第五話
「では叶くん。あとはお願いね。これから飲食出店クラスの代表生徒が順番に面談にくるから。話聞いて大丈夫そうかどうかだけ判断して。責任はあなたが全部持つのよ」
「話が早すぎませんか? そもそも出店リストもさっき貰ったばかりで……」
「じゃあお願いねー」
「鬼か!?!?」
吸血鬼か?!?! ここに吸血鬼がいるぞ?!
「もうあきらめなさい。分かったでしょ。安西先輩はそういう人なのよ」
「俺へのあたりだけ強くないか!?」
「……会長候補なのよきっと」
「だから望んでない!」
八重垣はそろそろ飽きてきた、といった表情でたしなめてくる。こいつはいよいよ敵だな。
放課後の生徒会室に二人はいる。そこへこの間知った顔が覗かせてきた。
「あっ、二人ともお疲れ様。このあとラーメン屋希望のクラスの代表がくるから。生ものは入らない料理だから大丈夫だと思うけど、一応加熱調理を徹底するようにだけ注意してね」
「分かりました。水波先生」
数学担当新任教師、水波雪乃。黒髪ロングで大人っぽさを漂わせた女性だ。ただし顔にはまだ疲れがにじみ出ている。
「ラーメンとはな。俺にラーメンの許可を取りに来るとは、いい度胸だ。出汁の取り方から麺の作り方までじっくりと、ラーメンとの向き合い方を聞いてやろうじゃないか」
「なんか変なスイッチ入ってない?」
「なあに。ラーメンにはちょっとうるさくてね」
「じゃあ働いてもらいましょ」
「さて、家系ラーメンと博多とんこつラーメンの歴史的な関係と違いについての考察を聞かせてもらうとするか。これに答えられないようならうちの文化祭でラーメン出す許可は例え神が出しても俺が出さないぜ」
「こら、少しは手加減しなさい」
時は進み20分後。
「何だと?! 家系ラーメン食ったことないだと! そんな体たらくでわが校の文化祭にこともあろうとラーメン屋を出店しようというのか? いい度胸だな」
「……すいません。クラスの男子達がノリノリで、でも私はあんまり詳しくなくて……」
「しょうがねえ野郎どもだ。仕方ない、俺が今度うまい店に連れてってやる。お客さんに食べ物を出すなら最低限、まず良いものを味わうことだ。そこにいきなりたどり着けなくても、それが指針になる。コンパス無しで海出るようなもんだぞ」
「ちょっと叶くん。自分が高校生だって設定を忘れないで。後ナチュラルに先輩女子を誘わないで」
このような具合で、その後の飲食出店希望者の面談は夜遅くまで続いた。帰り道に八重垣は、望がラーメン屋に行くのに付き合ったのは言うまでもない。




