第二話
「叶くん、なんか顔色悪くない? 風邪でも引いた?」
「……これは、ちょっと寝不足なだけだ」
もちろん、二日酔いだった。
「今日は学園祭の会議なんだからしっかりしてよね」
八重垣命は、そういって望の肩を叩いた。朝にしてはやたら力が強い。痛いって。
ショートカットだった黒髪は、気のせいか少し伸びてきたような気がする。朝から元気なのは、彼女が剣道部のエースで、毎日朝から鍛錬を欠かしていないからだ。体育会系のストイックさには時々ついていけなくなる。
「学園祭っていい思い出がないんだよなあ。俺は裏方に徹するよ。放送係とか、ふらっと立ち寄ったおばあちゃんの長い話を聞く係とかにしてくれ」
「そんな係はないわ。人手がないんだからあなたが前に出るのよ。最初の全体説明はあなたがやるのよ」
「いつ誰が決めたんだ!?!?!?!? そんな権限ないだろ!?!?!?!?」
「新生徒会長から直々に頼まれたわ」
「安西先輩、いつのまに……」
安西奏先輩。新しく生徒会長を務めることになった女子生徒だ。まだ詳しい人柄などは分からない。いつの間にか親しくなったのか。流石体育会系。
「きっと叶が期待されてるってことよ。もしかしたら生徒会長になれるかもよ」
「そんなもん願い下げだ。面倒事はもうこりごりだよ。平和が一番だ」
「夢がないのね。まああなたらしいか」
叶達は生徒会の手伝いとしてほぼ毎日生徒会室に通っている。役職はまだないが、実質的にはそれ以上の仕事を割り振られている。それもそのはず、生徒会長と副会長にあたる生徒が2人、失踪したのだ。厳密には失踪ではないのだが、それを語る話はこの話ではない。それは別の話である。
「でもあなたの学校でのイメージはマイナスなんだから、せめて周囲の評価を0まで戻してよね。じゃないと後々私が困るというか、なんというか……」
何故か急に口ごもる八重垣。お腹でも痛くなったのか?




