プロローグ
学校からの帰り道、俺はいつものように家が隣で幼馴染の沙由里と談笑しながら歩いていた。
高校に入学してから半年が経ち、高校生活にもすっかり慣れた俺たちの会話の内容は当然のことながら間近に迫っている文化祭についてお互いのクラスがどのような出し物をするか、というものであった。
「翔ちゃんのクラスは何をするの?」
「文化祭では定番のお化け屋敷だとさ。クラス委員がはりきっているのはいいんだが、俺は正直やる気は出ないな。」
「えっ!?何で?お化け屋敷ってどうやってお客さんを驚かせようかとか考えるのが面白そうなのに。」
「確かにな。それだけでいいなら俺も面白いと思うが、いざ本番になってお化けを演じることを考えたら、どうしても恥ずかしいしな。」
「そうかな~。私は怖いの苦手だけど翔ちゃんのお化けなら喜んで会いにいくのにな・・・」
最後の方は声が小さく何を言っているのか良く分からなかったが、沙由里が顔を赤らめている様子を見て聞き返すことはしないでおいた。
「俺のことより沙由里のクラスは何やるんだ?」
これ以上お化け屋敷のことを話しても仕方ないので俺は話題を沙由里の方に向けた。
さっきの一言からずっともじもじしていた沙由里だが、話題が自分のことになった瞬間嬉しそうに顔をこっちに向けた。昔からずっと一緒にいるし、沙由里のことは良く分かっているつもりだ。つまりは、俺が沙由里に対して興味を持ったことがそれほどに嬉しかったのだろう。俺もそろそろ自分の気持ちをはっきりと沙由里に伝えないとな。そんなことを考えていると、俺の質問に沙由里が口を開いた。
「私のクラスは喫茶店だよ。私は接客係だから、翔ちゃんにお客さん役やってもらって練習手伝ってほしいなって思ってたんだけど、いいかな・・・」
また最後の方は声が小さくなっていたが、今度はちゃんと聞き取ることができた俺はすぐに大丈夫だよ、と伝えた。それを聞いた沙由里はやはり嬉しそうにありがとう、と返事をした。
いつもと変わらない日常、明日も明後日もこれからもこんな日常が続くのだろうと、そう思っていた。
しかし、突然俺たちの周りが白く発光したかと思ったその時には隣にいた沙由里も俺も意識を失っていた。
その後”神隠し”という言葉の信憑性が高まったことと、今起こった現象は決して無関係ではないだろう。なぜなら、俺たち二人はその日を境に忽然と姿を消してしまったのだから。




