案内
「最も安全な街か、そのせいなのか魔族に脅かされている世界には全く見えないな。」
エルザから人類が滅びる、とかなんとか聞かされていたせいか俺のイメージとしては残り数えるほどしか人類がいなくなった世界というものだったのだが、この様子ではまだそこまでの窮地にはなっていないようだ。
「そうですね。ここは魔族が占領している『北の山脈』から最も離れているところにある街ですから、周りにもそこまで強いモンスターは生息していません。もっとも、前線でがんばってくれている冒険者たちのおかげでもありますが。」
「へぇ。ねえ、エルちゃん。ここっていつもこんなに人が多いの?」
「いえ、今は昼時ということもあってこんなに人が多いのでしょう。時間が過ぎればもう少し人も減ってくると思いますよ。」
おお、沙由里からいきなりちゃん付けで呼ばれても何ら嫌な顔せずすぐに反応してたな。俺たちより年上だと思うが、そういうことは気にしないのかな。まあ、自分から気軽に呼んでくれって言ってたわけだし別に俺が気にすることでもないか。
「落ち着くまでどこかでランチにしませんか?私がおごりますので。」
「え?いいの?」
「もちろんです。私が一緒にいる間はサユリにもショーイチにも不便な思いをさせるつもりはありませんので。」
俺と沙由里はこちらの世界でのお金を持っていない。そこにも神の力で調整が入っている可能性もあるが、それは追々確認すればいい。そもそも学校の帰り道にいきなり連れてこられたせいもあり、元の世界のお金であってもそんなに持っていない。ここはエルザの好意にありがたく甘えさせてもらおう。
「ありがとう。助かるよ。」
「私からも、ありがとう。」
俺と沙由里はそろってエルザに礼を述べた。エルザは気にしないでください、と軽く微笑んでいる。
その後、ランチを終えた俺たちがエルザに連れてこられた場所は『ギルド』という場所だった。物語の中ではよく登場する場所であり、この世界でのギルドの存在意義も俺の中のイメージと一致しているようだった。
「ここが冒険者にとって重要な場所となる『ギルド』です。各町村に存在し、冒険者に依頼を頼んだり、緊急時の避難場所となったりする大切な場所です。とりあえず、二人の力なら冒険者になっても問題ないはずなので、まずは冒険者として登録しましょう。」
エルザに説明されながら俺はギルドの扉を開いた。




