第14話 変態ドワーフの華麗なる策略~その2~
規則を破ったガキンチョ共の罰掃除に付き合うこと1週間。
ようやくお守りから解放された俺と相棒は、心機一転アレスのご両親に挨拶するための下準備を整えるべく、サイクロプス討伐の証明書を発行しにギルド本部へと顔を出す――
「アレスちゃ~んっ! ダルぅ~っ! 2人とも、お疲れさマ●コぉ~♪」
――前に入口で出待ちしていた変態ドワーフに捕まった。
「……うわ、出た」
「ドルル、テメェ!? よくもガキンチョのお守りを俺らに押し付けたな、あぁん!?」
「どうしたダル? そんなにカリカリして?『あの日』か? 始まったのか?」
一体ヤツの言う『あの日』がどの日なのか皆目見当もつかないが、ここで会ったが100年目。
そのケツの穴に手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてやんよ!
ジリジリとドルルとの距離を詰めていくと、流石にヤバイと判断したのか珍しく慌てた調子でカスは口を開いた。
「だ、騙したのは悪かったよぉ~。でもマジでオイラにも用事があったんだって!」
「嘘つけバカ野郎。どうせ性懲りもなく1週間風俗に入り浸っていたんだろうが、この変態ドワーフめ」
「……ドルル最低、ほんと軽蔑する」
「何も言っていないのにオイラの株がどんどん下がっていく……」
理不尽や、と不満気な顔を浮かべる変態ドワーフ。
いや、日頃の行いを考えれば打倒な判断だと思うが?
「別にいいじゃん、誰も損してないし~? ガキ共は綺麗な姉ちゃんに見守られながら罰掃除が終えられてハッピーッ! ダルたちは若者の成長を直で感じることが出来てハッピーッ! そしてオイラは監督役の賃金をギルドから支払って貰えてハッピーッ! なっ? みんなハッピー、みんな幸せ! これこそWin‐Winの関係だろ?」
「なにがWin‐Winだ!? チ●チンみたいな頭しやがって! これお前が得してるだけじゃねぇか!」
「……この鬼畜ッ!」
「アハハハハッ! 聞こえな~い! 何も聞こえな~い!」
俺とアレスの罵声を笑顔でスルーしながら、その場でクルクルと回り始める変態ドワーフ。
殴りてぇっ! 1発、全力全開で殴りてぇぇぇ~~っ!
でも盗賊のパンチなんて魔法戦士にとってはカスみたいな攻撃だし……チクショウッ!
今日ほど上級職に転職しておけばよかったと後悔した日はないね!
「チクショウッ!? とりあえずドルル、その金でメシ奢れ! ソレでチャラにしてやるから!」
「……それで許しちゃうダルくんも甘いよね」
「あっ、ちょい待ち2人とも!」
アレスと共にギルドの中へと足を踏み入れようとしたそのとき、何故かドルルに『待った!』をかけられる。
ドルルは少しだけ慌てた様子で辺りをキョロキョロと見渡し始め……うん?
「なにやってんだよドルル? 早く中に入ろうぜ?」
「まぁ待て、落ち着け。あと少しで来るハズだから……おっ! キタキタ♪」
来る? 誰が?
と俺が口を挟むよりも先に、明後日の方向から真っ黒なコートのような装備を纏った男性冒険者が真っ直ぐ俺達の方に向かって歩いて来る姿が目に入った。
背中には巨大な剥き出しの刀が差されており、特殊上級職である『サムライ』であることが見てとれ……うん?
な、なんだあの刀?
ちょっと形が変っていうか、刀の柄をしているのに刀身はなんていうか戦槌のような……あれ?
刀の柄に、戦槌のような剣?
おいおい待て待て?
これって、まさか……
「遅いですよアサヒさ~ん!」
「悪ぃなドルル。アザース王国にないモノがいっぱいあったから、つい目移りしちゃって」
そう言って珍しく敬語を使う変態ドワーフに、アサヒと呼ばれた黒髪の中肉中背の男がヘラッ! と笑みを溢した。
そんな男達を尻目に「……誰だろうね、あの人?」とアレスが可愛く小首を傾げる。
アサヒと呼ばれた男はドルルから視線を切り、色んな意味でムチムチのアレスへと顔を向け……驚いたように瞳を見開いた。
「うわぁ~……ホントに居たよ。『攻略本』通りだ。ドルル、この子が例の?」
「はい、お話していた例の僧侶の女獣人です。……どうですか?」
「そうだねぇ……」
謎のサムライ野郎アサヒは、まるで舐めるようにピチピチの僧侶服に身を包んだ我が相棒を上から下へと何度も見返し、
「――うん、気に入った。カノジョにしよう!」
と満足気に頷いた。
途端にドルルは嬉しそうに声を弾ませ「ありがとうございますっ!」とアサヒに頭を下げた。
「コッチこそこんな素敵な女性を教えてくれてありがとう、ドルル。はい、約束の金貨」
「へへへっ♪ まいどありっ!」
「おいドルル、何の話をしてんだよ? 俺らにも分かるように説明してくれや」
「まぁまぁ焦んなよダル。あとは当人同士で話し合ってくれ!」
じゃあなっ! と1週間前と同じように金貨の入った袋を抱えて逃げるように人混みの中へと消えていく変態ドワーフ。
……なんだかすごく嫌な予感がする。
「さて、じゃあさっそく自己紹介でもしようか。オレの名前はアサヒ・シロガネ、アザース王国の勇者召喚でコッチの世界に召喚された所謂【異世界人】ってヤツだ!」
俺が眉根をしかめている間に、アサヒと名乗る謎の男が真っ直ぐアレスの目の前まで移動してニカッ♪ と微笑む。
その立ち振る舞いからは絶対の自信のようなモノが滲み出ていて……うん?
「ゆ、勇者召喚っ?」
「……異世界人?」
「そっ。オレはこの世界を救うために異世界から召喚された職業『勇者』の異世界人だっ!」
そう言って勇者を名乗る異世界人、アサヒ・シロガネは――何の脈絡もなくいきなりアレスに抱きついた。




