第2話 男だと思っていた相棒の獣人戦士が転職した結果、ムチムチ銀髪美女になって帰ってきた件について!?
我が相棒、重戦士アレスが僧侶に転職すると決めた翌日。
俺とアレスはさっそくダーマ神殿へと足を運んでいた。
「なぁアレス? 転職ってさ、大体何分くらいかかると思う?」
「……ギルドの職員さんが言うには大体30分ちょいだってさ」
「30分か。それじゃ俺は神殿の入口前で待っとくわ。終わったら来てくれ!」
「……んっ、了解」
アレスは重苦しくコクリと頷きながら、ガシャンガシャンッ! と鎧を鳴らしつつ、ダーマ神殿の中へと消えていく。
全身鎧な上に2メートル近い巨体はバツグンに目立っており、同じく転職にきた冒険者と思しき奴らがギョッ!? とした瞳でアレスを見つめていた。
「しかしアレスが僧侶かぁ~。一体どんなムキムキ僧侶になって帰ってくるのやら」
筋骨隆々の仕上がったマッチョな獣人野郎の姿を脳裏に思い描きつつ、俺はハタッ! と気がつく。
あれ? 僧侶に転職するってことは、あのフルフェイスの鎧を外すってことだよね?
ということは……ついにあの謎に包まれた相棒の素顔を拝見することが出来るってことか!?
「確かギルドの奴らとアレスの素顔についてトトカルチョをしてたよな、俺? イケメンとブサイク、どっちに入れたっけなぁ?」
もうかれこれ3年ほど前のことなので思い出せない。
仕方がない、アレスと合流したらちょっくらギルドへと顔を出すとしよう。
俺の記憶が確かなら、冒険者の間でだけ発行している【冒険者新聞】の『恋人になりたい受付嬢』ランキング3年連続1位の受付嬢のユリカさんが預かってくれていたハズだ!
……ユリカさんかぁ~。
「俺もユリカさんみたいな女性とお付き合いしたいなぁ……」
思わず心の声が唇からまろび出てしまう。
もう俺の頭の中は黒髪美人のユリカさんでいっぱいである。
ユリカさん、本当に美人なんだよなぁ……。
それに美人だけじゃなくて物腰も柔らかいし、相談事にも親身になって付き合ってくれるし……あっ、ヤバい。好きになりそう。
「お金を積んだら1回くらいデートしてくんねぇかなぁ……」
そんな邪なことを考えること30分。
そろそろアレスが転職を終えて出てくる時間である。
俺はチラッ! と神殿の入口に視線を向けると、俺と同い年くらいの男の戦士と魔法使いの女の子がイチャイチャ♪ 楽しそうに談笑しながらコチラに向かって歩いてくる所だった。
「バトルマスター転職おめでとう、たっきゅ~ん! これでたっきゅんも上級冒険者の仲間入りだね!」
「ありがとうユリピーッ! これもそれも全部ユリピーのおかげだよ! これからもユリピーはオレが守るからね?」
「たっきゅん……好き❤」
とろんっ❤ と瞳を熱っぽく蕩けさせながら、ユリピーと呼ばれた魔法使いの女の子がギュッ! と上級職に転職したばかりの戦士の腕に抱きつく。
な、なんだあの歩く猥褻物たちは!?
公衆の面前で何をイチャイチャ♪ していやがる!?
ここは法治国家なんだぞ!?
「そうだ、お祝いに何かプレゼントしてあげる! 何が欲しい、たっきゅん?」
「もちろんユリピーが欲しい」
「たっきゅん……❤ そんなこと言われたらお股が一際トロピカルしちゃうよぉぉぉ~~っ❤❤❤」
戦慄する俺の目の前でユリピーとたっきゅんが大人のキスをし始める。
今、俺は確かにガラガラと法治国家の崩れ去る音を聞いた気がした。
と、止めなきゃ!? あの2人を止めなきゃ!?
コレ以上は子どもの教育に悪いっ!
