68品目 地の底より這い出し賊の集団
「以上だ。とまぁ……そういう事情があるからメンドと裕太はウチで預かる事になった。」
「……最初から言ってくれれば良いのに。」
トゥラスはそれ以降感情をあらわにする事は無かった。
「……あっごめんなさい!今から用意します!」
背後の裕太に気づいたトゥラスはすぐ裕太の分の食事を運びにリビングを飛び出す。
「どうかな…………お口に合うか分からないけど。」
トゥラスは緊張した面持ちで皿を持ってくる。
「まるでハンバーガーみたい……」
出された料理は分厚くカットされた豚バラが葉物野菜で丸められてそれをさらに上下2枚パンのような物で挟み込みルクミムが乗った物だった。
「これなんで料理?手で食べるの?」
「ガンハバーって言って、この国じゃ有名なポピュラーな家庭料理かな?ルクミムはまた火をかけたばかりで熱いから気をつけて。」
「分かった。いただきます。」
裕太はマグマの様にパンの上を伝うルクミムが手にかからないよう両手で抱えてガンハバーにかぶりつく。
歯を入れた瞬間葉のパリッという水々しい音と共に肉塊に大きく乗っかる白い脂身が汁を滴らせ裕太の口を満たす。
そして咀嚼するする度に熱熱のルクミムがパンや豚肉に入り込みそのまままろやかな風味で包み込みその粘度の高さから絡み合ったまま新たな味を舌へと伝っていく。
「ん〜!!おいひい〜!」
裕太はすかさず二口目、三口目と味わっていく。
「味はどう?良かった?」
「ん!」
裕太は頬を膨らませながら親指を立てて美味さをアピールする。
「そう。異世界の人だから口に合わなかったらどうしようって思っちゃった。」
トゥラスから肩の力が抜ける。
(ひとまず良い感じになって良かったぁ。)
ベェルリも2人の姿を見て安堵する。
「所で話は変わるんですけど……ベェルリさん?」
「どうした?」
「学校にいた時になんか騒いでた地賊団って何ですか?」
裕太が尋ねた瞬間2人の表情がこわばる。
「は………へ………」
(もしかしなくてもこれ地雷踏んだか?)
裕太は交互に2人の顔色をうかがう。
先程まで和気藹々し始めた部屋の空気が一瞬にして静まり返る。
「そうだよな。キミは既に2回も戦ってるんだもんな。」
沈黙を破ったのはベェルリだった。
「彼らが出始めたのはトゥラス生まれた年。14年前だったな。」
ベェルリは語り始める。
1年前──
確か、毎年夏に行われる学園祭最終日の閉会式の事だ。
「ただいまを持ちまして、第99回学園祭を閉会致します。」
学園長が閉会の言葉を述べた直後だった。
「ギャルルラアッッ!!」
鼓膜を突き破るかのように轟く雄叫び。
次の瞬間、学園の全生徒、職員が集められていた大広間の上空に一体の龍が舞っていたんだ。
「なんだあれ!」
「キャーッ!!」
そして1人の生徒の叫び声でいつの間にか大量の魔物が大広間を取り囲んでいたことに気づく。
魔物は皆肉体全体が腐食し骨や筋肉が剥き出しになっていて至る所に泥がついていた。
耳が痛くなるような声を発して虚な足取りで何かを求めるかのように腕を伸ばすばかり。
よく見たら上空の龍も同じく痛々しい見た目で穴の空いた皮膜で空を跋扈してたのを、今でも覚えてる。
──
「そこからは閉会ムードもクソもねぇ大混乱の連続。教師や式に来てたお偉いさん、学園の兵士どころか口の直属の兵士まで来て、それでも足りないってんで高等部の魔力のある奴も駆り出されてみんな死にもの狂いで怪物の討伐、避難誘導、怪我人の保護に取り掛かってた。」
ベェルリの顔は次第に節目がちになり声も低く重くなっていく。
「それからだな。類似の特徴を持つ魔物がポルトロ各地で見られるようになって、地賊団という名称が付けられた。地の底から這い出てくる集団で地賊団。でもそんなこたぁどうでもいい……地賊団の影響で、一体どれだけの人間が死んだのやら、うっうぅ……」
突如ベェルリはフォークを落として口を押さえる。
「うおええ!ぐうぅっ……!!ごおぉ!!」
ベェルリは何度もえずき始まる。
「お父さんしっかりして!お父さん!」
「大丈夫だ……ここまで昔の事を鮮明に思い出したのは久しぶりだったから、少し頭がびっくりしただけだ。ほうらこの通り元通り!」
ベェルリは声色を戻して喋っていたがえずいた際に赤くなった目尻は僅かに震えていた。
「すいません。思い出させちゃって。」
