塗装などをしている。
「いよいよ学園祭って感じだな。生徒会の仕事もこれから倍増するらしいし、気合入れていかないとな八重垣」
「……そうね」
「どうした? なんか元気ない?」
「いいえ、大丈夫よ」
八重垣命は何だかいつもより顔色が悪く見える。スポコン剣道少女にしては珍しい。
「とりあえず俺のクラスはボードゲーム屋をやることになったよ。今麻雀をしていいかどうかの問題を議論してる。印象が悪くなるから許可を出すかどうか生徒会長さんと先生が話し合ってるんだと。学園祭っていろいろ難しいんだな」
「私はそういうのはあまり詳しくないのだけれど、ボードゲームって何が楽しいの?」
THE体育会系的な質問である。
「それはまあ、頭の体操的なあれだろ? あとは単純に話も盛り上がるのかもしれないし」
「盛り上がったことあるの?」
「……ないけど」
「想像で物言うのやめてくれる?」
「……なんか今日の八重垣は手厳しいな」
何か嫌なことでもあったのだろうか。
「のんきなこと言ってるからくぎを刺してみただけよ。まあそういう娯楽のコミュニティを運営するのも何かの経験になるかもしれないし、まずは頑張ってみなさいよ。くれぐれも賭けないようにね?」
「賭けないよ!?」
今は色々大変なご時世なんだから。
「ところで八重垣先輩のクラスは何をするんで?」
「……」
「?」
どうしたのかな?
「……メイド喫茶」
「メイド喫茶!?」
なんとまあ。
「絶対来ないでよね」
「ということは……先輩も……?」
「絶対来ないでよね」
「……了解」
行ったら殺されるんだろうが、非常に悩ましい望君であった。




