第10話 おかわり!
ハッ!? として自室のベッドの上で目を覚ましたとき、俺は感覚でハッキリと分かった。
……ヤバい、寝過ごした――と。
ドドドドドッ! と高鳴る心臓と共に、チラッと部屋に備え付けている時計に視線を向ける。
時刻は午後12時少し前。
もう完全にギルドのクエストボートには依頼が残っていないだろう。
「……うぅん」
俺がムクリと身体を起こすと同時に、隣から実に艶めかしい女性の声が耳朶を甘く撫でた。
俺はチラッ! と隣で寝こけている全裸の獣人の女性――もとい我が相棒だったアレスに視線を寄越しながら「ふぅ……」と小さく吐息を溢す。
改めてベッドの周りをグルっと見渡せば、破れた俺の衣服だったモノや、アレスの僧侶の制服、果てはカッピカピになったタオルがアチコチに霧散していて、何とも酷い有様だった。
このことから導き出される結論は1つだ。
俺は「フッ!」と口角を緩めながら流れるように頭を抱えて、
「や、やっちまったぁぁぁぁ~~~っ!?」
盛大に悶絶した。
「やっちまったぁぁぁぁ~~っ!? 色んな意味でヤッちまったぁぁぁ~~っ!?」
性欲に負けてとうとう相棒に手を出しちまったぁぁぁぁ~~~~っっ!?
ヤバいよ、ヤバいよ!?
もう何がヤバいって昨夜の出来事をまったく後悔していない自分が居ることが一番ヤバい!
一応自分が夢から覚めているからどうかハッキリさせるべくベタに頬を抓ってみるが……うん、痛い。普通に痛い。現実だ。
「ゆ、夢だけど夢じゃなかったぁぁぁ~~~~……」
「…………」
「というか起きてるだろ、アレス? なんで寝たフリしてんの?」
「ッッ!?」
瞬間、俺の隣でワザとらしい寝息を立てていた獣人美女の身体がビクンッ!? と跳ねる。
そのままモゾモゾと身体を動かし、碧眼の瞳で俺を一瞬だけ一瞥し、
――ズボッ!
勢いよく布団の中に顔を隠した。
「いや、何でなん?」
下手くそなツッコミを入れつつ布団の中をまさぐり、俺の身体に抱きつくようにしがみついていたアレスの身体を捕まえる。
う~む? 一糸まとわぬ姿だと、どこをどう掴めばいいのか分からんな。
とりあえず小さい子を抱きかかえるように脇の下に手を入れて、むんずっ! と布団から引っ張り出した。
するとアレスは「……え、えへへ」とどこか照れくさそうな笑みを浮かべながら、俺の腕を枕にするようにして頭をのっけた。
「……お、おはようダルくん。そ、そのぅ……昨日はお楽しみだったようで?」
「どちらかと言えば楽しんでいたのはチミだったように思えるんですが?」
「……ついムラッとなってヤッた、今では反省している」
誠に申し訳ない、と小さく頭を下げるアレス。
途端に彼女の方から汗の匂いに混じって甘いミルクのような匂いがほんのりと漂ってくる。
昨日アレだけ汗だくになりながら腰を振っていたのに、なんでこんなイイ匂いがするんだろう?
俺なんてもうまる2日もお風呂に入っていないから自分でも「うっ!?」と思うような酷い臭いを発しているというのに……。
なんてことを考えていると、アレスがスンスンッ! と鼻を鳴らしてウットリ❤ した表情を浮かべていた。
「……ダルくん、今日もイイ匂いがするね?」
「ご冗談でしょ、おぜうさん?」
こんなイカ臭い身体のどこがイイ匂いなのか、問い質したいこと山の如しであったが、アレスが甘えるように俺に身体を寄せてきたので言うのを止めた。
「……昨日はゴメンね? 本当はあんな事をするつもりはなかったんだけど……獣人の本能が抑えられなくて……」
「後悔してんのか?」
「……うん」
「俺は逆にスッキリしたけどな」
えっ? と驚いたような声をあげ俺の顔を見つめるアレス。
「……スッキリ?」
「おう。あっ!? スッキリって言っても肉体的にって意味じゃねぇぞ!? いやまぁソッチもスッキリしたけどさ、俺が言ってんのは頭の方ね! 頭のっ!」
俺は慌ててそう言い募りながら、嘘偽りのない今の気持ちを舌にのせてアレスに告げた。
「もう『男』だとか『女』だとか、『親友』だとか『相棒』だとか関係なく、俺はアレスに惚れちまったんだなって昨日分かった」
「……ダルくん」
「だからさ」
俺はバクバクッ!? とバカみたいに高鳴る心臓を気合いと根性で押さえつけながら、震える唇を必死に動かして、
「お、俺と結婚を前提にお付き合いしていただけないでしょうか!?」
と言った。
言ってやった。
ヤベェ、言っちゃったよ俺!?
