第3話 お前、女の子だったんかいィィィィッ!?
我が相棒アレスが実は女の子であることが発覚した、翌日の冒険者ギルドにて。
時刻は朝の8時少し前。
受付近くのクエストボートに冒険者どもが殺到するこの時間。
ギルド本部はちょっとしたプチパニックに陥っていた。
というのも、
「……??? なんか今日はいつにも増して賑やかだね、ダルくん」
「そ、そうですね?」
「……なんで敬語なの?」
そう言って隣でガッチガチに緊張している俺を見下ろすアレス。
本人は気づいていないのだ。
この騒ぎの中心人物が自分であるということに。
「な、なんだあの超絶美人なエロい僧侶のお姉ちゃんは!? あんな子、ギルドに居たか!? 新しくやってきた冒険者か!?」
「か、身体がムチムチ過ぎて僧侶の制服が色んなところに食い込んでやがる!? そ、僧侶の服ってあんなにエロかったのか!?」
「び、美人すぎて逆に声をかけられねぇ!? なんだあの圧倒的『美』のオーラは!? バイオ兵器か!?」
「というか、なんでそんな別嬪さんの隣をダルが歩いているんだよ!? アレスはどうした、アレスは!?」
ザワザワと重戦士から僧侶に転職したアレスを遠巻きに眺め続ける我が同胞たち。
この超絶美人な獣人のお姉さんがアレスと同一人物とは夢にも思っていない顔をしている。
分かる、分かるぞお前ら。
俺もいまだに信じられねぇもん。
まさか厳つい兜と鎧の下からこんなムチムチぷりんっ❤ なナイスバディーの美人な姉ちゃんが出てくるとは誰も想像できんわな。
というか意味が分かんねぇわな。
俺だって意味分かんねぇもん。
「ま、まさか相棒だと思っていた男が実は女の子だっただなんて……」
「……まだ言ってるのダルくん、ソレ?」
「そりゃ言うわ! だって俺、4年間もずっとお前のことを男だと思っていたんだぞ!? 分かるか、俺の困惑か!? こんなのもうちょっとしたテロリズムだろ!?」
「……ボクは1度も自分が『男』だってダルくんに言ったことはなかったハズだけど?」
「ハァ~? そんなワケ……ホントだぁ~っ!? 思い返したら1度も『男』だなんて名乗ってないぞぉ~っ!?」
でしょ? とどこかイタズラ小僧のようにニヒッ♪ と笑うアレス。
瞬間「うっ!?」と遠巻きにアレスを眺めていた冒険者の野郎共が、股間を押さえて膝から崩れ落ちた。
「な、なんだ、あの愛らしい笑顔はっ!? 俺のウィンナーが一瞬でジャンボフランクに成長しやがった!?」
「あれはとんでもない魔性の女だ……」
「ちょっ、誰か名前を聞いてこいよ?」
「ふざけんな、お前が行けよ?」
「バッカお前っ!? 見て分からないのか!? ズボンの上からでもハッキリと分かるくらい俺の魚肉ソーセージはパンパンだぞ!? こんな状況で声をかけたら捕まるわ!」
「お前も見て分からないの!? 俺の魚肉ソーセージだって情けないくらいパンパンに膨れているわ! 行けるワケねぇだろ!?」
「……??? どうしたんだろう、みんな? 今日はやけに騒がしいけど?」
「ほらアレス、あいつらの事は放っておいて依頼を確認しようぜ」
俺はアレスの手を乱暴に取りながら、クエストボートの方へと歩を進める。
どうでもいいけど、手ぇ柔らか!?
クソっ!? 手ぇくらいいつも握っているのに、なんで今日はこんなにドギマギするんだ!?
