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登録

その後、俺と沙由里は冒険者に登録するための手続きを行った。

手続きと言っても本来のそれとは違うこともあり、全然時間がかからずに終了した。指定された場所に自分の『スキルブック』を置くだけというもの。

俺も沙由里も冒険者になる必要があるのかどうか良く分からなかったが、エルザとニーナの説明いわく冒険者になると冒険者だけに与えられる特権みたいなものがあるらしく、公共施設を安く利用できたり、一般に開放されていない区域に入ったりすることができるらしい。そのために厳重な審査や調査を経てクリアした者のみ冒険者に登録することができるとのこと。俺たちはエルザとニーナのおかげでその審査や調査をクリアした状態まで一気にたどり着いたらしい。だからということもあり、俺や沙由里が何か問題を起こしたときにはエルザにまで迷惑をかけることになるから、とニーナからものすごく注意を受けた。エルザ本人ではなくニーナから厳しく言われるあたり、エルザとニーナってやっぱりかなり仲が良いんだな。

と、軽く説明を受けてから俺と沙由里は冒険者に登録をした。指定された場所に『スキルブック』を置くと、『スキルブック』の表紙が黒色から青色に変化した。俺に続いて沙由里も『スキルブック』を置く。結果はやっぱり表紙の色が青へと変化した。沙由里が『スキルブック』を置くときに、その厚さからかニーナが一瞬だけ目を見開いていた。ただ、すぐに落ち着いた表情に戻っていた。

「はい、これで登録終了よ。」

「色々と省いてくれたみたいだが、それにしてもこれだけで終わりなのか?」

「そ、『スキルブック』は一人一冊で決して他者の『スキルブック』と同じ波長を出さないようになってるいるの。だから、依頼(クエスト)を受注したい時や、施設を利用したい時などは『スキルブック』を見せるようにして。それによって、自身が冒険者であるという証明になるわ。」

ふーん、まあ指紋みたいな感じで個人を特定できるものっていう考えでいいのだろう。『スキルブック』の性質上、他人に内容がばれる事はないが俺の『スキルブック』薄いからな。なんか冒険者って名乗りながら見せるの恥ずかしいな。

などと、どうでもいいことを考えながら俺はニーナの説明を聞いていく。

「それと、『スキルブック』の表紙の色は冒険者としてクエストをこなしていけば変わっていくわよ。青から紫、橙、銀、金という順にね。色は冒険者としてのレベルを表していて、それによって受けれないクエストなんかもあるわね。と、こんな感じだけど何か質問ある?」

「今のところは特にないかな。沙由里は?」

「私もないよ。」

「分かったわ。じゃ、これで説明も終わりね。エルザに期待されてるんだから、金まで行くと信じているわよ。」


それから、俺たちはすっかり暗くなった『クレナイの街』を歩きながら教会へと帰ってきた。まだ全く金を持っていない俺たちにエルザは教会に泊まればいい、と言ってくれた。そして教会には朝は別の部屋にいたのか見たことのない子供たちがたくさんいた。帰ってきたエルザを迎え入れる際に、一緒にいる俺と沙由里のことを不審に見つめてきた。

「みんな、この二人はこれから新しい家族になるショーイチとサユリよ。仲良くしてあげてね。」

エルザの言葉に安心したのか、子供たちは元気にはーい、と返事をし俺と沙由里に群がってきた。正確にはほとんどの子供が沙由里の方に集まっていた。沙由里は誰からも好かれるし、可愛いからな。男子にも女子にも人気が出るんだよな。

俺の方にはキックとかパンチとかそういうちょっかいを出す子供しか集まっていなんだが、おい。

「ショーイチとサユリもこれからよろしくね。子供達にも言ったようにみんな家族だし、『クレナイの街』にいる間は毎日ここで泊まればいいわ。」

子供たちと戯れている俺と沙由里を見て微笑みながらエルザは言った。

教会に暮らしている子供ということはやっぱり孤児ということだと思うが、こんなにみんなが元気なのはエルザの影響が大きいんだろうな。初対面の俺たちにもすでにこんなに懐いているし。俺はエルザに向かってありがとう、そうさせてもらうよ、と返事をした。

「翔ちゃんと家族、翔ちゃんと家族・・・」

隣では子供たちと戯れながら沙由里が何かつぶやいている。何と言っているのかは子供たちがうるさくてよく聞き取れないが、沙由里の顔は何故だか照れているような表情だ。やっぱり可愛いな。俺と視線が合うと、沙由里はさらに顔を赤くしてすぐに視線を外して俯いてしまった。


その後、すっかり子供たちと仲良くなった俺たちはみんなで食堂に集まっていた。いつもエルザが一人で料理を作っているらしいが今日は沙由里もエルザの手伝いということで二人で作っている。

エルザが魔法で火を出しているのを見た沙由里は自分も魔法で水を出したり、火を出したりしている。沙由里はセンスがあるらしく魔法のコントロールが最初から素晴らしい、とエルザに褒められていた。そういえば、俺はまだ一度も魔法を使っていないな(『常時発動』の魔法は使っているわけだけど、実感はないからな)。エルザと沙由里が料理を作っている最中に子供たちと遊んでいた俺は効果が分かりやすそうな『身体強化』を使ってみた。ちなみに、使い方は魔法名を念じるだけでいいとエルザから教わっている。

説明によると対象範囲は狭い方がいいらしいが、最初だし良く分からないので全身にかけてみた。

「おぉ・・・」

持ち上げていた子供の体重が急激に軽くなった。いや、俺の腕の筋力が急激に上がったのか。子供一人なら余裕で片手で持ち上げられる。それを見た子供たちは次々に持ち上げて、と頼んできた。調子に乗った俺は次から次へと子供たちを持ち上げていった。


「ショーイチ、すごい。」

「次は俺も。」

「アタシもう一回。」


気付けば一時間ほど経過しており、いつの間にか名前で呼ばれるようになっていたが正直もう疲れた。魔力消費によるものなのか単純に疲労なのかはっきりしないが少し休みたい。そんな考えを見過ごしているかのようにエルザと沙由里の料理が完成した。エルザの合図で子供たちはみんなで料理をテーブルまで運んでいく。疲れたけど、俺も一緒に料理を運ぶ手伝いをした。魔力消費を抑えるためにも『身体強化』はとりあえず解除している。

沙由里の料理はもちろん、エルザの料理もとてもおいしかった。

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