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ファーストウィンド・ビターロード(ライク・ア・ハリケーンⅢ)  作者: ままま


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風の規律2

「なぜ、コーヒーを売ることを勧めたか分かるかい」

ある日、マスターに聞かれた。


昼の混雑が過ぎた店内は、静かだった。

窓際の席には、薄い陽光が落ちている。

何と答えていいか分からず黙っていると、マスターはそれ以上何も言わず、豆を挽き始めた。

ハンドミルの回る音が、一定のリズムで店内に響く。


挽き終えた豆をドリッパーに落とし、表面を軽く整える。

マスターの動きには、無駄も迷いもない。

湯を細く落とすと、粉がふくらむ。

そのふくらみを見守りながら、マスターが口を開いた。


「商売はね、味が良いだけじゃ続かないんだよ」

湯を止めて、ふくらみが落ち着くのを、静かに待つ。

再び湯が落ち始めると、粉の表面にわずかな震えが広がり、すぐに静まる。


「本当は、僕が言うのも口幅ったいんだけどね。

でも、今のうちに理解しておいた方がいいと思うから、二つだけしゃべらせてもらうね」

マスターが続ける。

「一つは、それが例え、小さなキッチンカーだとしても、商売として始める以上、そこには責任が生じるということだ。それを、ちゃんと理解しておかないと、いけない。


もう一つは、知識だ。

物事を始めるには、勢いとか、思い付きとか、それも大事だよね。そこが無いと何も始まらないから。

でも、知識がないことは不誠実だと思う。正確には、無いままにしておくことは、かな。

それは、お客さんに対してというだけではなく、自分に対して、自分の人生に対して、不誠実ということだ。責任を持つためには、知識が必要なんだよ。

だから、まずは自分でよく考えて、自分で勉強してごらん」


話し終わると、お説教じみたことを言ってしまったと誤りながら、淹れたてのコーヒーを注いだカップを差し出した。

白い磁器のなかで、窓からの光を帯びたコーヒーが、薄い琥珀色に揺れている。

鼻を近づけると、湯気がゆっくりと立ち上り、いい香りが広がった。


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