「……あっ、うん。そうだねダルくん」
アレスは素直に手を引かれながら、俺と一緒にクエストボートの前へと移動する。
途端に俺達を中心に円を描くように冒険者たちが離れていく。
その姿をアレスは不思議そうに見つめながら『はて?』と小首を傾げた。
「……もしかしてボクたち、避けられてる? なんで?」
「気にすんな、クエスト選び放題で楽じゃねぇか」
バクバクッ!? と高鳴る心臓を勘づかれないようにぶっきら棒にそう言い放ちながら、俺はなんてことない風を装いつつ真後ろに立っていたアレスに声をかけた。
「レベル1からの再スタートだし、ここは初心に戻って【薬草摘み】から始めるか?」
「……どれどれ?」
「コレだよ、コレ」
とクエストボートに貼られた【薬草摘み】の依頼書を指さした、その瞬間。
――ふにょんっ❤
と俺の頭の上に『ナニカ』が乗っかった。
……いや、何かなんて曖昧な言い方はもう止そう。
現実を受け止める時間がやってきたんだ。
ハッキリ言おう、アレスの爆乳が俺の頭の上に乗っかっていた。
「ぱうわっ!?」
「……あっ、ごめんダルくん。大丈夫?」
丁度いい位置に居たから、とそんなことを言いながら一向に俺から離れようとしないアレス。
俺とアレスで身長差があるせいだろう。どうやら俺の頭の位置はアレスの爆乳を置くのにちょうどいいらしく「……ふぅぅ~~、楽チン」と完全その爆乳を俺の頭に乗っけてリラックスしていた。
そんなリラックスしきったアレスとは対照的に、俺の頭の中はもうパニックである。
な、なんだ!? 今、俺の身に何が起こっているんだ!?
一昨日までの俺が今の俺を見たら間違いなく『お前……死ぬのか?』と尋ねてくるレベルで幸運が降り注いでいる。
ど、どうしてアレスはこんな暴挙に!?
というか凄いイイ匂いするんだけど、コイツ!?
あぁ、ダメだ!? オッパイは柔らかいし、全身からは桃のイイ匂いがするしで、全然考えが纏まんねぇ!?
「……ダルくんの言っている【薬草摘み】って、コレのこと? うん、いいよ。ボクもまだ僧侶の職業に慣れてないしね」
「あばっ!?(いいのか?)」
「……うん。ダルくんに任せる」
長年の付き合いで俺の言いたいことを察したアレスがコクンと頷く。
途端に俺の頭の上に乗っていたスライムおっぱいがズッシリと重くなり――刹那、野郎共が「チクショウめっ!?」と俺を睨むように声を荒げた。
「ダルめ、なんて羨ましいマネを!?」
「初めてチビが羨ましいと思ったぞ、コンチクショウめっ!?」
「金貨3枚出すからソコ代わってくれぇぇぇぇ~~~っ!?」
チクショぉぉぉ~~~っ!? と野郎共の怨嗟と羨望の眼差しが俺を射抜く。
アレスはそんな野郎共の視線などどこ吹く風とばかりに、ヌッ! と後ろから【薬草摘み】の依頼書をクエストボートから剥がし、俺から距離を取った。
すると当然俺の頭の上に乗っていたスライムパイパイはたぷんっ♪ といういやらしい音と共に離れていき……やだな、残念がってないよ? ホントだよ?
「……んっ、よし。行こ、ダルくん」
アレスは心の中でスライムおっぱいに別れを告げていた俺の手をパシッ! と取ると、受付の方へと視線を動かす。
瞬間、アレスに道を譲るようにザザッ! と冒険者たちが脇へと逸れていく。
うわぁ……すごぉ~い。
かれこれ4年近く冒険者をしているけど、こんな光景見たことなぁ~い♪
「……よかった、丁度受付が空いてる」
「うん。空いてるっていうか、空かせたっていうか……もういいや♪」
考えるのが面倒くさ~い♪
早々に思考を放棄した俺は、アレスに手を引かれるまま受付へと足を進めた。
こうして冒険者ギルドに現れた【謎の超絶美人な獣人僧侶】の噂は、瞬く間に街へと広がっていくのであった。