でも恥ずかしながらあの2人の情事に当てられ、俺の股間のソーセージはパンパンに膨れていやがる! 我ながら何とも情けない……。
こんな状況で「やめろーっ!」と2人の間に割って入るなど……出来ない! 俺には出来ないっ!
だ、誰かこの地獄のような雰囲気をブチ壊してくれぇぇぇ~~~っ!?
そんな祈りが天に届いたのだろう。
ソレは突然やってきた。
「ちゅぅぅぅぅぅ~~~~っっ❤❤❤ ……?? ――ッ!? うぶぅっ!?」
ユリピーと大人のベロンチョを楽しんでいたたっきゅんが、突然変な声をあげながら神殿の入口の方を熱心に見つめ始めた。
どうした、たっきゅん? ナニをそんなに慌てているんだ?
俺と近くに居たギャラリー達はたっきゅんの視線を追うように神殿の入口へと意識を向け……息を呑んだ。
そこには――目玉が飛び出るほど美人な女獣人の僧侶が居た。
「うぶろしゃぁぁ~~っ!?」
「ブフッ!? ど、どうしたの、たっきゅ……ん……うそ?」
キスしながら器用にせき込むたっきゅんの視線を追うように、ユリピーも神殿の入口へと視線を向け……絶句する。
そこには幾千万語の語彙力を総動員しても言い表せないほど可憐で美しい、真っ白な毛並みをした女僧侶が居た。
もちろん絶句しているのはバカップルだけではない、俺もギャラリーも呼吸を忘れてその獣人僧侶に魅入っていた。
な、なんだあのボンッ! キュッ! ボンッ! のムチムチぷりんっ❤ な僧侶にあるまじきナイスバディーをしたお姉さんは!?
身長はウチの戦士と同じくらいだろうか?
2メートル近いムチムチとした抱き心地の良さそうな身体に、とろんっ♪ と垂れた優し気な瞳が妙に印象的で、見ているコチラが気後れしてしまう容姿を前に、自然と視線を下へと下げてしまう。
すると途端に彼女の規格外の大きなおっぱい、略して『おっぱい』が目に飛び込んできて……おいおい?
なんだあのお姉さんは!?
生物兵器か!?
「す、すげぇ美人でエロい僧侶が出て来た!? 誰だアレ!?」
「じょ、女性用僧侶の服をあんなエロく着こなせるだなんて……僧侶にあるまじきとんでもねぇ魅力的ボディーだ!?」
「そ、僧侶の服が股間に食い込んで……なんて色気だ!? あんなのスケベの暴力だよ!?」
俺の周りに居たギャラリーたちが物凄い勢いでザワザワし始める。
それどころか偶然その場を通りかかった野郎共でさえ、僧侶のお姉さんに釘付けになって盛大にコケている始末だ。
だが誰一人としてお姉さんの方に駆け寄って声をかけようとはしない。
全員、どこかビビった様子で僧侶のお姉さんを見つめるばかりだ。
その気持ち、よく分かるぜ。
美人も一定のレベル越えると逆に声をかけづらくなるよね?
現に俺も『お近づきになりたい!』とか考える前に、その暴力的なまでの美貌にビビッて逃げ出したい気持ちでいっぱいだもん。
……こんなんだからカノジョが出来ないんだろうなぁ、俺。
「……あっ、居た」
僧侶のお姉さんはキョロキョロを辺りを見渡し、コチラの方へと視線を寄越した瞬間、ピコピコッ! と真っ白な獣耳を嬉しそうに左右に揺らした。
……あれ? 気のせいかな?
お姉さんの視線が俺の方へ向いているような?
爆乳ボインの獣人僧侶のお姉さんはその大きなお尻とシッポをフリフリ蠱惑的に左右に振りながら、真っ直ぐ俺の方へと歩いて来て……えっ? えっ!?
お、俺っ!?
なんで俺っ!?
ハッ!? 多分コレは俺の方へ向かって歩いているんじゃなくて、俺のすぐ近くに居る仲間のもとまで歩いてきているんだ!
俺はお姉さんの進む道の邪魔にならないようにスススッ! と静かに脇へと移動して……何故かお姉さんも方向転換して俺の居る脇の方へとズンズン進んでくる。
あっ、違う! 勘違いでもなんでもない!
