第4話 相棒をエロい目で見たりしない……絶対にだっ!
依頼推定レベル1の【薬草摘み】の依頼をアレスと共に受けること30分。
僧侶になったアレスと2人で空籠を担ぎ、俺達は首都から少し離れた山の中にある『薬草摘みポイント』へと辿り着いていた。
「……ここに来るのも久しぶり」
「だなぁ。初めてアレスとコンビを組んで来たのもココだったもんな」
「……ダルくん、覚えてたんだ」
何故か嬉しそうに頬を赤らめながらパタパタとシッポを左右に揺らす我が相棒。
うっ!? か、可愛いっ!?
アレスからサッ! と視線を逸らしつつ、ドンドットット♪ と解放のドラムを奏で始める心臓を押さえながら慌てて自己催眠をかけるように自分に言い聞かせる。
落ち着け、俺? 確かに俺は女の子に飢えているが相手はアレス、相棒だぞ?
いくら俺が性欲モンキーでも相棒をエロい目で見るほど節操ナシじゃないハズだ!
そうだ、俺達の鋼の絆は性欲なんかに絶対に負けないっ!
「……ダルくん? どうしたの?」
「な、なんでもねぇよ! そ、それよりも早く薬草を摘んじまおうぜ!」
「……うん、そうだね」
アレスはコクリと首肯しながら、言われた通り薬草を摘むべくその場で膝を折った。
瞬間、アレスのムッチリとした太ももと脹脛がむにゅんっ❤ と柔らかく潰れて……クソッ!? あの太ももが俺の視線を吸い込んで離さねぇ!?
その吸引力たるや、異世界『地球』に存在すると言われている伝説の宝具『イギリス製最強サイクロン掃除機ダ●ソン』の約10倍である!
ダメだ、アレスの横はマズい! この位置じゃ薬草を摘むどころの騒ぎじゃない。
下手をしたら性欲に負けてアレスを襲ってしまう!?
移動しないと!?
「よ、よ~し! それじゃ俺はアッチの方の薬草を取ろうかな!」
ワザとらしくそう口にしながら、俺はアレスの正面へと移動し腰を下ろした。
ふぅ~、ここなら安全だろう。
俺は額の汗を拭いながらアレスの方へと顔を向け……なん、だと!?
「そ、そんなバカなっ!?」
「……??? どうしたのダルくん? コッチをジッと見つめて?」
静かに薬草を摘んでいたアレスが驚き目を見張る俺を真っ直ぐ見つめながら小首を傾げる。
そんなアレスの今の格好は、盛り上がった股間を見せつけるようにクパァッ❤ 大胆に両足を開いており……俺がどんな絶景を目撃したかはもはや語るまでもないだろう。
「く、食い込んでいる……っ!?」
「……ダルくん、鼻血が出てるよ?」
大丈夫? と僧侶のレオタードを土手高の股間と大きなお尻にこれでもかと食い込ませながら、アレスが心配した面持ちで俺を見てくる。
が、正直ソレどころではなかった。
そ、僧侶の制服ってあんなにエロかったっけ!?
なんだ、あの食い込みは!?
良い子にはお見せ出来ない食い込み方をしているじゃないか!?
あんなのガキの頃に見せつけられていたら性癖ねじ曲がるぞ、おい!?
「……ダルくん、大丈夫? ダルくん?」
「だ、大丈夫っ! もう全然大丈夫っ! ちょっと日に当たり過ぎただけだから、ハハッ!」
妙に甲高い声で笑いながら慌ててアレスのムチムチの股間から視線を逸ら……なんだと!?
し、視線を逸らせられないっ!?
な、何故だ!?
な、何か魔法でも使われているのか!?
「な、なぁアレス? 僧侶に転職したってことは魔法が神聖魔法が使えるんだよな? 一体どんな魔法を覚えたんだ?」
「……んっ? まだレベル1だから『ヒール』しか使えないよ」
そう言ってアレスは俺に股間の食い込みを見せつけるように大胆に足を開きながら、空籠に薬草をポイポイ放り込んでいく。
ヒール――それは神に祈りを捧げることで任意の相手の傷を癒す僧侶限定の魔法。間違っても他人の視線を釘付けにする魔法ではない。
つ、つまりアレスは今、魔法を使っていないということか!
てっきり魅了の魔法でもかけられているのかとばかり思ったぞ。
「……生まれて初めて魔法を覚えたから、使うのが楽しみ」
「こ、これで回復ポーションを買い溜めしなくて済むな!」
「……うん。これからはボクがダルくんの傷を癒すよ」
アレスと軽口を叩き合いながら、ありったけの理性を総動員してアレスの背後へと移動する。
真正面もアウトだ。一瞬でも気を抜くと盗賊からケダモノに転職してしまう。
俺はなるべくアレスを視界に納めないように背を向けながらゆっくりと腰を下ろした。
ふぅぅ~~……少し落ち着いてきたぞ。
「……こうして薬草を摘んでいると、昔を思い出すね?」
「む、昔?」
「……うん。まだ駆け出し冒険者だった頃、2人で薬草を採取してたらダルくんが四つ葉のクローバーを見つけてボクにプレゼントしてくれたよね?」
「よく覚えてんなぁ、そんなこと」
アレスは「……大切な思い出だからね」とどこか嬉しそうに声を弾ませながら、そんな懐かしいことを口にし始める。
あぁ~、そういえばそんな事もあったなぁ。
なんかアレスが兜の下から物珍しそうに見てたから、ゴミを押しつける意味で手渡したんだっけ? ……もう絶対に真実がバレるわけにはいかなくなった。
「結局あの四つ葉のクローバー、どうなったわけ? 捨てた?」
「……捨ててない。ちゃんと押し花にして取ってある」
どこかムッ! とした口調でそう言葉を紡ぐアレス。
あっ、ヤベ。ちょっと怒ってる。
「……ダルくんはデリカシーがない。だから女の子にモテない」
「あっ、やめて? 正論はやめて? 泣いちゃうから」
モテない男の心はニトログリセリンより繊細なんだよ、チミ?
アレスの言葉のナイフが俺の心の柔らかい部分をグサグサとめった刺しにしてくる中、俺は足元の薬草へと手を伸ばし――おっ!?
噂をすれば何とやら!
我が足元にクローバーがっ!
しかもまさかの四つ葉ではなく、五つ葉!
「おい見ろよアレスッ! とんでもねぇレア物を見つけ――」
俺は鼻をハスハスと荒げながらアレスの居る背後へと振り返り、
――瞬間、僧侶のレオタードがアレスのプリ尻にいやらしく食い込んでいる姿を視界に納めた。
「……??? なに、ダルくん?」
「なんでもないですっ!」
「……なんで敬語なの?」
刹那、俺はアレスから逃げるように茂みに顔を突っ込んだ。




