↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

一緒なら

「・・・ここは?」

 不安に押しつぶされそうなか弱い声を一言発した沙由里は、隣にいた俺と目が合うとほっとしたような顔つきになった。

 やはり沙由里も今の現状は理解できていないらしい。ほっとしたのもつかの間、沙由里の表情は険しいものへと変化した。

「翔ちゃん、ここがどこだか知ってる?」

「いや。俺も目が覚めてから色々と考えてはいるんだが、ここがどこだかもさっぱりだし、何でこんなことに巻き込まれているのかもよく分からねぇ。」

 俺の返答にそっか、と頷いた沙由里は俺と同じように部屋の観察をしているようだ。するとやはり床からの光に目がいったようで浮遊している光球を掴もうと手を伸ばしていた。俺の時と同じく光球は沙由里の手をすり抜け何事もなかったかのようにしばらく浮遊を続けていた。

 しばらく光球を眺めていた沙由里に、俺は現状について考えていたことを沙由里に聞いてもらうために話し出した。

「なあ沙由里。これってやっぱり俺たち誘拐されたってことなのかな?下校途中に急に強い光を浴びさせられて驚いている瞬間に俺たちをスタンガンか何かで気絶させ、その隙にここまで運んできた。沙由里が目覚めるまで色々と考えてみたんだが、それだとしても俺にはこんな目にあう覚えはないんだよ。もしかしたら無差別誘拐かもしれないけど、沙由里にも心当たりなんてないよな?」

 もちろん沙由里にそのような心当たりなんてないだろうということは分かってはいるが、気持ちを綺麗に整理するためにも俺は念のため沙由里に確認を取った。

「うん、私にも思い当たる節はないかな。私の家がお金持ちってこともないし、私を誘拐して犯人さんはどうするつもりなのかな?」

 この状況に不安がないはずがないのだが、それを隠しているのか沙由里は笑顔で答えてくれた。

 沙由里に心当たりはない。なるほど、だったら原因は俺なんだろう。俺にも心当たりなどないが、沙由里がないと言った時点でこうなった原因は問答無用で俺だ。つまりは沙由里を巻き込んでしまった責任は全て俺にあるという考えは間違っていなかったわけだな。と、俺は俺の中でそう結論づけた。

「安心しろ、沙由里。沙由里のことは何が何でも家に帰してみせる。だから、沙由里は何も心配することはないよ。」

 俺がさきほどからの決意を口にすると、沙由里は顔を赤らめ俺をじっと見つめてきた。

「ありがとう。翔ちゃんが一緒なら私はどんなことも乗り越えられるよ。だから、こんな状況でも翔ちゃんが一緒にいてくれるって思うだけで安心できちゃうんだ。」

「そうだな。本当は沙由里をこんな目に遭わせたくないんだが、俺も沙由里と一緒にいられるだけで不思議と安心できちまう。」

 お互いに見つめあいながら、そんなことを話していたら俺も顔が熱くなっているのに気付き二人ともほぼ同時に顔をそらした。

 沙由里は顔を両手で覆いながら体を震わせている。我慢できていないのか手の間から幸せそうな笑い声が漏れているが、それに気付いた俺は一段と顔が熱くなっていることに気付き、落ち着かせる意味も込めて再度部屋の中を見回してみた。

 相変わらず薄暗いため目を凝らして部屋の隅々を眺めてみるがこれといったものはなく、やはり一つだけあるあの扉を何とかするしかなさそうである。

 沙由里にもそれを促し、開くわけがないと思いながら二人で扉に近づいていく。念のために俺は沙由里を俺の背中で隠しながら扉に近づいていった。沙由里は右手で俺の左手を握り、左手は俺の服を背中部分で掴んでいる状態だ。

 今のところ目に見えて命に危険が及んでいるわけではないが、俺たちが目を覚ましたことがばれたら犯人はどのような行動に出るのかと考えるとやはり恐ろしい。そもそも俺たちを誘拐した犯人が単独犯なのかも複数人によるもなのかも判明していない。あの扉の向こうに何人の犯人がいるかも不明な状況だ。落ち着いたように見えた沙由里が脅えた態度を示すのも仕方のないものだろう。

 左手と背中に感じる沙由里の感触にそんなことを考えながら扉に一歩一歩近づいていった。

 扉まで残りほんの少し、あと3歩いるかいらないかくらいの距離に近づいたとき俺は扉の向こうから声が聞こえているのに気付いた。


 驚愕、歓喜、焦燥、そんな心情を乗せた声が扉の向こうから届いてきた。この位置で俺に聞こえているのだから、沙由里にも聞こえているのだろう。

「おぉぉ・・・。神の子が・・・。ついに我々の祈りが神に通じたのか。大司祭様が仰られた通りだ。神は決して我らを見捨てなかった。おおぉ・・・。神の子よ。」

 意味の分からない内容に俺と沙由里は顔を見合わせた。「神の子」って何だ?

 そんな疑問がとっさに頭をよぎったが、その直後ゆっくりと音もなく開いていく扉を前に俺と沙由里は呆然としていた。


一話の文字数は大体毎回この程度になると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。