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翔一と沙由里

 俺の名前は咲良翔一。16歳。髪は今まで染めたこともないが、黒を基調として少し茶色かかっている。身長も175cmと至って普通の日本男児である。

 高校生活も半年が過ぎ、幾分慣れて来ていつものように幼馴染の沙由里と話しながら下校している時に急に意識がなくなったのだ。

 意識がなくなる直前、とっさに沙由里の方を見たがおそらく俺と同じように意識を失ったのだろう。目を閉じて、倒れそうになっていた。俺の意識があったのは、その光景を見たところまでだ。

 俺の幼馴染である水瀬沙由里は、学校内でもその容姿から男子生徒はもちろん男性教師からも一目置かれている。髪は肩に届くくらいの長さで、毛先までなめらかな黒色をしている。顔は高校一年生の女子の平均より少し小さいが、周りに安心感を与えるかのような大きなくりっとした瞳が印象的で幼馴染の俺が言うのも変な話だが可愛らしい幼馴染である。それに沙由里は昔から自分の事よりも周りの連中を大切にするような根っからのお人よしであり、友達付き合いも良く、テストでは毎回学年上位者に名を連ねている。つまりはすごい奴なんだ。

 そんな沙由里が俺に向けて好意を抱いてくれているということは昔から一緒にいるし薄々だが気付いていた。もちろん俺も高校生になってまでただの幼馴染という関係を続ける気は毛頭ない。どこかでタイミングを見て、沙由里には俺の気持ちをはっきりと伝えるつもりでいる。真っ先に思い浮かんだタイミングというのが文化祭の後夜祭だったわけで、文化祭が近づくにつれ俺は色々な意味でドキドキしていたわけだ。頭の中ではその日のシチュエーションを構想し、日々その時のためにイメージトレーニングをしていた。俺も沙由里のことが好きなのだから。

 だから俺は今、俺自身に覚えたことのないほどの怒りを覚えている。下校途中で意識を失った俺が、目を覚ました時には周りは見たこともない景色の建物の中であった。窓がないのかそれとも夜になってしまったのか薄暗く、天井は異様に高いところにあり俺の頭上には果てしない闇が広がっているかのようだ。部屋の形は一辺15mほどの正方形をしており、周りの四面の壁の一面にだけ扉と思われるものがある。もちろん今は閉まっている。そんな部屋で唯一の光源は床に描かれている見たこともない模様から発している光の球である。脳裏に蛍がよぎったが、目をこらしてよく見てみるもぼんやりと発光する球はまさしくただの球であり、触れてみようと手を伸ばしてみるも、光球は俺の手をすり抜け床から上に漂っていき、ある程度浮遊しては消えているみたいだ。その正体がなんなのか俺の知識ではどうしようもないが、この現状が俺たちにとって異常事態であることは確かだった。

 俺の隣には未だ意識を失っているのか目を閉じている沙由里がいる。俺が意識を取り戻したときに真っ先に確認したのが沙由里の無事であった。口元に手をかざして呼吸の確認をし、首元に手を当て脈も正常に動いているか確かめた。

「良かった。」

 そう独り言をつぶやいて沙由里の無事を確認したところで、俺は自分が沙由里をこんな現状に巻き込んでしまったことに怒っているのである。下校途中に周りが急に発光した時、意識を失う前に沙由里を遠くに突き放していたらもしかしたらこうなっていたのは俺だけだったんじゃないか。そもそも俺と一緒に下校していなければ、こんなことに沙由里をまきこまなかったかもしれない。下校時の謎の発光現象が俺と沙由里のどちらを狙って起きたのか分からないが、俺はそんなことを考えている余裕すらなく全ての責任は俺にあると考え俺はどうなったとしても沙由里を無事に連れて帰る。当たり前だが、そんなことを決意していた。


「・・・ぅん・・・」


 そんな時、俺の隣からか細い声が聞こえそちらに目を向けると意識が戻ったのか沙由里がゆっくりと瞼を持ち上げた。

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