裕太は頭を下げる。
「いやいや、今のは説明してるうちに勝手に舞い上がってるこっちが悪い。寧ろキミが興味を持ってくれて助かった。」
「どういう意味だよそれ?」
メンドの何気ない問いかけに
「こういう意味です!」
ベェルリは待っていましたかと言わんばかりに懐から一冊の書物を取り出し準備していたかのようにとあるページをノールックで開く。
ページには一枚の絵。
沢山の料理が盛り付けられた皿を片手に山の頂を目指す1人の男と火山の頂上に立ち男を見下ろす怪物の姿が描かれていた。
「なんですかコレ?」
「かつてこの地で破壊と暴虐の限りを尽くした怪物を封印した勇者の絵だ。どうやらこの絵の勇者は空に突如現れた光の中から出現したらしい。キミのようにな。」
ベェルリは裕太を指差す。
「あくまで仮定だが……この勇者は武器ではなく料理を持って怪物を制した。そしてキミは食べ物の力で返信する戦士。どちらも光の中から現れた。伝説の再来かもしれないという事だ。」
「え……メンドとオレが……」
「伝説の再来だぁ?」
呆気に取られる2人の前に鼻息荒くしてベェルリは語る。
現実世界──
「凍真、今シーズン調子どう?」
「はっきり言って出遅れた。今388位で完全にこの数字で腐ってる。今環境的に熱い食べ物系が強くてね、オレみたいな冷たいのはスタートダッシュが肝心だったけど、だいぶ甘く見てた。」
英二と凍真はF.F.Fの調子についてベンチでかき氷を食べながら語り合っていた。
「英二は?」
「オレは以外もいけてるな〜やっぱあんだけの事があってずっと完人さんにつきっきりだったからか、自分でも思って以上に強くなっててさ、ほら、」
英二はF.F.Fアプリの自分の順位を見せる。
「270位?」
「うん。今までじゃ考えれない、ホントにホント?って自分でも疑っててさ……こんな序盤で200なんて数字がもう慣れなくてさ!」
「いや、全然あり得る。」
凍真は冷静に答える。
「英二が変身してるピッザァーはフードファイターの法則的には環境に入りやすい。味や食べ方で強烈な個性を持ってる食べ物は一度環境入りすればずっと強いけど入るまでが大変。でもピザってのはある意味ありふれた食べ物じゃん?そういうのは環境トップには行かないけど安定はしてる。tier1には滅多に行かないけど2〜3に永遠にい続けてる見たいな感じ。」
「つまり熱い食べ物のターンがしばらくは続くってこと?」
「そういう事。でも英二は完人さん達といつも一緒にいたから地力自体が上がってる。そこにピザの安定性が加わってる状態。その数字ば至極妥当だよ。」
英二は凍真の説明を聞いて改めて順位の画面に目を向ける。
「そっか……でもここからオレ強くなれるかな?完人さん、どこ行っちゃったんだよー!」
英二はベンチに大きくもたれかかる。
「裕太だっけ?彼がいなくなったのを皮切りに完人、掛さんがいなくなった。あのバカ達4人と舞味さんはいるけど、なんか寂しいよね。」
凍真はそう言いながら溶けて甘い液と化したかき氷を流し込む。
「ホントだよ!てか姐さんに関してあの所長のせいでおかしくなってんのよ〜!オレもう辛いよぉ……」
「どうおかしくなってんのさ?」
「どう説明すれば……うわ!来たよ……」
英二は携帯の通知に項垂れる。
「このLINE、舞味さんのじゃん?すぐ来てって……まぁ良いいや、百聞は一見にしかずだし、確かめてもらうよ英二。」
そして凍真を待ち受けていたのは
「ちょっと聞いてんの!アンタねぇ〜ホントどうしようもないわね!自分がやってる事がおかしいって気づいてないわけ?人の脚で悦びなが真横で別の女の胸に顔埋めて!21歳でコレって……恥ずかしいと思わないわけ?」
英二は無理矢理脚を体に押し付けられていた。
「わたしは構わないですよ〜?やっぱり男の人がこういうの好きなのは悪い事じゃないし健全な証拠ですよ。あんな時代遅れの某スレンダーさんなんかより令和のムチムチを召し上がたいですよねぇ……?」
そして新所長の飾侍優香に胸を顔に押し付けられていた。
「ぐぅうう!!ああっ……!!」
「こ、コレは……」
女同士の鍔迫り合いの中に僅かに混じる呻吟。
凍真は英二は下心が一切なくたた苦しみ悶えていることを読み取るが
「こっからどうすりゃええねん……」
彼にはこの場での正解の行動が分からなかった。