もうこれで後戻りはできないぞ!?
「…………」
「も、もちろん全力で幸せにしてみせる所存でございます、はいっ!」
「…………」
「手始めとして、まずはご両親に挨拶を――あっ!? お、お義父様とお義母様ってどんなお菓子が好きかなぁ!? お、お饅頭とか一緒に持って行った方が印象高いかなぁ!? どう思うアレス!?」
「…………」
「あ、あれ? アレスきゅん? お~い?」
気がつくとアレスは首筋まで真っ赤にして俺から目を逸らすように顔を俯かせていた。
布団の下ではブンブンとシッポが揺れているようで、ボフンッ! ボフンッ! と何度もベッドと布団を軽く叩いていた。
「何で目ぇ逸らすのん?」
「……無理、今ダルくんの顔は見れない」
「えぇ~……なんでぇ~? 一応一世一代のプロポーズなんですけどぉ……」
「……だって、今ダルくんの顔を見たら自分でもどうなっちゃうか分からないから」
えぇ~? ナニソレぇ~?
俺は無理やりアレスの顔を覗き見ようとするのだが、アレスはいやいやと首を振り、俺の腕に顔を埋める。
一瞬だけチラッと見えたアレスの顔は、今まで見たことないくらい真っ赤だった。
「……どうしよう、変なスイッチ入っちゃった」
「変なスイッチ? なにヤル気スイッチでも入った? ――うむっ!?」
軽口を叩く俺を無視して突然顔をあげたアレスが、
――むちゅぅぅぅぅ~~~~っっ❤❤❤
と物凄い勢いで俺の唇に吸いついてくる。
あっ、このパターンは昨日の!? と思ったときにはもうアフターフェスティバル。
アレスは「フシューッ! フシューッ!」と獣のごとき熱っぽい吐息を溢しながら、瞳を肉食獣のように燦々と輝かせ、俺の上に馬乗りになっていた。
「――プハァッ! あ、アレスさん!? ちょ、ちょっと待って? 2日連続は流石にキツい――ッ!?」
「ハァハァ……❤❤❤ だ、ダルくんがイケないんだからね? ボクをエッチに誘惑して、その気にさせて……っっ❤❤❤ おかげでもう自分を抑えられないよっ❤❤❤」
「なにがっ!? 俺、なにも誘惑してな――うぶぅぅっ!?」
アレスは『お黙り♪』とばかりにチュルルルルル~~~~っっ❤ と俺の舌に吸いついて、無理やり俺を黙らせる。
アカン、よく分からんがアレスのヤル気スイッチを押しちまったようだ!?
「待ってくれアレス、いやアレスさん!? 昨日丸1日ずっとヤリっぱなしだったから、正直もう腰がダルくて!?」
「……大丈夫。先っちょだけ、先っちょだけだから」
まさか男の生まれてその言葉を女の子に言われるとは……人生、何が起こるか分からないもんだなぁ。
なんて現実逃避している間に、アレスの下のお口が肉食植物のようにクパァッ! と口を開き、くちゅっ♪ と俺の愚息の先っぽを飲み込んだ。
……あっ、終わった。
俺がそう理解すると同時に、
――ズンッ❤
と甘い痺れが下半身を包み込んだ。
「~~~~~~~~ッッ!?!? う、あっ……ッ!?」
「……ふふっ、今日も楽しい1日になりそうだね♪」
そう淫靡な笑みを浮かべると共に、アレスは獣のような腰つきで激しくお尻を振り始めた。
結局その日、俺が「もう無理っ!? 勘弁してください!?」と泣きを入れてもアレスは受け入れてくれず、半ば無理やり6発も搾り取られた。




