場所を変えて
案内してくれた部屋はさっきの何もなかった部屋とは違い来客用なのかお互いが対面するように設置されているソファーが部屋の真ん中にあり、その間に少し大きめの丸い机が置かれていた。窓もあり、外からの日光によって部屋も明るい。
俺と沙由里はエルザに示された部屋の入口に近い方のソファーに腰を下ろした。俺が座ると真横にぴったりとくっつくように沙由里も座った。別にいつも通りで気にすることでもない。俺にとってもおそらく沙由里にとってもこれくらいは当たり前のことだ。
そして、俺たちの対面のソファーにはエルザが座った。俺と沙由里、それからエルザの前にはエルザが用意してくれたお茶が置いてある。
エルザはお茶を少し飲んでからこう切り出した。
「いきなりですけど、さっき二人が疑問に思ってたことっていうのは自分たちにこの世界を救うだけの力があるのかどうか、ということですよね?」
「ああ、そうだ。俺と沙由里の世界ではさっきの魔法なんてものは存在しない。だから、魔族どころかそこら辺の魔法を使える子供たちにも勝てないと思うんだが。」
「うん。私も翔ちゃんも普通の高校生だもん。魔法なんて使われたらどうしようもないよ。」
「はい。二人の世界に魔法のような力がないことは大司祭様を通して神から聞いております。ですが、神によってこちらの世界に連れてこられた二人はすでにあちらの世界よりこちらの世界の理に強く影響されています。」
エルザはそこで一度言葉を切ると俺たちの前に二冊の本を差し出した。俺と沙由里は一冊ずつ本を受け取る。
その瞬間、俺の手の中で本の厚さに変化が起きた。受け取る前と比べて圧倒的に薄くなったのだ。さらに表裏と真っ黒だった本の表紙部分に白色でショウイチと書かれていた。沙由里の方に目を向けると、同じく表紙にサユリと書かれていたが、本の厚さは俺と違いむしろ受け取る前より厚くなっていた。俺たちが受け取る前は確かに同じ厚さだった。不思議に思い説明を求めるようにエルザに視線を投げかける。
「それは『スキルブック』と呼ばれ、誰かの誕生とともにその街の教会にいきなり出現するもので神器と呼ばれるものの一つです。神器と言ってもその性質からこの世界の人たちはみなそれぞれスキルブックを所持しているということになります。そして、この本はこの世界では魔法を使うためのもので、その2冊は二人がこの世界に来た時に出現しました。ためしにその本を開いてみてください。」
エルザに言われて俺と沙由里は本を開いた。