このエロい僧侶のお姉さん、俺めがけて近寄ってきている!
えっ、なんで!?
俺、何かした!?
やらかしちゃった!?
「アババババババッ!?」
「……お待たせ」
俺が静かに1人「アババババッ!?」している間に、僧侶の獣人お姉さんが目の前までやってくる。
その瞳は完全に俺を捉えていて……アババババッ!?
し、身長2メートル近いお姉さんに見下ろされる160センチ(自称)の盗賊の少年、俺。
そんな俺の脳裏によぎったのは『お姉さん、可愛いね?』とかそんな軟派な言葉ではなく、
――く、喰われる!?
という草食動物特有の危機感であった。
「……僧侶の服、ちょっと小さいかな?」
そう言ってお尻に食い込んだレオタードをその真っ白な指先でグイッ! と引っ張るお姉さん。
ピチッ! とスケベな音を立てながら股間に食い込む僧侶のレオタードを直しつつ、獣人のお姉さんはニコッ♪ と俺に向かって微笑んだ。
その穢れを知らない優しい笑みを前に、心臓がエイトビートどころかスタンピードッ!
危うくお姉さんに告白して盛大にフラれる所だったわ。……いや、フラれちゃうんかい。
「……どうしたの?」
「ふぇっ!? 何がでしょうか!?」
「……なんでそんなに慌ててるの?」
僧侶のお姉さんは不思議そうな顔でコテンと小首を傾げながら俺を真っ直ぐ見下ろしてくる。
なんでこのお姉さんはさも当然のように俺に声をかけてくるんだ!?
俺達、初対面ですよね? ――ハッ!?
も、もしやコレは……ナンパか!? ナンパなのかっ!?
えっ!? 俺、今お姉さんにナンパされてるの!? マジで!?
人生で初めての逆ナンに知的でクールな俺らしくもなく「あの、その、あばっ!?」とらしくもなくその場で慌てふためいてしまう。
チクショウっ!? いつも妄想では完璧に女の子をエスコートしているのに、いざ本番になるとこの体たらく!? 俺はどれだけヘタレなんだ!?
「……ダルくん?」
俺が無意味にワチャワチャと目の前の空気を両手でかき混ぜていると、目の前のエロい僧侶のお姉さんがどこか心配そうな声をあげて俺の名前を呼んだ。――って、うん?
ダル……くん?
えっ? このお姉さん、今、俺のことを『ダルくん』と呼んだか?
『エロガキ』『歩くヒト型オーク』『キ●タマの擬人化』とたくさんの呼び名がある俺様だが、そんな俺様を『ダルくん』と呼ぶ存在はこの世に1人しかいない。
そう、我が偉大なる相棒である重戦士の――
「アレスッ!? お前、もしかしてアレスか!?」
「……??? そうだよ」
そう言って目の前のムチムチお姉さん、もとい我が相棒アレスはコクンッと頷いた。
瞬間、俺の脳裏にこの4年間、共に過ごした我が相棒との記憶が走馬灯のように駆け抜けていく。
共に危険な任務で死線を潜り抜けたこと。
俺の部屋で朝までバカ騒ぎをしたこと。
2人で一緒に夜空を眺めて流星群を観測したこと等々。
そんな思い出が熱湯のようにグツグツと浮かんでは消えてを高速で繰り返していく。
「……ダルくん? どうしたの、急に固まって?」
ダルく~ん? と俺の目の前で片手をフリフリするアレス。
それと同時にアレスのお胸に搭載された爆乳メロンちゃんがたわわ♪ と艶めかしく揺れ……ちょっ、ちょっと待ってくれ!?
おまっ、おまっ!? おまおまおまおまおまおまおまおまおぉぉぉぉ~~~~っ!?
「アレスお前――女の子だったのかぁぁぁぁぁ~~~っ!?」
「……やっぱり気づいてなかったんだ」
そう言ってクスクスと上品に笑うアレスは不思議な色気に満ち満ちていて、俺は思わず見惚れてしまった。




