沙由里の癖
沙由里は学校でも成績優秀者で通っているように俺よりも頭が良い。それは何も知識という面だけでなく知恵という面でも沙由里は俺を確実に上回っているだろう。つまりこの状況を判断するに適切な解を出すとしたら、俺よりも沙由里の方が適任なのである。
だが、これは沙由里の悪い癖であり(まあ、俺にとっては嬉しいことかもしれないが)俺と一緒にいる時の沙由里は基本的に全てのことを俺に頼ってしまう傾向がある。今も、エルザの話を聞いていなかったわけではないだろうが、これからのことなどはやはり全て俺に任せているのだろう。
昔から沙由里はそうであった。小、中学校と同じクラスになったことがこれまでに無かった俺たちだがテスト前などには二人で勉強会というのもよく行っていた。当初は俺よりも頭の良い沙由里に勉強を教えてもらおうという考えが俺の中にあったが、実際行ってみると思っていたこととは逆になり勉強においても沙由里は終始俺に頼ってきた。俺よりも成績が上なのに、俺に頼ることに妙に安心感があるらしい。そんな癖を知ってから俺は沙由里との勉強会の時には沙由里の不安を少しでもなくそうと自分ながらに予想問題を作成したり、ひっかけ問題が狙われそうな場所など考えていた。俺の脳みそではその勉強会までに情報量をマックスにするも、沙由里にそれらを伝えきった瞬間になぜかため込んだ知識がテストまでにもたずに消えていたりすることが多かった。もし、もっと優秀な脳みそであればテストで学年トップになっていたかもしれないが、沙由里が成績優秀者を維持し続けるのを眺めているだけで俺は満足だった。
そんな昔からの沙由里の癖。考えたくはないがこれからずっと一緒にいられるとは限らない。そんな時、この癖が沙由里に良くない影響を与えているかもしれない。そう思うと治してほしい癖なのかもしれないが、俺はその沙由里の癖を喜びとともに受け入れていた。
そんなことを考えていたせいか二度目のため息の時は嫌な気分になっておらず、俺も沙由里に笑顔を向けると俺の考えを沙由里に説明した。
「へぇ~、神様とかなんかすごい話だなぁ、とか思って聞いていて翔ちゃんと私は人類を救うためにやってきたっていうけど、翔ちゃんはともかく私なんて何もできないよ。」
「いやいや、俺だって何もできないよ。沙由里は頭も良いからそういった面で人類の助けになるのかもしれないが、俺なんて自慢できるの足が速いとかそんなレベルだぜ。エルザ、神がここに俺たちを呼んだのがミスっていう可能性はないのか?」
そんな俺の質問にエルザはきっぱりと否定の言葉を返した。
「あり得ません。そもそも神が間違うことがあり得ません。そして、二人が疑問に思っていることも大司祭様の話を聞いた限りでは解決できる疑問です。そのことについてこれから詳しく話しても良いのですが、さっきからずっと立ち話ですしもう少し落ち着いて話のできる部屋に移動しませんか?」
断る理由もなかったので俺と沙由里はエルザに頷き、エルザが案内してくれた部屋まで移動した。




